トヨタ「スプリンター・カリブ」こそRVブームの先駆け。145万円でデビュー【今日は何の日?8月30日】

トヨタ「スプリンター・カリブ」
初代発売時のカリブのカタログより
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、走破性に優れて多人数でアウトドアが楽しめるマルチパーパスな4WDハイトワゴン「スプリンター・カリブ」が誕生した日だ。1980年代に流行り始めたアウトドアブームの先駆け的なモデルとして、アウトドアを楽しむファンから支持された。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・新型スプリンター・カリブのすべて

■1980年代のアウトドアブームに応えたマルチパーパスワゴン

1982(昭和57)年8月30日、1980年代初頭に火が付いたアウトドアブームに対応したトヨタの「スプリンター・カリブ」がデビューした。スプリンター・カリブは、キャンプなどのアウトドアの足として悪路でも多人数が楽しめる、RVの先駆けとなった斬新な4WDのハイトワゴンだった。

トヨタ「スプリンター・カリブ」
トヨタ「スプリンター・カリブ」

アウトドアブームとともに到来したRVブーム

トヨタ「スプリンター・カリブ」
カリブは1981年の東京モーターショーでRV5として参考出品され、翌年に発売。ルーフまで回り込む大きなリヤサイドウインドウは市販車ではややコンパクトに

最近はSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)が人気を獲得しているが、2000年以前にはRV(リクレーショナル・ビークル)が市場を席巻していた。RVは、オフロードで優れた走破性を発揮して、多人数でキャンプなどアウトドアが楽しめる4WDモデルを指す。

トヨタ「スプリンター・カリブ」
1982年に誕生したトヨタ「スプリンター・カリブ」のリアビュー

RVブームと言えば、オフロード4WDとして一世を風靡した三菱自動の「パジェロ」が有名だが、RVはオフロード車やクロカン車だけでなく、広義にはミニバンやワゴンをも含めた今のSUVとほぼ同義の総称である。
トヨタは、それまでの武骨なオフロード車や商用車ベースの1BOXではなく、乗用車をベースにした車高の高いワゴンタイプのスプリンター・カリブを市場に投入したのだ。

アウトドアで使える個性的なスプリンター・カリブ

トヨタ「スプリンター・カリブ」
トヨタ「スプリンター・カリブ」

“面白4WD誕生”というキャッチコピーで登場したスプリンター・カリブは、アウトドアで自在に使えて多人数で楽しめることをアピールした。ハイルーフに大型のウインドウガラス、高い最低地上高、縦長のリアコンビランプなど、既存のワゴンとは一線を画する個性的なスタイリングで、さらにホイールベースを長くし、1クラス上の室内空間や荷室の広さが自慢だった。

トヨタ「スプリンター・カリブ」
縦置き搭載の3A-U(II)型エンジン。前ストラット/後ラテラルロッド付4リンク式コイルサスペンションやパワートレーンが見渡せるカットモデル

パワートレインは、4WDが構成しやすい縦置きターセル用1.5L直4 SOHCエンジンと、5速MTおよび3速ATの組み合わせ。駆動方式は、走行中でもFF/4WDが切り替え可能な新開発のパートタイム4WDを装備。これにより、キャンプなどで遭遇する悪路でも安定した走りが実現できたのだ。
車両価格は、トップグレードのAV-IIが145万円。当時の大卒初任給が12.5万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約267万円に相当する。

トヨタ「スプリンター・カリブ」
前席シートバックを後方に倒したフラットスペース

走破性に優れ、荷物がたくさん積めて開放感のある室内を持つスプリンター・カリブは、アウトドアファンから支持されて好調に販売を伸ばし、RVブームの先駆けモデルとなった。

トヨタ「スプリンター・カリブ」
遊びのクルマという大前提で登場した初代カリブ。下はマイナーチェンジモデル

マルチパーパス4WDのハイトワゴンブーム到来

スプリンター・カリブの登場が火付け役となり、他メーカーも次々と似通ったコンセプトのライバル車を投入した。

ホンダ「シビックシャトル」
1984年に登場したホンダ「シビックシャトル」
三菱「RVR」
1991年に登場した三菱「RVR」

ホンダは、シビックベースの「シャトル(1983年~)」、三菱自動車からは「シャリオ(1984年~)」、スバル(当時は富士重工業)は「2代目レオーネ・ツーリングワゴン(1984年~)」、日産自動車「プレーリー」に4WDを追加(1985年~)するなど、これによりマルチパーパスな4WDワゴンブームが巻き起こった。

1990年代に入るとRVブームは絶頂を迎え、なかでも「デリカスターワゴン(1986年~)」、「RVR(1991年~)」、「2代目パジェロ(1991年~)」と人気モデルを投入した三菱が、RVブームのけん引役となった。

トヨタ「スプリンター・カリブ」
初代発売時のカリブのカタログより

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スプリンター・カリブが火を付けたワゴンタイプのRVは、1990年半ばにはスバルの「レガシィ・ツーリングワゴン」がけん引したスポーティなステーションワゴンブームに引き継がれた。しかし、そのブームも2005年を迎える頃にはミニバンやSUVに吸収されるかたちで消え去った。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…