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■FCXクラリティが日米でのリース販売に向けてラインオフ
2008(平成20)年6月16日、ホンダの燃料電池車「FCXクラリティ」が米国で7月、日本は11月から始まるリース販売のため生産を開始した。先代の「ホンダFCX」を進化させたFCXクラリティは、技術の進化に加え近未来的なスタイリッシュなフォルムで注目された。
●初めてリース販売されたホンダFCX
燃料電池車FCEVは、車載タンクに高圧で充填した水素と大気中の酸素を反応させて発電する燃料電池(FC:Fuel Cell)の電力をバッテリーに蓄え、モーターで走行する。排出されるのは原理的には水だけなので、究極の環境対応車と呼ばれる。さらに、EVよりも航続距離を長くできるポテンシャルを持つこともFCEVの強みである。
ホンダは、1990年代からFCEVの開発を本格的に始め、1999年には「ホンダFCX」のベースとなる「FCX-V1」と「FCX-V2」を開発し、米国と日本で公道試験を始めた。
そして、2002年にホンダFCXが初めてEPA(米国環境保護庁)とCARB(カリフォルニア州大気資源局)の認定を取得。これにより、米国での販売が認許され、2002年末にFCXはカリフォルニア州のロサンゼルス市庁と日本の内閣府に納車された。
その後、日米ともリース販売先を拡大し、日本では2004年の箱根駅伝や屋久島ゼロエミッションプロジェクトに参画し、米国カリフォルニア州では2005年から個人向けリースの販売も開始した。
●FCEV専用モデルのFCXクラリティが日米でリース販売
FCXを進化させたFCXクラリティは、次世代自動車にふさわしいスマートな流線形のスタイリングに変貌した。
新システムの特徴は、水素や空気を縦に流す小型・高効率“V Flow(バーチカルフロー) FCスタック”で、モーターの最高出力を78kWから100kWに向上させ、パワープラント全体の重量出力密度2倍、容積出力密度2.2倍により、大幅な軽量コンパクト化と高出力化を達成した。さらに当時課題であった低温始動性についても、マイナス30度まで問題なく始動できるようになった。
これらの改良と優れた空力性能によって燃費は20%向上。また、水素タンク(圧力35MPa)は、156.6Lから171Lに増大し、効率向上と相まって航続距離は30%延びた。
このように大きく進化したFCXクラリティは、2008年7月、日本は11月からのリース販売開始に向けて、2008年のこの日ラインオフしたのだ。ちなみに、リース料は、米国は600ドル(約6.4万円)/月、日本は80万円/月と、日米で大きな差があった。
この差は、日本ではFCEVは特別なクルマという認識があるが、米国では例え最先端のFCEVであってもリース料金が一般的なリース料金のレベルを超えると市場で許容されないという、日米の認識の違いに起因している。
●FCXクラリティは、さらに進化してクラリティFCとなるも生産は休止
2016年には、さらにFCXクラリティを進化させた「クラリティ・フューエルセル(FC)」のリース販売を開始。2014年から、トヨタのFCEV「ミライ」が市販化(個人向け販売)しているのに対し、クラリティFCは官公庁や企業へのリース販売だった。
この時点では、クラリティFCの販売価格は766万円(ミライ723.6万円)、FCスタック最高出力103kW (114kW)、タンク容量141L (122.4L)、航続距離750km (650km)と、クラリティFCはミライに対して価格は高いものの、航続距離で勝っていた。
クラリティFCは、2020年6月に個人向けのリース販売も始めたが、2021年8月に生産をいったん終了。一方のトヨタのミライは、2020年12月にモデルチェンジし継続的に進化を続けている。
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FCVの生産を中断していたホンダだったが、今年(2024年)夏に発売予定の新型FCEV「CR-V e:FCEV」をホームページで公開した。カーボンニュートラルをBEVとFCEVで対応するというホンダの取り組みの表れだが、普及が停滞しているFCEVの新たな第一歩になるか、注目だ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。