8速ATでスポーツカーユーザーの裾野を拡大「トヨタ GR ヤリス」【最新国産新型車 車種別解説 TOYOTA GR YARIS】

20年にデビューした“戦う”ために誕生したクルマ「トヨタ GRヤリス」。24年の大幅改良ではエクステリアの変化は多くはないものの、トランスミッション、エンジンなど中身は大きく変更され、走行モードの選択によってドライビングの楽しさは様々に広がっていく。ドライバーファーストのコクピットも“戦う"ことにフォーカスできるムードを高めている。
REPORT:河村康彦(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:星乃由宇

本格派スポーツモデルへと進化した2ペダル仕様

「ヤリス・ファミリーの一員」であることを謳いながら一部外観でベーシックなハッチバック・バージョンとの共通性をアピールするものの、実際はボディのプロポーションや骨格構造、さらにはそこに搭載されたランニングコンポーネンツなど「すべてが別モノ」と表現しても過言ではない内容を備える〝戦うクルマ〞が、2020年に正式発表された「GRヤリス」。

エクステリア

スポーツ4WDプラットフォームによる軽量ボディを実現。直近の大幅改良でフロントバンパーのサイドグリルを拡大し、交換作業を容易にする分割構造も採用。一文字に光る新デザインのテールランプも装備する。最小回転半径は5.3m。

ここに紹介するのは、発売後に得られた知見を基に、より高い運動性能や走る楽しさの実現、さらには修復性のアップまでを狙ってさまざまなリファインを加えたという24年にマイナーチェンジが実施された最新のバージョンだ。これを機に初期から設定されていた2ペダル仕様のトランスミッションはCVTから8速ステップATへと〝フルモデルチェンジ〞され、組み合わせるエンジンも自然吸気1.5ℓユニットから他モデルと共通のターボ付き1.6ℓユニットへと換装。さらに、その駆動方式もFFから他のモデルが採用してきた4WDへと変更するなど、基本的な車両キャラクターを大きく変えることになっている。

乗降性

外観のイメージはマイナーチェンジ以前のモデルと大きく変わらないものの、フロントのロワグリルに薄く軽量でかつ高強度なスチールメッシュ、バンパーのロワサイドには修復性向上のために分割構造を新採用。新たに点灯時に左右がつながるテールランプなども採用している。テストドライブを行なったのは”プレミアムスポーツシート〞を標準で装備するなど、カタログ内の最上級に位置する「RZハイパフォーマンス」の新たに設定されたAT仕様。マイナーチェンジで最高出力が272PS→304PS、最大トルクが370Nm→400Nmへと引き上げられた心臓は相変わらずパワフルで低回転域でのトルクも太い。

インストルメントパネル

プロドライバーも開発に携わった「ドライバーズファースト」なコクピットを構築。本革巻きステアリグが全車に標準装備され、「RZ」系にはコネクティッドナビ対応8インチディスプレイオーディオも備わる。

「GR-DAT」という名称が与えられた新トランスミッションは、日常のシーンで扱う限りは「ごくオーソドックスなトルコン式ステップAT」という印象。「ノーマル」の走行モードでは変速ポイントも常識的な設定で、特別なATを操っているという印象は皆無だ。

居住性

ADAS機能が充実しているのは見逃せないポイントで、前車追従機能付きレーダークルーズコントロールが装備されるのはAT仕様ならでは。ただし、パーキングブレーキが手動式で停止保持機能をもたないため、停車後は直ちに作動がキャンセルされてしまう点には要注意。第8速ギヤでの100㎞/hクルージング時にエンジン回転数は1800rpmほどで、MT仕様6速時のおよそ2500rpmよりもグンと低い。

うれしい装備

走行中でも操作しやすいよう、センターパネルをドライバー側に15度傾けたレイアウトを新採用。レーシングハーネスで身体を固定した状態でも使いやすいことを想定しているが、日常生活でも恩恵を感じられる。
大幅改良発表      24年1月12日 
月間販売台数       405台(24年6月~11月平均)
WLTCモード燃費     12.4km/ℓ ※6速MT車

ラゲッジルーム

「スポーツ」の走行モードを選択してアグレッシブなドライビングスタイルに挑むと、高速になっても低いギヤをキープする制御が行なわれると同時に、減速時には次の加速へと向けた積極的なダウンシフトを敢行し、Dレンジのままでもほとんどシフトパドルへと触れることなくスポーツ走行に理想的なギヤがセレクトされる。多くのアマチュアドライバーにとってはATの方がよりスピーディかつ安全で安定した「パドル要らず」のスポーツドライビングを楽しめることは間違いなさそうだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.165「2025年 最新国産新型車のすべて」の再構成です。

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