登録車販売台数第一位の世界戦略モデル「トヨタ・ヤリス」【最新コンパクトカー 車種別解説 TOYOTA YARIS】

間違いなく日本を代表するコンパクトカーと言える「トヨタ・ヤリス」。特にハイブリッドモデルは競合車の中でも高いレベルのパフォーマンスを見せる。24年1月の一部改良では先進運転支援機能を大幅に充実させ、HV全車に装備。日常生活の安全性は大いに高まった。NAモデルも含め11グレードを展開し、マッチする選択肢が用意されている。
REPORT:青山尚暉(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:菅原樹里亜

ライバルを圧倒する先進装備 低燃費なのに走行性能は快活

ヴィッツの後継車として2020年2月の発売以来、売れに売れているのがトヨタ・ヤリス。何しろ23年4月〜24年3月期の登録車販売台数でヤリスクロスやGRヤリスを含むものの、前年比104.8%で第一位(二位はカローラ、三位はシエンタ)で、欧州でも人気の世界戦略車なのである。1.5ℓ3気筒エンジン、1.0ℓ3気筒エンジンを基本に、1.5ℓにはハイブリッドも設定。HVに電気式無段変速機、ガソリン車はCVTに加え、1.5ℓには6速MTも用意される。

エクステリア

躍動感を抱かせる前傾姿勢が特徴で、リヤフェンダーのグラマラスな造形が印象的。リヤコンビランプはテールランプをはじめ、ストップランプ、ターンランプをLED化している。最小回転半径は5.1m。

そんなヤリスが24年1月に一部改良を受け、ラジエターグリルの変更、「Z」の合成皮革+ツイード調ファブリックのシート、7インチTFTフルカラー液晶メーター、最新のディスプレイオーディオの採用といったアップデートが行なわれている。もちろん、先進運転支援機能のトヨタセーフティセンスも最新版となり、プリクラッシュセーフティの検出対象範囲を交差点の出会い頭時の車両や自動二輪車にまで拡大。一段と安全装備を充実させている。ちなみに、かなり実用的で日々の運転で役立つプロアクティブドライビングアシスト(PDA)が今回、HV全グレードに装備されたのだから安心安全だ(理由は後述)。

乗降性

そしてヤリス最大のセールスポイントと言っていい燃費性能はHVで最良36.0㎞/ℓ。ライバルを圧倒する商品力の持ち主でもある。さて、迫力を増した顔つきをもつ最新のヤリスHVの最上級グレード、WLTCモード燃費35.4㎞/ℓとなる「Z」のFF車を走らせれば、まずは前席の掛け心地の良さが好印象。トヨタの上級車と同様、背中の優しい包まれ感、座面のソフトなクッション性がもたらす心地良いサポート感は、同クラスの国産車にない魅力、強みと言っていい。

インストルメントパネル

内装色はブラックが標準で、「G」はトープ(茶系)もオプションで選択できる。車載ナビ付きディスプレイオーディオは、「Z 」と「G 」にメーカーオプションで設定する。ガソリン車の「X 」を除きオートエアコンを標準装備する。

そしてドライブモードを問わず、発進時から発揮されるモーターパワーによる速さ、強力な加速力も大きな魅力。パワーステアリング中立付近のドシリとしたタッチ、そこから切り込んでいく際の安心感ある重み、インフォメーションの確かさ、誰もが感じ取れるボディ剛性の高さ、試乗車が履くオプションの185/55R16サイズのタイヤ(「Z」の標準は185/60R15)によるしっかり感ある硬めの乗り心地により、GRではない標準車なのにコンパクトスポーツとも表現できる走りの楽しさを味わわせてくれるのだからゴキゲンだ。

居住性

ところで、トヨタセーフティセンスに含まれるプロアクティブドライビングアシストは一般道での歩行者の横断、飛び出し、自転車運転者の存在などを先読みし、運転操作をサポートしてくれるほか、先行車との距離が接近した際やカーブ手前、右左折時などでの減速操作をサポートしてくれる超賢い先進機能。これが市街地走行での安心安全に効果絶大。ライバルにないメリットとなりえる。

うれしい装備

純正アクセサリーのアジャスタブルデッキボード装着車は、サブトランクとして使える床下収納も備わる。荷物の大きさや量などに応じてデッキボードを上段、下段のいずれかに設置できるのが便利だ。
月間販売台数     6216台(23年11月~24年4月平均値)
現行型発表      20年2月(一部改良 24年1月)
WLTCモード燃費    36.0 ㎞/ℓ※「X(ハイブリッド)」のFF車

ラゲッジルーム

しかし、3気筒エンジンのゴロゴロしたフィールが気になる人は気になるに違いなく、試乗車にOP装着された55サイズのタイヤによる乗り心地の硬さ、荒れた路面、段差乗り越え時の足まわりのドタバタ感は、足がスムーズに動くとはいえ万人向けとは言い難い。標準サイズの15/14インチタイヤ装着車がお薦めだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.159「2024-2025 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

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