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■ホンダスポーツの象徴“タイプR”を冠する第1弾NSXタイプRが登場
1992(平成4)年11月27日、1990年に鮮烈なデビューを飾ったホンダのスーパースポーツ「NSX」にレーシングスピリットを注入した「NSXタイプR」がデビューした。ベースのNSXに対して軽量化をさらに推進し、レーシングカーのチューニングを施した究極のピュアスポーツである。
ホンダスポーツの象徴として登場したミッドシップのNSX
NSXがデビューしたのは、日本がバブル景気に沸きあがっていた1990年2月のこと。新時代を象徴するスーパースポーツとして、ホンダ渾身のミッドシップ(MR)スーパースポーツとして華々しくデビューした。
注目されたのは、世界初のオールアルミ・モノコックボディなど車全体の90%をアルミ化によって軽量化したこと。強度と剛性を維持しながら、加工法や溶接技術の難しいアルミを多用し、クルマ全体で200kgの軽量化に成功し、車両重量1350kg~1390kgいう驚異的な軽量化と高い剛性を両立させたのだ。
またリトラクタブルヘッドライトやグリルレスのフロント周り、スポイラー一体テールエンドなど、スーパースポーツらしく優れた空力性能を実現。
エンジンは、ドライバーの背後に最高出力280ps/最大トルク30.0kgmを発揮する3.0L V6 VTECエンジンをミッドに搭載。高回転高速出力化のために、エンジンをショートストローク化し、超軽量チタンコンロッドやモリブデン鋼のカムシャフトなど、F1エンジン並みの材料が惜しみなく使われた。
軽量化ボディに高速高出力エンジンをミッドシップしたNSXは、0→100km/h加速が5速MTで5.0秒(4速ATは6.8秒)、最高速度は270km/hと、欧州のスーパーカーにも負けない走りと安定した操縦安定性を誇った。
一方で、NSXは扱いにくいスパルタンなスポーツカーではなく、誰でも乗りこなせるスポーツカーとして、オートエアコン、電動パワステ、BOSE社製のサウンドシステムなどを採用し、さらに5速MTだけでなく4速ATが用意されている点も他のスーパースポーツとは一線を画した。
徹底した軽量化とF1の技術を結集したNSXタイプR
2年後に追加されたNSXタイプRは、より高次元な運動性能を実現するため、さらなる材料置換による軽量化とホンダがF1で磨いたレーシングカーのチューニング技術が採用された。
軽量化については、ただ軽量化するのではなく、クルマの重心を車体の中心へ移動させることで、ヨーモーメントや荷重移動の低減を図り運動性能を向上。具体的な軽量化として、バンパービームのアルミ化、リアスポイラー素材見直し、リアパーテーションガラスの1枚化、レカロ製の超軽量フルバケットシート、ENKEI製超軽量アルミホイールなどで、もともと軽量が自慢だったNSXよりもさらに120kgの軽量化に成功したのだ。
足回りもレーシング仕様でまとめられ、ダンパーやスプリングの強化はもちろんのこと、車高を10mm下げ、分離加圧式高応答ダンパーやキャンバー角/キャスター角などのアライメントの見直しなどを実施。エンジンのスペックは同じだが、レーシングエンジンと同じチューンニング手法を施し、トランスミッションは5速MTのみ。
NSX タイプRの車両価格は、970.7万円。当時の大卒の初任給は18万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では現在の価値で約1133万円に相当する。ベースのNSXに比べると約170万円高く、販売台数は3年間で480台だった。
その後も進化続けたNSX
その後もNSXは、タイプRに続いて以下の2つのスペシャルモデルを追加してユーザーの期待に応えた。
・脱着式オープントップ「NSXタイプT」
1995年、オープントップの「NSXタイプT」が登場。タルガトップのオールアルミ製ルーフの脱着は、左右のレバー操作だけの簡単な操作で行なえ、取り外されたルーフはトランクスペースを犠牲にすることなくリアキャビン内に収めることができた。
・スポーツ志向を高めた「NSXタイプS」
1997年に登場したタイプSは、車高を10mm低くし、スポーツドライビングを際立たせたモデル。BBS製鍛造アルミホイールによってバネ下荷重4kgの低減により、軽快なハンドリング性能を実現。MOMO製本革巻きステアリングホイール、レカロ製フルバケットシートなどで計45kgの軽量化を実現し、さらに走りを極めた。
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スーパースポーツNSXに、レーシング技術を随所に応用した唯一無二のピュアスポーツのタイプR。わずか480台と数が少ないだけに、中古車市場でも姿を見せることも稀で、例えお金に糸目は付けないと言っても入手できないクルマとなっているようだ。
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