ホンダのライトウェイトスポーツ「バラードスポーツCR-X」デビュー。誰にでも手の届く99.3万円~で若者を魅了【今日は何の日?7月1日】

ホンダ・バラードスポーツCR-X
ホンダ・バラードスポーツCR-X
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日7月1日は、ホンダのライトウェイトFFスポーツ「バラードスポーツCR-X」が誕生した日だ。スタイリッシュなデザインと軽量化を追求したコンパクトスポーツは、ホンダらしいFFの軽快な走りが自慢だった。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・ホンダ バラードスポーツCR-Xのすべて

■バラードの派生車、スポーティなバラードスポーツCR-X

ホンダ・バラードスポーツCR-X
ホンダ・バラードスポーツCR-X

1983(昭和58)年7月1日、ホンダの「バラードスポーツCR-X」が発売。バラードスポーツCR-Xは、2代目シビックの兄弟車「バラード」の派生スポーツモデルで、1980年代にスポーツ志向に回帰したホンダが放ったFFライトウェイトスポーツである。

ホンダ・バラードスポーツCR-X
1983年にデビューしたホンダ「バラードスポーツCR-X」。軽量コンパクトなライトウエイトFFスポーツ

●1980年代本来のスポーツ志向に回帰したホンダ

1970年代のオイルショックと排ガス規制の強化を乗り切り1980年代を迎えると、日本メーカーは高性能・高機能モデルを積極的に投入した。
もともとスポーツ志向の強かったホンダは、1982年にホットハッチ「シティ・ターボ」、ワイド&ローのスペシャリティカー2代目「プレリュード」、続いてFFライトウェイトスポーツ「バラードスポーツCR-X」を投入した。

1980年にデビューしたホンダ初代「バラード。2代目「シビック」の4ドアセダン版
1980年にデビューしたホンダ初代「バラード。2代目「シビック」の4ドアセダン版

バラードスポーツCR-Xは、1980年にデビューした2代目「シビック」の兄弟車「バラード」の派生スポーツとして誕生した。バラードは、角目ヘッドライトにロングノーズ・ショートデッキの3ボックスセダンで、当時大人気となっていたシビックとは対照的に、バラードは2代目シビックを4ドアセダン化しただけと捉えられ、厳しい販売を強いられていた。

その後、1983年にモデルチェンジをして2代目バラードが登場したが、人気は挽回できずに1987年に生産を終えた。しかし、1983年のモデルチェンジの際に派生車として登場したバラードスポーツCR-Xは、その後も存続したのだ。

ホンダ・バラードスポーツCR-X
ホンダ・バラードスポーツCR-X
ホンダ・バラードスポーツCR-X
ホンダ・バラードスポーツCR-X

●ライトウェイトFFスポーツという新たなジャンルを開拓

ホンダ・バラードスポーツCR-X
ホンダ・バラードスポーツCR-X

バラードスポーツCR-Xは、FFの軽量ボディにより実現されるライトウェイトFFスポーツである。最大の特徴は、2+2シートに割り切った斬新なパッケージングと、軽量化材料の適用により実現された軽量ボディである。1.3Lモデルで760kg、1.5Lモデルは800kgとズバ抜けた軽量を達成したのだ。
具体的な軽量化材料としては、新素材H・P・ALLOY(ホンダ・ポリマー・アロイ)をフロントマスクやヘッドライト・フラップ、左右フロントフェンダー、左右ドアロア・ガーニッシュに。また前後バンパーには、新素材H・P・BLENDが採用された。

ホンダ・バラードスポーツCR-X
コンパクトにしてハイパワーを生むSOHC 4気筒1488ccの4バルブ・クロスフロー・エンジン

スタイリングは、新世代コンパクトスポーツに相応しく斬新だった。セミリトラクタブルヘッドライトを装備した低く抑えたボンネット、シャープなテールエンドなどワイド&ローでスポーティさをアピール。パワートレインは、1.3L(80ps)&1.5L(110ps)直4 SOHCエンジンと3速ATおよび5速MTの組み合わせだった。

車両価格は、1.3Lが99.3万円/107.3万円、1.5Lが127万円/138万円。ちなみに当時の大卒初任給は13万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で176万~244万円に相当するが、当時としては安価なスポーツモデルである。
さらに翌年には、最高出力135ps/最大トルク15.5kgmを発揮する1.6L高性能(ZC)エンジンを搭載した「バラードスポーツCR-X Si」が追加され、その軽快な走りは多くの若者を魅了した。

●3代目CR-XデルソンをもってCR-Xシリーズは終焉

ホンダ2代目「CR-X」
1987年にデビューしたホンダ2代目「CR-X」

1987年にシビックが4代目にモデルチェンジすると同時に、バラードスポーツCR-Xも新型に移行。車名は「CR-X」の単独ネームに。2年後の1989年には、最高出力160psを発生するVTECを組み込んだ1.6L直4 DOHCエンジンを搭載した「CR-X SiR」を追加。NA(自然吸気)エンジンで、リッター当たり100psを超える高性能モデルは、当時は図抜けた走りを誇った。

ホンダ3代目「CR-Xデルソル」
2002年にデビューしたホンダ3代目「CR-Xデルソル」

そして、1992年に登場した3代目「CR-Xデルソル」は、先代のファストバックスタイルを一新、トランストップの2シーターオープンモデルへと大変身。電動トランストップは、技術的にはユニークだったが、同時に用意された手動式に比べると50kg程度重く価格も高かったため、評判は芳しくなかった。
デルソンの最高出力170psの1.6L DOHC VTECエンジンを搭載した高出力仕様の走りは評価されるも、人気は盛り上がらず、結局3代続いたCR-Xシリーズは1998年に生産を終えたのだ。

ホンダ・バラードスポーツCR-X
ホンダ・バラードスポーツCR-X

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スポーツモデルといえばFRが常識だが、バラードスポーツCR-Xは軽量化と足回りのチューニングにより、その不安を払拭。ホンダが得意とする伝統のFF技術で、これだけコーナーがクイックに曲がれるぞとアピールしたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

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竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…