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おしゃれなピクニック用品仕立ての特別なインテリア

今なお「日本で一番売れているクルマ」であるN-BOXだが、同じ軽スーパーハイトワゴンのスズキ・スペーシアが、その差をじわじわと詰めているのも事実だ。スペーシアが売れる理由としては、コスパと燃費に加えて、標準とカスタムに続く第三形態にして、今をときめくSUV風の「ギア」の存在が大きい。実際、先代で追加されたギアの販売台数は最終的にスペーシア全体のおよそ1/3を占めるまでになった。
エクステリア




そんなギアの人気を受けて、三菱eKクロススペースにデリカミニ、そしてダイハツ・タントファンクロス……とフォロワーが参入する中、王者ホンダが満を持して投入したのがN-BOX JOYである。N-BOX第三のモデルという着想の根源がスペーシアギアにあるのはまず間違いなさそうだが、それに正面から対抗するSUV風ではなく、まるでおしゃれなピクニック用品を思わせる仕立てなのが、モノマネ嫌いのホンダらしいところである。
乗降性


JOYもまた、内外装デザインはすみずみまで凝った専用仕立てになっているが、クルマとしての新機能が加わっているわけではないのは、スペーシアギアやタントファンクロスと同様だ。ちなみに、デリカミニだけは、4WDのみ専用サイズのタイヤで地上高を5㎜リフトアップするなど、メカニズム面でも専用部分が少しだけある。エクステリアの要所をブラックで引き締めるJOYだが、アンダーガードやホイールアーチの拡大など、SUV風に見える意匠は取り入れていない。金属板をプレスしたようなフロントグリルや専用ホイールキャップで表現されるのは、良い意味で商用車的なツール感である。ボディカラーも定番の白と黒以外は、アウトドアに似合い、今の旬でもあるアース系のカラーを揃える。
インストルメントパネル

ただ、JOYの真骨頂は、やはりインテリアだろう。タータンチェックの専用撥水シート表皮を中心に、全体をブラウン基調でまとめたセンスは新鮮だ。さらに注目は後席を倒すと現れる「ふらっとテラス」と名づけられた空間だ。N-BOXならではの低床で広大な荷室をテラス≒縁側に見立て、シートと同じチェックの撥水生地を張り、その中でまったり過ごせる快適空間に仕立て直した。
居住性


さらに、ふらっとテラスは、そこに座ったり寝転がったりしても快適なように、床面となる後席シートバック裏にはフレームの凹凸が邪魔にならないよう、プレートが追加されている。加えてフロア後端を80㎜引き上げて、身体やモノの滑り落ちを防ぐ工夫も施されている。そこで想定される典型的なアクティビティは、公園や広場にテーブルや椅子など持ちこんで、ランチやティータイムを楽しむ「チェアリング」である。
うれしい装備





モデル追加 24年9月26日
月間販売台数 17924台(24年6月~11月平均)
WLTCモード燃費 21.3km/ℓ※FFのNA車

ラゲッジルーム


JOYの価格は、ベースのN-BOX標準車の約15 万円高。繰り返しになるが、走りにまつわるメカニズムは、良くも悪くも普通のN-BOXと寸分も違わない。「エンジンもアシも変わらないのに15万円!?」なんてことが頭をよぎった時点で、そもそもJOYには向かない人種である。逆に言うと、クルマはあくまで、出先でまったり心地良く過ごすための移動・運搬手段でしかない人のためにつくられたのがJOYである。

