VWゴルフ8オーナー注目!ゴルフ”8.5″ 1.5Lガソリンと2.0Lディーゼルで”0.5分”の進化を試す

コンパクトカーの“メートル原器”たるVWゴルフ。そのゴルフが「8」から進化した。いわゆる「8.5」モデルである。1.5L直4ガソリンターボ+48V MHEVモデルと2.0L直4ディーゼルモデルに試乗した。「0.5」分の進化は体感できるか?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

ゴルフ8.5 進化のポイントは?

VWゴルフeTSI Active 車両価格:379万9000円 試乗車はDiscover Proパッケージ:17万6000円、テクノロジーパッケージ:22万円を装着

フォルクスワーゲン(VW)の第8世代ゴルフが進化し、いわゆる「ゴルフ8.5」になった。エクステリアでは、ヘッドライトの形状が変わり、シャープな目つきになった。もっとも、新旧を並べないと違いを判別するのは困難な程度の変化である。バンパーのデザインも変わっており、3本あった横桟が2本になって開口部が大きくなっている。光のあたり具合によっては、大きくなった開口部から熱交換器が「中見え」して興ざめするかもしれない。リヤコンビネーションランプのグラフィックも変わっている。

グレードはガソリンが下からActive Basic、Active、Style、R-Line、GTIとなる。ディーゼルはActive Basic、Active Advance、Style、R-Lineだ。Active Advance以上、もしくはテクノロジーパッケージをオプションで選択すると、フロントグリル中央部のVWがイルミレーションエンブレムになる。また、LEDマトリクスヘッドライトのIQ. LIGHTの照射距離は500m(!)に延びている。

左がゴルフ8、右が新型ゴルフ8.5 ライトの形状やフロントバンパーの形状が異なるのがわかる

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VWゴルフ車両本体価格

ボディタイプエンジンパワートレーングレード車両価格
ハッチバックガソリン1.5L直4ターボ+48V MHEVeTSI Active Basic349万9000円
eTSI Active379万9000円
eTSI Style443万7000円
eTSI R-Line475万3000円
2.0L直4ターボGTI549万8000円
ディーゼル2.0L直4ディーゼルターボTDI Active Basic396万円
TDI Active Advance463万8000円
TDI Style463万8000円
TDI R-Line475万3000円
ヴァリアントガソリン1.5L直4ターボ+48V MHEVeTSI Active Basic363万9000円
eTSI Active393万9000円
eTSI Style457万7000円
eTSI R-Line465万6000円
ディーゼル2.0L直4ディーゼルターボTDI Active Basic410万円
TDI Active Advance466万90000円
TDI Style477万8000円
TDI R-Line485万6000円
センターディスプレイのサイズは10インチから12.0インチに拡大された。

インテリアは10.25インチのデジタルメータークラスターが全グレードに標準装備。センターのタッチディスプレイは10インチから12.9インチに大型化された。大きくなっただけでなく、処理能力が上がり、使いやすくなったという触れ込みだ。アンビエントライトやスマートフォンのワイヤレスチャージングは全車標準装備。全車標準といえば、ステアリングヒーターとシートヒーターが全車標準になったのは大きい。

エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:DXD型(EA211evo型)排気量:1497cc ボア×ストローク:74.5mm×85.9mm 圧縮比:12.0 最高出力:116ps(85kW)/5000-6000rpm 最大トルク:220Nm/1500-3000rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:47L
電動機 型式:4452 最高出力:19ps(14kW) 最大トルク:56Nm

パワートレーンは3種類。ガソリンは1.5L直列4気筒ターボと2.0L直列4気筒ターボの2種類だ。後者はGTI専用である。トランスミッションはいずれも7速DSG(DCT)だ。これまではActive系に1.0L直列3気筒ターボ(最高出力81kW、最大トルク200Nm)を設定していたが、「8.5」では1.5L4気筒エンジンに統一した。ただし、Active系とStyle/R-Lineではスペックをわけており、前者は最高出力85kW、最大トルク220Nm、後者は最高出力110kW、最大トルク250Nmとなる。

ガソリンエンジン仕様は従来と同様、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載する。ベルトスタータージェネレーター(BSG)でブレーキエネルギーを回生して電気エネルギーに変換し、リチウムイオンバッテリーに蓄える。蓄えたエネルギーは12Vの電気システムに供給するほか、発進時にエンジンの駆動をアシストする。

BSGは水冷式に進化。最高出力も12kW→14kWへ向上した。

そのBSGはアップグレードされて水冷式となり、最高出力は12kWから14kWに向上。従来は停止後の再始動や、コースティング中に停止したエンジンの再始動に使っていたが、「8.5」では冷間始動時の始動にもBSGを使う。つまり、スターターモーターを廃止したということだ。その日一発目、あるいはドライブ中に長時間クルマを止めた後での始動時に、スターターモーター特有のキュルキュル音がせず、穏やかな調子でエンジンが始動する。また、回生したエネルギーを蓄えるリチウムイオンバッテリーの容量は、従来の250Whから704Whに大容量化されている。

eTSI Activeの○と△

全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1475mm ホイールベース:2620mm 車重:1320kg
WLTCモード燃費:18.8km/L 市街地モード 14.4km/L 郊外モード 19.4km/L 高速道路モード 21.2km/L

進化したゴルフ8.5のeTSI ActiveとヴァリアントTDI R-Lineに試乗した。進化前のゴルフ8は1.0L直列3気筒エンジン搭載車のリヤサスペンションはトーションビーム(VWの呼称ではトレーリングアーム)式、1.5L直列4気筒エンジン搭載車はマルチリンク(VWの呼称では4リンク)式として差別化されていた。ゴルフ8.5ではエンジンが1.5Lに統一されたのでサスペンションもマルチリンク式に統一されたのかも思いきや、さにあらず、Active系はトーションビーム式、それ以外はマルチリンク式となる。

タイヤは205/55R16サイズのNEXEN N blue Sを装着
エンジンは1.5L直4だが、Active系のリヤサスペンションはトーションビーム式

筆者の鈍いセンサーではサスペンション形式の違いによる挙動の違いを感じとることはできなかった。ずいぶん前からゴルフのトーションビームの味はよく知っているが(オーナーだった時期も10年ほどあるので)、悪くない。というか、とてもいい。突き上げもなくしなやかで、路面によく追従している感じがするし、安定感もある。それは、ゴルフ8.5でも同様だ。

エンジンは排気量の増加にともなって最高出力が4kW、最大トルクは20Nm上がった。最大トルクの発生回転数も2000rpmから1500rpmへと大幅に低くなっている。「だから良くなっているはず」という思い込みのせいか、心なしか頼もしさが増している感じはする。ただ、劇的な違いは感じられない。相変わらず、必要充分という印象だ。

力感の違いよりも、気筒数の違いによる振動騒音面の違いのほうが大きいかもしれない。3気筒エンジンの場合は低回転高負荷で走行する際にゴロゴロとした振動と低周波のゴロゴロ音が耳に届くケースがあったが、4気筒エンジンはその点スムースだ。もっとも、停止中はエンジンが停止するし、巡航時もエンジンはまめに停止してコースティング状態に入るので、3気筒エンジンが不得意とする面を意識させられる状況はほとんどなかったが。

トランスミッションは7速DCT

48Vのバッテリー容量が増えた効果もあるのだろう。巡航時にエンジンを停止する機会は増えているようだ。実用燃費にも効いているようで、高速道路での巡航時には20km/Lをゆうに超える区間燃費を確認した。もっと長い時間と距離をつき合って確かめたいところだが、燃費にだけ焦点を当てた場合、ディーゼルや他社のハイブリッド車を無理して買う必要はないかもしれない。それほど、ゴルフ8.5のガソリンエンジン仕様は燃費がいい。

筆者(身長183cm)が前後に座ると後席膝周りの余裕はこの程度だ。

燃費と引き換えになっているのが、減速フェーズのふるまいだ。コースティング時は当然のことながらエンジンブレーキが効かないので空走感が生まれ、先行車との間合いが想像よりも詰まりがち。ブレーキペダルを踏んでの減速フェーズでは、エネルギー回生が介入する影響なのか、踏力は一定なのに減速度が変動し、イメージどおりに止まるのにやや苦労する。そんな特有のクセは「8.5」になっても変わっていなかった。

VWゴルフeTSI Active
全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1475mm
ホイールベース:2620mm
車重:1320kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトレーリングアーム式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:DXD型(EA211evo型)
排気量:1497cc
ボア×ストローク:74.5mm×85.9mm
圧縮比:12.0
最高出力:116ps(85kW)/5000-6000rpm
最大トルク:220Nm/1500-3000rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:47L
電動機
型式:4452
最高出力:19ps(14kW)
最大トルク:56Nm

トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FF
WLTCモード燃費:18.8km/L
 市街地モード 14.4km/L
 郊外モード 19.4km/L
 高速道路モード 21.2km/L
車両価格:379万9000円
試乗車はDiscover Proパッケージ:17万6000円、テクノロジーパッケージ:22万円
総電圧44V

ヴァリアントTDI R-Line ハイブリッドに対抗できる燃費性能

VWゴルフ ヴァリアントTDI R-Line 車両価格:485万6000円 試乗車はDiscover Proパッケージ:17万6000円、テクノロジーパッケージ:23万1000円、レザーパッケージ30万8000円を装着

ディーゼルエンジン仕様はクセがなく、マイルドハイブリッドシステムと組み合わせたガソリン仕様よりずっと安楽につき合っていられる。110kW/3000-4200rpmの最高出力と360Nm/1600-2750rpmの最大トルクに変更はなく、排ガス中のNOxを浄化するSCR(尿素水溶液)を1ヵ所ではなく2ヵ所で噴射するツインドージングシステムを採用している点にも変わりはない。直噴インジェクターの最大噴射圧は2200barで、1サイクルあたり最大9回の噴射を行なう。

EA288evo型2.0L直4ディーゼルターボ
ターボチャージャーはこの位置。後方排気だ。
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ エンジン型式:DXP型(EA288evo型) 排気量:1968cc ボア×ストローク:81.0mm×95.5mm 圧縮比:16.0 最高出力:150ps(110kW)/3000-4200rpm 最大トルク:360Nm/1600-2750rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:軽油 燃料タンク容量:51L

ゴルフ8にTDIと呼ぶディーゼルエンジン仕様が適用された際に大きなアップグレードが行なわれており、ゴルフ8.5でも熟成されたその技術を受け継いでいる。1.5L直列4気筒ガソリンエンジンを積むeTSI Activeと同じコースを試乗したが、低速低回転時から湧き上がる豊かなトルクがもたらす走りの頼もしさは、明らかにTDIのほうが上だ。

255/40R18 ブリヂストンTURANZA T005を履く
リヤサスペンションはマルチリンク式(VWの表記では4リンク式)

低速時はディーゼルエンジンに特有の燃焼音が耳に届きがちだが、高速走行時はまったく気にならない。なにしろ、100km/h走行時のエンジン回転数は1500rpm程度。eTSIよりも500rpm程度低い。短い試乗時間&距離だったので精度高く確認はできていないが、高速道路主体の移動では明らかに、TDIのほうが燃費はいい。ヴァリアントTDIのWLTC高速道路モード燃費は24.1km/L(ハッチバックは24.8km/L)。試乗した際には「25km/Lは軽くいけそう」との印象を受けた。ハイブリッド車に太刀打ちできるレベルである。

ラゲッジスペースは611L 後席を畳むと1642Lにもなる。

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ヴァリアントは5ナンバー枠に収まる4640mmの全長(全幅は1790mm)ながら、後席を倒さずとも瞠目に値する広大なラゲッジスペースが広がっている。これを見てしまうと、「いいなぁ」と、ハッチバック歴が長い筆者でも考えこんでしまう。ハッチバック比で50mm長いホイールベースがもたらす、後席足元空間の余裕も魅力だ。走ってよし、燃費よし、使い勝手よしで、見た目も機能もスマート。ハッチバックも含め、ゴルフ8.5になって商品力に磨きがかかったのは間違いない。

VWゴルフ ヴァリアントTDI R-Line
全長×全幅×全高:4640mm×1790mm×1485mm
ホイールベース:2670mm
車重:1510kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rマルチリンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:DXP型(EA288evo型)
排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0mm×95.5mm
圧縮比:16.0
最高出力:150ps(110kW)/3000-4200rpm
最大トルク:360Nm/1600-2750rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:51L

トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FF
WLTCモード燃費:20.1km/L
 市街地モード 14.4km/L
 郊外モード 20.3km/L
 高速道路モード 24.1km/L
車両価格:485万6000円
試乗車はDiscover Proパッケージ:17万6000円、テクノロジーパッケージ:23万1000円、レザーパッケージ30万8000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…