【プロが選んだ思い出の愛車・ベスト3】あのとき買っていなかったら一生後悔していた日産スカイラインGT-R(R32)

ときに舌鋒鋭く自動車をレビューするモータージャーナリストは、どのような愛車とともに人生を過ごしてきたのだろうか。テクノロジーやモータースポーツにも通じている世良耕太さんに、歴代のお気に入りの愛車・ベスト3を聞いてみた。

TEXT●世良耕太(SERA Kota)

3位:トヨタMR2 G-Limited【MT】(2代目)

「振り返ると背後にはエンジンカバー。この環境を手に入れただけで満足だった」

初任給を握りしめて(例えです)買ったクルマである。予算の都合もあったが、「ミッドシップ」「2シーター」であることに惹かれていたので、ターボエンジンを搭載したGT(3S-GTE、225ps/31kg-m)は選ばず、自然吸気(3S-GE、165ps/19.5kg-m)エンジン搭載グレードを選んだ。充分に楽しかった(音はあんまり良くなくて、「シビックのエンジンのほうがいい音するなぁ」と当時は思っていたが)。

トヨタMR2
1989年にモデルチェンジして2代目に移行したトヨタMR2。写真はターボエンジンを搭載したトップグレードのGT。初期型は225psという最高出力に対して、14インチタイヤはキャパ不足が指摘された。その後、インチアップやブレーキ容量拡大などの改良を重ねることでハンドリングも熟成されていった。

コンパクトなボディ、リトラクタブルヘッドライト(これ、ポイント)、低い着座位置、下部に燃料タンクを収めた高いセンターコンソールに左腕を載せて操作するシフトレバー、運転席から振り返ると背後は高い壁で、高い位置に湾曲した薄いウインドウがあって、そこから放熱口のあるエンジンカバーが見えた。この環境を手に入れただけで満足だった。

エンジンを始動させると、当然だが、背後から音が響いてきて、ミッドシップであることを知らせてくれた。カナブンみたいなダークターコイズマイカのボディカラーも気に入っていた。いまでも持っておきたい1台である。

トヨタMR2
こちらは自然吸気エンジン搭載のG-Limited。GTとの外観上の差はほとんどない。

2位:MAZDA3 ファストバック X Proactive Touring Selection【AWD、MT】

「e-SKYACTIV-Xエンジンとの対話、クルマとの対話が楽しい!」

現有車両だ。こんなにハマるとは思っていなかった、というのが本音である。前のクルマ(フォルクスワーゲン・ゴルフ7)の年間平均走行距離に半年足らずで達してしまった(それだけ用事が多かった、ということでもあるのだが)。

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MAZDA3を選んだ最大の理由は、ガソリン圧縮着火燃焼を行なうe-SKYACTIV-Xを積んでいること。加えて、4輪のタイヤの能力を効果的に引き出すための制御である点に共感し、AWDを選択した。MTの設定があるのもポイントだった。

MAZDA3
ファミリアからアクセラの流れを汲み、2019年から日本での発売が開始されたマツダのCセグメントカーがMAZDA3だ。ハッチバックとセダンがラインナップするが、前者はとくにボディ後半の流麗なデザインが秀逸だ。

e-SKYACTIV-Xは高効率エンジンとして見られがちだが(実際、高効率ではある)、所有してみると、対話の楽しいエンジンであることがわかる。それが、ハマった理由だ。アクセル操作に対する反応が良くてリニアだし、懐が深く、柔軟で、むずがらないし、わめき散らさないし、いい音がする。エンジン回転を自由に選べるMTとの相性がいいし、高速巡航時は「いい音」が耳に届くようなチューニングが施されている。

SKYACTIV-X
世界で初めて実用化に成功した燃焼制御技術「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」を採用したe-SKYACTIV-Xエンジン。190ps&240Nm、WLTCモード燃費16.7km/L(4WD)とスペック自体は突出したものではないのだが、実際にドライブしてみるとファンなエンジンであることに驚かされる。

エンジンとの対話、クルマとの対話が楽しいから、自然と走行距離が延びているのだろう。まだ付き合いが短いので、2位とした。

1位:日産スカイラインGT-R Vスペック(BNR32)

「寒空の下、タービンブローで積車を待ったのもいい思い出だ!?」

自動車専門誌の新車情報記事に掲載されたフロント・シチサン(7:3)のスタジオ撮影写真を見て、ひと目惚れ。雷に打たれたような衝撃を受けた。初任給を握りしめても(例えです)買えるはずはなく、MR2で慰めを得て約3年を過ごし、BBSの17インチホイールにブレンボのブレーキを備えたVスペックが登場したのを機に、思い切って購入した。買っていなかったら人生後悔していると思うので、買ってよかった。

日産スカイラインGT-R
1993年のマイナーチェンジ時に追加されたVスペック。前後ブレーキローター径の拡大、ブレンボ製ブレーキ、BBS製17インチホイール、225/50R17サイズタイヤなどを装備していた。

MR2と同様にGT-Rがある生活を手に入れただけで満足だった。最大の満足ポイントは、RB26DETT(2.6L直6ツインターボ)が奏でる音である。とくに、テールパイプから放出される野太い音がお気に入りだった。高回転まで回すと金属質な音がエンジンルームから響いてくるのも良かった。

ピッタリフィットして邪魔じゃないモノフォルムのシートが良かったし、握り心地のいいステアリングホイールが良かった。メータークラスターのサテライトスイッチがイカしていたし、センターコンソールの3連メーターがいい雰囲気を醸し出していた。

日産スカイラインGT-R
こちらは1989年に登場したスカイラインGT-Rの前期型。

大事に乗るつもりでサーキットはほとんど走らなかったのに、真冬の一般道を巡航しているときにタービンブローを起こして動かなくなり、寒空の下で積車を待ったのはいい思い出(としておく)。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…