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いよいよ発進! 新型6代目フォレスター
4月3日、SUBARUが新しいフォレスターの国内仕様を公開したと同時に、先行予約受付も開始した。
「国内仕様」と書いたのは、この新型は2023年11月のロサンゼルスオートショーにて世界初公開済みだからだ。
アメリカでは2024年から販売が始まっているから新規性は薄いはずだが、それでも日本のSUBARUファンや、新型への買い替えを検討していた先代、先々代あたりのフォレスターユーザーは、長い間待たされた1年余だったろう。
初代フォレスターのデビューは1997年2月だから約28年・・・時が経つのは早い。

1995年の第31回東京モーターショーに展示されたコンセプトモデル「ストリーガ」を市販化したのが初代フォレスターだった。



ストリーガはレガシィをベースにしていた。ただし市販に至った初代フォレスターは、まだ初代を継続していたインプレッサスポーツワゴンを母体にしていた。以降、フォレスターはそのときどきのインプレッサワゴンと深い血縁関係を続けたが、代を進めるにおよんでその血筋も薄れるとともに、3代目あたりからはいまでいうSUVカラーを濃くしてきた。
今回数えて6代目を迎える新型フォレスターだ。
ストリーガがフォレスターの前身なら、もうひとつ前身といってよさそうなクルマがある。
1995年10月に発売された「インプレッサスポーツワゴン グラベルEX」だ。
初代インプレッサスポーツワゴンのWRXをベースに30mm車高を上げ、足まわりも専用チューンを施した、アウトドア派に贈る「オールラウンドRV」だった。



ストリーガもグラベルEXも、世に送り出されたのは期せずして同じ1995年10月。この時点で発表を(たぶん)1997年2月に照準を定めていた初代フォレスターの開発は中盤だったはずだから、この2台が1年3か月後に発売する新しいハイパワーオールラウンダーのコンセプトに見込みがあるかどうかの観測気球だったのかも知れぬ。
と、ストリーガやグラベルEXにまで言及していたら「新旧旧旧旧・・・比較」になってしまう。
本記事は6代目フォレスターの5代めとの比較をする「新旧比較」のページなので、ここから本題に入る。
バリエーション
新型はまず布陣が変わっている。
従来(というよりいまも発売中の5代め)は直噴ターボの1800ガソリンエンジン車が「SPORT」「XT-EDITION」「STI Sport」の3機種、2000 DOHC直噴エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドe-BOXERが「Touring」「X-EDITION」「X-BREAK」「Advance」の4機種・・・エンジン車とハイブリッド車とで機種名がバラバラで難解だったが、新型は基本構成が最上級の「Premium」、内装各部に撥水処理を施し、外観にアウトドアテイストを加えた「X-BREAK」、走りに徹する「SPORT」に集約された。これら各機種名の後に「EX」がつくのはアイサイトX付きになる。たぶん「EyeSight X」の「E」と「X」だろう。
いまのところ私たちに供された資料はあくまでもプロトタイプのものだが、与えられるパワートレーンと機種の関係も明快で、PremiumとX-BREAKはハイブリッドのe-BOXER「S:HEV」 1本槍。システムそのものも2500直噴+2モーターに格上げされている。
いっぽうのSPORTは1800直噴ターボだけ。最高出力、最大トルクとも数値は旧型と同じだから、少なくともSPORTには同じCB18エンジンが使われるのだろう。
「S:HEV」車は燃費に注目だ。従来の2000+1モーター版e-BOXER の14.0km/L(WLTCモード)に対し、新型2500+2モーターのe-BOXER「S:HEV」 は18.4km/Lにまで伸びている。加えて燃料タンクも従来の48Lから63Lにまで増えているから1満タンあたりの走行距離の伸びは著しいと思う。
現時点、車両本体価格は発表されていないし、まだ決めてもいないだろうが、新旧の燃費差(=ガソリン代)と自動車税のランクアップ、直噴ガソリン車SPORTとの価格差とご自身の年間走行距離を照らし合わせて決めるといい。なお、新旧とも燃料はレギュラーガソリンだ。

サイズ&スタイリング
車両サイズは大きく変わってはいない。
2018年7月発売の現行5代め初期型との比較で、全長が30mm、全幅が15mmずつプラスされたほか、ルーフレールの有無で1715mm、1730mmだった全高は、新型は全機種ルーフレール付になったこともあって1730mmに統一されている・・・つまり全高は変わっていないわけだ。
いっぽうのキャビンサイズはいくらか小さくなっている。
従来、室内長×幅×高さ=2110×1545×1275mmだったのが、新型では1950×1540×1270mmに。幅と高さが5mmマイナス、長さに至っては160mmも短くなっているが、乗るひとには直接影響はなかろう。その理由については後述する。

筆者は最近のSUBARU車全体、特にフォレスターについてはここ数世代、前から見ても横から見ても後ろから見ても、ちっとも代わり映えしないことが欠点だと思っていた。
変わらないことがいけないわけじゃない。
例えばレガシィなんて、5代め以降はともかく、少なくとも初代から4代めまではきちんと「レガシィ」のエッセンスを守り続けており、変わらなくても変わっている、変わっているのに変わっていない、上手なモデルチェンジを続けていたと思う。
対してフォレスターはどうだったか。特に4代目と5代目なんて、どこから見てもどちらが新型でどちらが旧型なのかわからないほど。この2世代の写真の3面視写真を並べたら、新旧ごちゃまぜにしてしまう自信があった。
新しい6代目はどうか。
まずは顔が大きく変わった。
5代めはフロントフェイスが他のSUBARU車と混濁する顔で感心しなかったが、だからといって大幅マイナーチェンジで、小さめ(車幅に対してという意味)のライトを両脇に据えた顔も、どうにも奇異な顔に映ってしまい、素直に「いい」と思うことができなかったものだ。


新型はいいぞ!
ライトとグリルの関係なんか、いまのランクル300を思わせるほどの迫力を有するようになり、旧型には失礼だが、新型は見られる顔になったと思う。
過去のどのフォレスターとも訣別した、新しいフォレスターデザインが生まれたと理解したい。

サイドにまわればまだ過去歴代と混濁する要素が残っているし、6ライトガラスの面積比率も同じだが、クオーターガラス下端のキックアップが抑制されたのと、リヤピラーの上下塗り分け境界の役も果たすガーニッシュが追加されているのが、かろうじて見いだせた識別点。


再び変化が大きいのが後ろ姿。


従来型はコの字型ランプをバックドアとボディ側に離して配され、車幅に対して不釣り合いなサイズとコの字がこれまた奇異に感じられたのだが、新型ではバックドア側ランプ左右をそのまま細いガーニッシュで結びつけ、その中央に六連星マークを載せている。いくらか最新日産車のリヤスタイルを見る思いもするのだが、新型は後ろのクルマのひとに「こんどのフォレスター、よくなったじゃないの。次、これにしようか。」と思わせる(かも知れない)姿になったことだけは確かだ。
インテリア
内装の雰囲気は新旧似たり寄ったりだ。これはSUBARU車に共通する、インストルメントセンターの、タテ側に離して配された空調吹出口を含むセンター操作部の多角形がそう思わせ、新型もその常套スタイルに則っている。


その中にあって、縦長の液晶マルチディスプレイが目立つ。他のSUBARUでも展開しているが、フォレスターではようやくといったところ。

そのセンターディスプレイは操作感向上の為、上から下にかけて傾斜しているが、どうやらこれがさきの室内長減少につながっているようだ。
カタログで示される室内長は、計器盤の一番手前=はみ出し面から最後列シートバックまたはヘッドレストを上げたときの背面までの距離を測る。
新型フォレスターの場合、傾斜した操作部の下辺が測定位置になるため、車両サイズがほぼ同じでも、ホイールベースが変わらなくてもマイナス160mmの室内長になってしまったのではないかと推測する。

ということから、この数字が必ずしも乗員の快適性を直接決めるわけではなく、快適性はシートサイズやそのレイアウトの仕方でどうにでもなることで、マイナス160mmが乗員に影響を直接与えることはないだろう。
もしこの影響を受けるとしたら、前席3人掛けベンチ式シートの真ん中に座ったひとだけだ。そんなクルマは新型フォレスターには存在しないので、まったく問題はない。
メーター/シート
これまで2眼式の指針式アナログメーターで進展してきたメーターが、今回、全面液晶に変わった。表示モードも多彩。
写真のメーターは従来デザインをそのままアニメーション化している。ご丁寧に、ヘアラインまで再現している凝りようだ。






シートは、色使いはともかく、形状に新旧大きな変化は見られないが、フォレスターでは初めてシートベンチレーションが採用された。といってもPremiumに注文でつけられるにとどまるが、好評なら他機種にも横展開されるだろう。




シートヒーターが、新型ではリヤでも全機種標準装備になったのは、寒冷地住みユーザーにはありがたい。

ユーティリティ
シートベンチレーションといわず、今回のフォレスターは、「フォレスター初」を謳う装備が少なくない。
まずトランク右内壁に設けられる、AC100Vの「アクセサリーコンセント」。
「フォレスター初」なのが意外だが、1500Wの出力を有し、SUBARUでは「電化製品を使ったレジャー」「災害など非常時の給電」「走行中の使用」を想定している。もっともこちらもPremiumへのオプションだ。


「S:HEV」のエアコンのコンプレッサーが電動化され、PTCヒーターが採用されたのもフォレスター初。
エンジンの稼働時間を減らして燃費抑制&静粛性向上を図るとともに、エンジン停止・冷間時でも空調作動および暖房が即時に行われるようになっている。
スマートホンに入れたアプリケーションで、事前に車内環境=エアコン、シートヒーター、シートベンチレーションの操作が可能になる「リモートエアコン」も今回が初だ。
まだある。
といっても「フォレスター初」というより「SUBARU初」なのだが、ひとつは、個人登録することによってドライバー毎の車両設定を呼び出せる「ドライバーモニタリングシステム」。
もうひとつ、ETC2.0ユニットの全機種標準装備にしたのもSUBARU初だ。
とういわけで、「フォレスター初」「SUBARU初」ならこれらはすべて旧型にはなかったものばかりだ。
トランクルーム
トランクルームは現時点、具体的な寸法や容量は明かされておらず、開口幅が1250mm、開口高さが819mmであることが明示されたくらいだが、ゴルフバッグ、スーツケースを4つ搭載できるそうな。
S:HEVのバッテリーを床下に搭載しているにもかかわらず、フロア高さは変わらないという。
まずはとっくに廃止されているスペアタイヤの不在が大きいだろうが、SUBARUはレオーネの時代から、床が高くなりがち4WDにも、床下にサブトランクを備えていたほどだから、床下に何が来ようとフロア高さを変えずにすむノウハウが活きていると解釈したい。




サイクリスト対応エアバッグ
フードから飛び出す歩行者保護エアバッグの国産車初採用は、2016年のインプレッサだった。
SUBARUは、歩行者(もちろん立っているとき)と自転車(サイクリスト)とでは、車両がぶつかったときのフードへの人体の動きが異なることに着目。頭部のフロントガラスなりフロントピラーへの衝突が、歩行者は腰からフード上に倒れ込んでからなのに対し、自転車乗員の場合はまず身体がフードに腰掛けるように乗り上げてからフードにかぶさるように倒れるこんだ後になると分析した。
すなわち、頭部の衝突する場所が、歩行者がガラス下半分ほどの位置なのに対し、自転車の場合はガラス中腹から上なのだ。
そこでもともとU字を描いていた歩行者保護エアバッグを、ガラス=フロントピラー長さ分にまで延ばし、サイクリストにぶつかった事故にも対応している。




さて、さきにも触れたとおり、車両本体価格は未定で、「税込み約400万円から」としかアナウンスされていない。
発売時期も未定だが、来月5月との噂もある。
あくまでも噂に過ぎない「5月」だが、先行予約受付も本日4月3日に開始されたことだし、5月といわなくとも、新型フォレスターがそう遠くない先に姿を現すことは間違いないだろう。