気鋭のプレミアムSUV、CX-80は、マツダからの『満額回答か』? 

マツダのラージ商品群、国内第2弾のCX-80は、マツダのフラッグシップSUVだ。そのCX-80でロングドライブに繰り出した。PHEVモデルと直6ディーゼルMHEVの2モデルを試した。果たして、CX-60デビュー時にメディアやユーザーから寄せられた疑問やコンプレインにCX-80は答えられたか?
TEXT:瀨在仁志(SEZAI Hitoshi)PHOTO:Motor-Fan

欧州プレミアムSUVに対抗できるポテンシャル

マツダCX-80 XD XD-HYBRID Exclusive Modern 6人乗り

マツダのラージ商品群、いわゆるプレミアムSUVの第2弾『CX-80』が2024年10月にデビューした。すでに米国では70と90が投入され、日本では22年9月に60をラインアップ。これで日米併せてラージ商品群が出揃ったことになる。

あらためてその国内プレミアムSUVの注目ポイントを振り返ってみると、パワーユニットにはマツダ初の3.3Lストレート6ディーゼルエンジンを搭載し、従来のSUVモデルが横置きFFベースだったのに対し、FRレイアウトを採用。メルセデスのGLEやBMW・X5同様に縦置き6気筒ユニットからの駆動力はリヤを中心に伝達され、滑りが生じるとフロントへもトルクが流れる4WD機能を有している。

全長×全幅×全高:4990mm×1890mm×1705mm/1710mmmm(ルーフレールあり) ホイールベース:3120mm
車重:2090kg 前軸軸重1120kg 後軸軸重970kg 最小回転半径:5.8m

FRベースの4WDモデルのメリットは、重量級であっても前後重量バランスを大きく崩すことがなく、重さを意識させない走りができること。速度レンジの高い領域まで、ハンドリング性能を犠牲にしたくないプレミアムSUVならではのパッケージングだ(ちなみに、3.3L直6ディーゼルMHEVモデルの前後重量配分は54.9:45.1)。

もちろん先に投入されたCX-60もその恩恵を受けているにもかかわらず、いまいち話題にあがってこないのが惜しい。今回CX-80が投入されたことで、欧州プレミアムSUV同様のパッケージングを持つことにスポットを当てて、再認識してほしいと思う。

そういった意味では、秘めたる走りのポテンシャルを持つラージ商品群の最新モデル『CX-80』の存在意義は大きい。CX-60では乗り心地が硬いとか、前後バランスがイマイチかな。などと言われてきたが、CX-80ではその点を踏まえて、改善が加えられているはず。CX-60は走りに振りすぎればウィークポイントも出てくるし、次に投入予定があるCX-80との棲み分けを思えば、主張が少々強すぎたとも考えられる。今回CX-80の投入でプレミアムゾーンユーザーや口うるさい我々の声に応えての標準化。マツダの考えるプレミアムSUVとしての回答が出されたとも言える。

インテリアの質感は文句なし。

直6ディーゼルMHEVの走りは○

期待通り、6気筒ディーゼルMHEVユニットの走りは良かった。ディーゼルユニットを搭載するモデルは48Vのマイルドハイブリッドの有無があり、HEVモデルは4WDモデルのみ。素のディーゼルユニットはFRモデルも用意されている。残念ながら素のディーゼルモデルには試乗できなかったが、マイルドハイブリッドモデルは、CX-60試乗の時に感じられたトルコンレスによる変速ショックが緩和され、再始動時の滑らかさもある。

神戸市内から淡路島を通って徳島へ。天候は豪雨だった。

回していけば3000rpm以上でグッと加速感が増すと同時に6気筒ならではの伸びの良さを味わえる。欧州勢に比べると極細かなザラつき感があるが、このあたりはぶんぶん回して行けばそのうち、滑らかさを増していくのかもしれない。

8速ATは100km/h巡航で1500rpmを維持し、追い越し加速では550Nmの大トルクやモーターアシスト効果があるのかキックダウンすることなくスルスルと速度を増して静かに追い越しを終了させる。クルージングの快適さはディーゼルエンジンであることを忘れさせ、燃料代も気にせず踏んでいける点は心も財布も満足させてくれる。

もっとも直進安定性に関してはひと言ある。ステアリングの中立付近の落ち着きはパワステとしては維持されているものの、現実には外乱に反応している様子で修整を意識させる。ステアリング自体はピタリと収まっているのに、足元が異なる反応をしているような違和感が残るのは惜しい。3120mmというロングホイールベースを生かした、矢のような安定感に今後期待したい。

ラゲッジルーム 258L(3列目シート使用時) 3列目格納時687L 2/3列目格納時1221L

ハンドリング性能や乗り心地は良かった。フロントミッドシップとも言えるエンジンマウントレイアウトの効果もあり、フロントの重さを感じることなくターンインしていける。パワーをかけていけばリアがジワッと荷重を受けて、前後バランス良く旋回姿勢に入ってくれる。リヤの硬さが感じにくく、前後のバランスがとれている。

乗り心地的にもカドが丸く、なおかつ動き出しがスムーズだから、ハンドリング性能同様に進化のあとが見えた。

マツダCX-80 XD XD-HYBRID Exclusive Modern 6人乗り
全長×全幅×全高:4990mm×1890mm×1705mm/1710mmmm(ルーフレールあり)
ホイールベース:3120mm
車重:2090kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
駆動方式:FR
エンジン
形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
型式:T3-VPTH型(e-SKYACTIV-D3.3)
排気量:3283cc
ボア×ストローク:86.0mm×94.2 mm
圧縮比:15.2
最高出力:254ps(187kW)/3750pm
最大トルク:550Nm/1500-2400rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:74L
トランスミッション:トルクコンバーターレス8AT
モーター(M-HYBRID Boost)
MR型永久磁石同期モーター
最高出力:16.3ps(12kW)/900rpm
最大トルク:153Nm/200rpm
燃費:WLTCモード 19.2km/L
 市街地モード16.2km/L
 郊外モード:19.1km/L
 高速道路:20.8km/L
車両本体価格:602万2500円(オプション:マシングレープレミアムメタリック5万5000円)

PHEVモデルはリヤの突き上げが△

マツダCX-80 PHEV Premium Modern

対して、もう1台乗ったPHEVは重量増にともなう脚周りの違いなのか、リヤの突き上げ感やボディのピッティング頻度が多く、改善代は小さく感じた。

車両重量:2240kg 前軸軸重1130kg 後軸軸重1110kg 最小回転半径:5.8m
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:PY-VPH型
排気量:2488cc
ボア×ストローク:89.0mm×100.0 mm
圧縮比:13.0
最高出力:188ps(138kW)/6000pm
最大トルク:250Nm/4000rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:70L
モーター
MS型永久磁石同期モーター
最高出力:175ps(129kW)/5500rpm
最大トルク:270Nm/400rpm
駆動用電池:355V/17.8kWh
マツダCX-80 PHEV Premium Modernのインテリア

今回、ラージ商品群の、言わば最後の切り札に期待を寄せたが、ほぼ満額回答だったのはディーゼルMHEVモデル。縦置き6気筒FRレイアウト等、完全ブランニューの新パッケージングゆえに紆余曲折はあったに違いないが、CX-80デビューでひとまずプレミアムSUVの最適解は出た。今後はこれをベースに他のモデルやグレードに生かされていくことを期待したい。

マツダCX-80 PHEV Premium Modern
全長×全幅×全高:4990mm×1890mm×1710mmmm(ルーフレールあり)
ホイールベース:3120mm
車重:2210kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
駆動方式:FR
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:PY-VPH型
排気量:2488cc
ボア×ストローク:89.0mm×100.0 mm
圧縮比:13.0
最高出力:188ps(138kW)/6000pm
最大トルク:250Nm/4000rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:70L
モーター
MS型永久磁石同期モーター
最高出力:175ps(129kW)/5500rpm
最大トルク:270Nm/400rpm
駆動用電池:355V/17.8kWh

トランスミッション:トルクコンバーターレス8AT

燃費:WLTCモード 12.9km/L
 市街地モード9.9km/L
 郊外モード:13.2km/L
 高速道路:14.6km/L
EV走行換算距離 67km
車両本体価格:712万2500円

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…