タウンエースがベースのシュピーレンとNV200がベースのシュピーレンNVを比べてみた
現在のキャンピングカー業界ではバンコンバージョン(バンコン)モデルが人気だが、ベース車両の大半を占めているトヨタ「ハイエース」シリーズの品不足によって、納期が不透明な状態に陥っている。
ハイエースは2024年1月の豊田自動織機不正問題が発端となり、同月末より出荷と受注を停止。同年3月より生産を再開したが、受注は2025年1月まで再開されなかった。今年1月に1年ぶりに受注が再開されたが、2025年の生産予定台数が極めて少なく、トヨタ系列販売店の顧客のみならず、バンコン向けの業販も十分な台数が確保できなかったと言われている。
従来、ハイエースのバンコンを主力商品として造ってきたビルダーの一部は、この事態を解消するために他車種ベースのモデルを開発。こうした背景もあって、現在の市場ではベース車の確保がしやすい車種が人気だ。
その代表的な存在として、トヨタ「タウンエース」と日産「NV200」が挙げられる。コンパクト商用バンと言われるカテゴリーで、サイズも排気量もお手頃だ。


まずタウンエースだが、サイズは4065×1665×1930mmで、エンジン排気量は1.5Lとなる。一方のNV200は、サイズが4400(4WDは4410)×1695×1855mmで、排気量が1.6Lのエンジンを積んでいる。
全長差が約350mmあるが、これはNV200が運転席前のセーフティエリアを長く確保しているためで、それが同モデルの現代的なデザインに繋がっている。排気量100ccの差は意外と顕著で、タウンエースの97ps&13.7kgf・mに対して、NV200は113ps&15.3 kgf・mというパワースペックを実現。運転していても、はっきりと走りの余裕を感じることができる。
このように、一見するとNV200が何かと優位性を持った車種のように思えるが、車内のユーティリティを考えると、実はそうでもないというのである。今回は、長年タウンエースベースのバンコンを製造し、さらに数年前からNV200ベースモデルも販売しているフロットモビールの『シュピーレン』を例にとって違いを見ていきたい。
シュピーレンは、後席にバリーションがあって、バタフライシート2人掛けと1人掛けがある。装備についても種類がいくつかあるが、パーキングクーラーを装備しない場合の基本的な家具の配置は一緒だ。レイアウトはベース車が異なっていても同様なのだが、やはり両モデルでは居住性に大きな違いが出るのである。
例えば、ベッドサイズで比較してみると、タウンエースベースの「シュピーレン」が2050×1200〜1300mmなのに対して、NV200ベースの「シュピーレンNV」の方は全長1850mmしかなく、横幅も最短で1190mmとなってしまう。室内高はNV200の方が600mm高いが、実際に室内にいるとやはり狭さを感じてしまうのである。
どうしてこのような差が出るのか。フロットモビールの高森裕士社長に聞いてみた。
「車体の形状の違いもありますが、実はそれよりもトヨタと日産のクルマづくりの差というものが大きく影響しています。内張を剥がしてみると、トヨタの場合はボディの接合に溶接を使い、極力空間効率を妨げないようにしています。一方、日産の場合はボルトを使って留めているため、その頭が室内側に飛び出してデッドスペースになっているんです。我々が新たな室内トリムを付ける時、どうしてもこの凸部を避けなければならず、その分だけ室内が狭くなります。また室内形状も直線的でなく、家具容積がその分だけ犠牲になるため、実用性もタウンエースの方が上になってしまうんです」
両モデルを実際に比較してみると、確かに「シュピーレン」のベースであるタウンエースは見た目が商用車然としているが、居住空間の広さは上だ。NV200ベースの「シュピーレンNV」はベッドも狭く、家具も小さい。
よく「家具なんて少しくらい小さくても」という声を聞くのだが、実際に使ってみると数cm小さいだけでモノが載せられずに不便な思いをすることがある。一方で、極力絞り込みのないスクエアな空間は、移動や着替え、積載などで利便性を感じることが多いのである。
キャンピングカーは、実用性と耐久性が重視されるクルマ。タウンエースも近々に保安基準適合のマイナーチェンジ版が投入されるため、今後の納期が不透明になると言われている。その点、日産車は納期が比較的早いようだが、ビルダーの意見をよく聞いてベース車を選んだ方が賢明と言えそうだ。














