戦前のフォード車をベースにしたSTREET RODマシンがこんなに日本にある!?『MOONEYES Street Car Nationals』で見たこれぞアメリカンカスタム!

今回で36回目を数える『MOONEYES Street Car Nationals(SCN)』にはアメリカ車を中心にHOTROD(ホットロッド)、LOW RIDER(ローライダー)、TRUCKIN’(トラッキン)、STREET VAN(ストリートバン)、などDOMESTIC&EROPIAN CUSTOM(ドメスティック&ヨーロピアンカスタム)など、さまざまなジャンルのカスタムマシンが集まってくる。その中でもイベントの主役とも言えるのが、1949年までに製造された車両をベースに公道走行を前提に製作したSTREET ROD(ストリートロッド)だ。今回はアメリカのカスタム文化の中でももっともアメリカらしいSTREET RODのエントリーマシンを一気に紹介する。

第二次世界大戦前のアメ車にV8エンジンをインストール!
SCNの花形・STREET RODマシンを一気に紹介!

5月12日(日)、東京・お台場にある青海駐車場特設会場にて『36th Anniversary MOON EYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)が開催された。このイベントは参加台数1000台、来場者1万人以上を数える国内有数のAMERICAN CUSTOM(アメリカンカスタム)イベントで、HOTROD、LOW RIDER、TRUCKIN’、STREET VAN、などDOMESTIC&EROPIAN CUSTOMなど、さまざまなジャンル魔のマシンがエントリーしている。

東京・お台場にある青海駐車場特設会場で開催された今年のSCNの様子。

参加台数1000台以上!アメ車や国産旧車からネオクラに新型プリウスも!? カスタムカーの祭典『MOONEYES Street Car Nationals』を見てみよう!!

今年も初夏のAMERICAN CUSTOMの祭典『MOONEYES Street Car Nationals(ムーンアイズ・ストリートカー・ナショナルズ。以下、SCN)』が開催された。今回で36回目を数えるSCNは参加台数は1000台を超え、来場者数は1万人以上を数えるアジア最大規模のCUSTOM SHOWだ。参加車両はアメ車ベースのHOTROD(ホットロッド)、LOW RIDER(ローライダー)、TRUCKIN’(トラッキン)、STREET VAN(ストリートバン)から空冷VWベースのCAL LOOK(キャルルック)、軽自動車やコンパクトカーなどをベースにしたDOMESTIC CUSTOM(ドメスティックカスタム)までジャンルを問わず様々なマシンが一同に介する。今回はそんなSCNの様子をリポートしよう。

その中でもイベントの主役とも言えるのが、HOT RODのジャンルのひとつで、1949年までに製造された車両をベースに公道走行を前提に製作したSTREET RODだ。

DEUCE(デュース)こと1932年型フォード・モデルBロードスター。エンジンはオリジナルのモデルBに搭載される「フラットヘッド」の愛称を持つ3.3L V8サイドバルブだ。正確には直4搭載車をモデルB、V8搭載車はモデル18の名称が与えられているが、今日では一般的に両車をひとまとめにしてモデルBと呼称することが多い。

STREET RODのベースとなるのは、モデルAやモデルB、モデルTなどのアーリーフォードが中心で、他にもシボレー・マスターやデソート・エアフロー、アメリカン・バンタム、クロスレイなどが用いられることもある。すなわち、アメリカ車の中では比較的コンパクトな戦前の大衆車をベースに、パワフルなV8エンジンを搭載して動力性能を高めたマシンということになる。

『Fly Wheels』誌(イン・フェイス刊)のアワードを受賞した1936年型フォード・ピックアップ。
フロントの足回りをストレートアクスルに改造し、ドラッグレースでのトラクションを稼ぐために高く持ち上げたGASSER(ガッシャー、あるいはギャッシャーと呼ばれる)にカスタムされている。

SCNの会場を訪れると、「よくぞ、これだけの台数のSTREET RODが日本に存在したものだ」と毎度のことながら感心させられる。日頃、街中ではまず見かけることのないSTREET RODがこの場所でさも当然といった様子で並んでいるのだ。そのほとんどがアーリーフォードのカスタムカーだ。

FIFTIES(フィフティーズ=1950年代)スタイルで仕上げられた1931年型フォード・モデルA 5ウィンドウクーペ。
ルーフをチョップしてバランスの良いスタイルに仕上げられている。ボディ側面にはNuts Artworksの手によるグラフィックが印象的。

STREET RODのスタイルを大別すると、1950年代の「FIFTIES(フィフティーズ)」、1960年代の「TRADITIONALS(トラディショナル)」、そして最新のテクノロジーを惜しみなく注ぎ込んでマシンを製作する「HiGH TECH(ハイテック)」が存在するが、FIFTIESやTRADITIONALSに比べて製作するのにHiGH TECHはコストが嵩むことから、エントリーしているクルマはFIFTIESやTRADITIONALSのみだったようだ。

1937年型パッカード115ロードスター。STREETRODの範疇からは外れるが、国内では見かけることの少ないレアな高級車な上、ボディのコンディションが良いので紹介する。
リアエンドには折りたたみ式のキャリアが備わり、その上には作りの良い木と皮を使った旅行用トランクが載せられている。クルマのラゲッジをトランクと呼ぶのはこれが語源。
一見すると2人乗りだが、車体後部のハッチを持ち上げると格納式のリアシートが姿を表す。リアフェンダーのステップに足をかけて乗り込む。

とは言え、エントリー車両のレベルは高く、アメリカ本国のカーショーでもアワードを充分狙えそうなマシンが散見された。多くはSCNをはじめとしたMOONEYES主催イベントの常連車両だが、ちらほらとニューフェイスも見受けられた。そんなSCNの会場で出会った素晴らしいSTREET RODをここでは紹介して行くことにしよう。

1923年型フォード・モデルTロードスターピックアップ。いわゆるT-BUCKET。
フロントアクスルを前に延ばし、ボディを薄く低くカスタマイズしたマシン。心臓部はシボレーのスモールブロックV8に載せ替えられている。
ブラウンメタリックのペイントとサイドのストライプの組み合わせがが1970年代のテイストを感じさせる1932年型フォード・モデルBロードスター。フェンダーとランニングボードを外したHI-BOYスタイルとしたバランスの良いマシン。細部に至るまで美しく磨き込まれている。
1932年型フォード・モデルB 4ドアセダン。DUECEの中ではカスタムベースに選ばれることの少ない4ドアセダンを敢えてチョイスし、マットブラックのペイントにホワイトウォールタイヤの組み合わせがなんとも良い雰囲気を醸し出している。
1931年型フォード・モデルA 5ウィンドウクーペ。マットブラックのボディにピンストライプが奔るTRADITIONALSスタイルのマシン。
1932年型フォード・モデルB 2ドアセダン。ルーフをチョップせず、ボディもSECTIONING(セクショニング)せずストックのまま。1970年代はこうしたスタイルのSTREET RODが主流だった。
1932年型フォード・モデルBピックアップ。先程の2ドアセダンと同じく、ルーフのチョップはされていないが、フロアを加工してフレームをボディよりも下げるCHANNELING(チャネリング)という加工がされている。これにより見た目の印象は大きく変わっている。
1935年型フォード・ピックアップ。程よくルーフをチョップし、ボディはSECTIONINGとCHANNELINGで限界まで低くしている。ボディに積極的に手を入れたマシン。
鮮やかなイエローでペイントされた1932年型フォード・モデルBロードスター。フェンダーやランニングボードを残すことを前提に、フロントの足回りをやや低めのセッティングとしたバランスの良いスタイリングとなっている。
1935年型フォード・ロードスター。センターポイズと呼ばれる重心位置を前方に移した独特のスタイリングを強調すべく、Aピラーを低くし、キャンバストップはなだらかに後ろ下がりになるように変更されている。ボディは尻下がりにテールを延長。低くローダウンされた足回りにリアフェンダーにはスパッツを装着することでぐっとエレガントなスタイリングに仕上げられている。
1937年型フォード2ドアセダン(左)と1936年型フォード・ロードスター。モデルAやBのエントリーが多いが、それ以降の年式の車両もエントリーしている。

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著者プロフィール

山崎 龍 近影

山崎 龍

フリーライター。1973年東京生まれ。自動車雑誌編集者を経てフリーに。クルマやバイクが一応の専門だが、…