目次
段差乗り越え時のショック、粗粒路でのロードノイズを低減
マツダの商品改良ではいつも「フルモデルチェンジではないのに、そこまでやるか!?」と驚かされることが多い。今回のCX-5の商品改良も例外ではなく、手が加えられたのはデザインだけにとどまらない。
マツダ3から採用がはじまったマツダの次世代車両構造技術「スカイアクティブビークルアーキテクチャー」を適用し、車体からサスペンション、シートに至るまで見直しを図ることで、ダイナミクス性能も進化を果たしている。その内容をかいつまんでご紹介しよう。
車体には減衰制御構造が導入された。ボディ中央部分のクロスメンバーの剛性を強化、構造用接着剤を併用することで路面から入る振動を短時間で収束する。
また、シートは締結面を拡大するとともに取り付け部のピッチを縮小することにより、シートフレームの捻れ剛性をアップ。これは路面の凹凸を乗り越えた際、シートに座っている乗員に伝わる力の方向を縦方向に単純化するための改良だ。
シート自体も、座った際に乗員の脊柱がS字カーブの形状で維持されるよう骨盤角度やクッション形状が最適化された。頭部を安定させることで不必要に緊張したり車酔いしたりすることがなくなり、よりリラックスして移動を楽しむことができるようになるというわけだ。
サスペンションのスプリングとダンパーの特性も見直された。これも段差の横断時などに乗員がお辞儀をしたりのけぞったりする動きを低減するのが目的。同時にサスペンション部品の共振周波数を車室内空洞共鳴と切り離すことによって、特に砂利道などの路面でのロードノイズを大きく低減することができたという。
エンジンは従来通り、2.0Lガソリン、2.5Lガソリン、2.2Lディーゼルターボをラインアップする。2.5Lガソリンターボはラインアップから外れてしまったのはちょっと残念。トランスミッションは6速ATが基本だが、ディーゼル車でのみ、6速MTもチョイスが可能だ。
今回の改良では、6速ATの変速制御ロジックが進化。加速時にシフトアップする際の変速時間を短縮することにより、ダイレクトな運転感覚を味わえるようになったという。こうした一連の改良により、新型CX-5は快適性と走りの上質感が大幅に高められた。
スポーツモードとオフロードモードの切り替えが可能な「Mi-DRIVE」
走りに関する装備では、「Mi-DRIVE」の採用も目新しい。これは「MAZDA INTELLIGENT DRIVE SELECT」の略で、要するに、ドライブモードの切り替えスイッチだ。
これは従来型のガソリン車に搭載されていた、ノーマル〜スポーツモードの切り替えスイッチ「ドライブセレクション」に代わるもので、新たにオフロードモードが加わったのがトピック。従来型の4WD車では悪路での走破性を高めるオフロード・トラクション・アシストの操作スイッチがインパネ右側に配置されていたが、Mi-DRIVEはこれをシフトレバー脇のスイッチに統合したというわけだ。
オフロードモードに入れると、全車速域で後輪へのトルク配分を最大化してトラクションを向上、トラクションコントロールやGVC(G-ベクタリング コントロール)もオフロード用に最適化される。また、急斜面を登る際はエンジンのアイドリング回転数を上げてクリープトルクを増強してずり下がりを抑制したり、坂に対して斜めに下る場合には逆にアイドリング回転数を下げて速度調整をしやすくしたり、といった制御も行われる。
さらにガソリン車の場合は、AT制御もオフロード走行に最適化。ATのシフトアップポイントを高回転化して低速走行時の余裕駆動力を増やすほか、トルクコンバーターの制御を変更して滑らかかつ連続的にトルク伝達することで登坂性能を向上させる。
Mi-DRIVEの採用に伴い、メーターのグラフィックも変更された。従来型では小さなインジケーターが表示されるだけだったが、新型はメーターにわかりやすくモードの遷移状態が表示されるにようになった。
ただし、Mi-Driveにオフロードモードが備わるのは特別仕様車のフィールドジャーニーのみ。その他の4WD車には、従来同様、オフロード・トラクション・アシストのスイッチがインパネ右側に配置されている。
新型では、渋滞時の負担を軽減してくれるCTS(クルージング&トラフィック・サポート)も新採用となった。一定の距離を確保しながら前走車を追従走行する際、新型では走行レーンに沿って走るよう操舵もアシストしてくれるようになったのだ。従来型では走行レーンを逸脱しそうになるとドライバーに警告するとともにハンドル操作をアシストしてくれる前世代のものだった。
荷室のフロアが2段階高さ調整式に。床下収納スペースも拡大
現行型のCX-5は2017年の登場以来、多くのユーザーが愛用している。そうした方々からの声も開発陣に届いているようで、細かい使い勝手の改良が図られたのも新型の注目点だ。
まずは、荷室の使い勝手が進化したこと。荷室の床が2段階に高さを調整できるようになったのだ。重い荷物がある場合は、上段にフロアボードをセットしてテールゲート開口部との段差をなくすと出し入れが断然しやすくなる。
フロアボードは前後2分割となっているのもユニークだ。床下収納のスペースも拡大されたおかげもあって、さまざまな荷物を賢く収納できるようになった。
このほか、電動テールゲートもハンズフリータイプとなった。CX-8では2020年12月の改良で一足早く採用された装備で、リヤバンパー下に足を出し入れするだけでテールゲートの開閉が可能となる。CX-5ではセンサーをバンパー下に格納するため、リヤバンパーの形状を変更。新型の全長が従来型より30mm伸びているのはそのためだ。
センサーの反応も良好で、足の空振り率は低い。新型のリヤバンパーには中央部分に溝が刻まれているのだが、ちょうどそこが足を出し入れする目印にもなっていて都合が良い。
センターコンソールには、スマホのワイヤレス充電も追加された。これも普段使いでうれしい新装備である。
デザイン、走り、そして使い勝手と全方位で改良の手が入ったCX-5は、まさに円熟期を迎えつつあるようだ。