警察の交通取締りにノルマがあるって本当? ウワサの真偽と“納得いかない検挙”を避けるために知っておきたいこと

「特定の時期になると、交通取り締まりが厳しくなる」といった噂がある。また、そうさせているのは「警察官にノルマが課せられているからだ」との噂も聞かれる。これは本当なのだろうか。警察のノルマと交通取り締まりの関係を深堀りしてみよう。

ウワサではよく聞く「警察の取り締まりノルマ」は本当にあるのか?

「努力目標」や「数値目標」といった名目ではあるものの、現在も警察内にノルマは存在するらしい。

元警察官VTuberなどの暴露話によれば、明確なノルマはないが「努力目標」という名目で実質的なノルマのようなものはあったと口を揃えて語られている。

しかし、少なくとも個々の警察官にノルマ未達成によるペナルティはないようだ。検挙数を稼いで好成績をあげれば、ボーナス査定や出世待遇がよくなるようだが、その影響は大きなものではないとされている。

その一方で、警察全体では明確な交通取り締まりのノルマと言えるものが存在する。それが「交通安全対策特別交付金」だ。

交通安全対策特別交付金は年に2回、各都道府県および市町村に分配され道路交通安全施設の設置及び管理に使用される。その原資は「交通反則者納金」となっており、額にすれば半期あたり約200億円にものぼる。

年間の取り締り件数(反則告知件数)は500万件前後におよび、反則金(交通反則者納金)は年間500億円ほどにもなる。

反則金収入を原資として予算を組むということは、予算確保のために一定以上の取り締まりをしなくてはならないことになる。これは実質的な交通取り締まりのノルマと言えるだろう。

また「努力目標」という言葉で濁しても、警察全体や警察署単位で交通違反を検挙する動きが活発になれば、それは同調圧力となって現場で取り締まりをする警察官にノルマという形でのしかかってしまうことになる。

ノルマを達成できないと交通取り締まりにも影響が

違反を犯したら捕まるの仕方がない。ただし、取り締まり方法に問題がある場合もある。

実際のところノルマの有無が問題の本質ではない。より具体的な問題は、ノルマの存在によって引き起こされる不当な取り締まりだ。

「あの車は捕まらないのに、なぜ自分だけ?」「隠れて取り締まりのは不当では?」といった声はよく聞かれるが、これらは違反者の言い分でしかない。

もっと深刻なのは、検挙件数を挙げるための「道路交通法の拡大解釈」や「交通違反の捏造」だ。実際に警察官による不正な取り締まりの事実が公になっている。

近年は信号がない横断歩道における歩行者横断妨害の検挙件数が増えている。歩行者の「お先にどうぞ」というメッセージを受け取って進行したところを検挙されたケースもあるようだ。

2019年には北海道警察交通機動隊の警部補が速度違反車両の速度計測を故意に誤った方法で計測し、約半年間にわたり虚偽の書類を作成したとして懲役刑が科せられた。

2021年には福岡県警察の警部補が、違反行為を十分に確認できなかったにも関わらず、信号無視や横断歩行者妨害など10件の交通違反に際して、虚偽の現場見取り図を作成したとして処分されている。

そのほかにも、付近に人がいた場合の横断歩道での一時停止に関して、道路交通法の拡大解釈が過大に行われているといった声も聞かれる。

警察も組織である以上、ノルマが存在するのは当然であろう。しかし、こうした不当な取り締まりの背景にあるのが警察内のノルマであるのなら由々しき問題だ。

注意すべき危ない取り締まり時期はいつ?

スピード違反で赤キップを切るとその後の手続きが面倒になるため、あえて青キップで検挙するといった噂もある。

警察内部に存在するノルマを言及するよりも、ノルマはあるものとして対策を考えるほうが建設的と言えるだろう。

交通違反の捏造や法の拡大解釈に対してはドライブレコーダーなどで対策し、不服申立てをして戦う事でしか抗うことはできないが、取り締まりの強化に対してなら対抗手段はなくもない。とはいっても、ドライバーにできることは交通違反をしないように注意することだけだ。

しかし、取り締まりに目的があり、取り締まるのが人間である以上、必ず傾向が現れる。検挙率が高まる時期や時間帯、場所や違反内容に注意することで、より効果的に検挙を回避できるはずだ。

「年末は警察にとってかきいれ時」という噂は、まんざらでもないようだ。

ノルマとは目標量と期限があって初めて拘束力を持つ。短いスパンで見れば、注意すべきは週末や月末だ。ノルマが達成できていない警察官は交通量が増える週末や月末に検挙数を稼ごうとするだろう。

長いスパンでは半年ごとに注意したい時期が来る。公務員のボーナスは6月と12月であるため、評価の締めとなる5月と11月あたりは査定を気にする警察官が検挙数を増やそうと動くかもしれない。

また、年2回の交通安全対策特別交付金は2月〜7月に納められた反則金を9月に、8月〜1月の反則金が3月に交付される仕組みになっている。

ノルマがあることを前提とするならば、期末となる6月と12月の前後3カ月間ほどは、いわゆる「締め前のかきいれ時」として検挙頻度が高まると思って運転するとよいだろう。

2023年の1年間における一時不停止の検挙数は126万7094件で全体の23.1%にあたる。

また、検挙される違反の種類にも注目したい。とくに注意したいのはドライバーが最も犯しやすく、警察が検挙しやすい「一時不停止」だ。事実、一時不停止は検挙件数万年トップの交通違反となっている。

検挙数の多さで言えば次点は「速度違反」となる。なかでも多いのは15km/h以上20km/h未満および25km/h以上30km/h未満の速度超過で、これは誰もがつい出してしまう速度だ。

もちろん、それ以外の期間は取り締まりに力を入れないわけではない。

週末の夜は飲酒検問が増えるのは誰もが知るところだ。とくに、お盆や年末年始は飲み会が開催される機会が多いため、警察は当然、飲酒運転への警戒を強める。

もちろん各季節の交通安全期間中は、警察も取り締まりに力を入れる。また、各地域の交通事情に応じて、統計的に事故や違反などが増える時期や時間帯は取り締まり体制を強化することも覚えておこう。

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