ホンダ三部社長が語るHondaの未来戦略。「F1、SDV、HEV、アライアンス……」

5月20日発表した「Honda 2025 ビジネスアップデート」では、足下のEV市場の変化(鈍化)を見据えてHEVを強化するというものだった。会見のあと、モータージャーナリスト、自動車媒体の質問に三部社長、貝原副社長、井上専務(四輪事業本部長)が答える場があった。そのときのやり取りの一部を再現する。BEVは、SDVは、F1は? 自動運転は? 何を語ったか。

取材は、ホンダ青山本社ビルの最上階で行なわれた。まもなく取り壊しになるため、これが青山ビルでの最後の取材の機会となった。
出席者は
三部敏宏社長
貝原典也副社長
井上勝史執行役専務(四輪事業本部長)である。

左から貝原典也副社長、三部敏宏社長、井上勝史執行役専務(四輪事業本部長)

次世代ADASが載ったクルマはSDV

「EVとHEVによる大規模な事業スケールを生かすことで、現状、北米や日本において、他社が提供できていないHEV向けも含め、高い商品競争力と低コストで次世代ADASを開発し、2027年頃に北米や日本で投入を予定している主力ラインアップに幅広く適用していきます」と三部社長は発表会で語った。

Q:次世代ADASが、他社より早いタイミングで幅広い車種に搭載されていく。そしてそれが競争力になるということだったんですけれども、それができる理由を教えてください。
井上:元々、0シリーズを作るときに、アメリカで発表しました0 Saloonは、レベル3対応でやるという話をしておりました。レベル3対応のフルバージョンからある程度機能を簡略化した簡易版ということでレベル2プラスを作ろうと。レベル3がベースとしてあったものですから、それを背景として作る。問題は簡易版をどう繋ぐか、インターフェースの部分が少し課題だったわけですけど、そこは技術的に繋げられる目処が立ちましたので、今回それをやらせていただこうという話です。今、HEVにADASのレベル2プラスのNOA  (Navigate on Autopilot)を積んでいるクルマは、実際まだ世の中1台もないもんですから。これをなんとか我々が一番にやっていこうかな、と。ベースはレベル3があったからということご理解ください。

「今後、EV事業の柱となるHonda 0シリーズについては、いよいよ来年、第一弾を投入します。ASIMO OSやAD・ADASを軸に、お客様一人ひとりに”超・個人最適化”されたSDVの価値を提供していきます。これに続く次世代モデルでは、より高度なAD・ADAS機能を提供するため、セントラルアーキテクチャー型のE&Eアーキテクチャーの採用に加え、ルネサスエレクトロニクスと共同でAI性能として業界トップクラスの2000TOPSと20TOPS/Wの「効率で実現する高性能なSoCを開発し、SDVとしての価値を高めていきます」

Q:では、eアーキテクチャーは、0シリーズほどではないけれども、それなりに高性能なSoC(System on Chip)が搭載されるということですか。
三部社長:
今日発表した2000TOPSのものはAD(自動運転)用で、もうひとつSoCを持っています。その能力は、今日は言っちゃいけない(笑)のですが、AD用の10分の1くらいの能力、それでも現在の能力からすれば格段に高性能なものです。高性能なので当然冷却しなきゃいけない。水冷します。それから、当然、消費電力を食うので、その電気の用意できないガソリン車にはもうまったく載らない。うちみたいなストロングHEVは発電できるので、それは載せられるということで、冷却システム含めて処理能力を上げ、いい商品が作れる、と。小型のクルマにもやるぞと言っていて、冷却の通路を含めて、小型だとスペースがない。そういうのも含めて、そのあたりはホンダの得意技です。そういうのも含めて、それなりに優位性があるだろう。ADのシステムに比べれば、当然、センサーを大分はぎ取っているので、簡単に言えばLiDARとかを外しているんですけど、そういうシステムにはなる。とはいえです、まだそれなりのコストであって、やっぱり我々としてはそれを開発費含めてコストを下げたいのは山々で、日産自動車も含めてまた共通化したいんです。けれど、なかなかね、すんなりとはいかない(笑)。ただ、それはずっと継続して話をしていきます。そこは決まっていませんけど、エスピノーサ新社長と話しているので、その辺は一応引き続き話をしながら、スケールメリットみたいなものは出していき、さらにコストを下げるということですかね。そのあたりを勝負所だと思っています。やはり、損してまでやると、また長続きしないので。ただ、もう中国では最近、もう当たり前に出始めましたし、テスラはずっとやっています。日本で言えば、まだまだ、目的地入れると、そこまで連れてってくれる(NOA)は、今までのクルマの価値観とは相当変わる。そういう楽に行きたい人はそれにいきますし、HEV、またS+シフトなんかも色々くっつけて、走る楽しみは当然、残しますので、そういう両方を合わせ持ったような商品で、なんとかこの足元のビジネスは、また少しホンダらしさを取り戻したいなっていうとこですかね。HEVについては、ある程度私自身、確信を持ったので、今度は訴求の仕方も含めてハイブリッドビジネスをいいビジネスにこう育てていきたい。

次世代ADAS

井上:元々、安心安全っていうのはお客さんに対する絶対的な価値としてあったなかで、ADASが確実に、そのお客様が普通に安全運転されるより安全だというのを言えなきゃしょうがないんで、それが今回できる目途が立ちそうだなっていうことです。

三部社長:安全の概念って非常に重要で、我々が独自技術っていう風に決めているのも、例えば中国でモメンタみたいなやつを持ってきてくっつけて、これできましたって作れるんだけど、何をもってそれが安心安全なのっていう部分も含めると、やっぱり手の内でやった方が当然いい。安全論証の部分というのは、我々の世界で未だにトップにいると思っていますので、そういった意味でのホンダの次世代ADASが安心して乗っていただけますよっていうことです。

Q:次世代ADASについてですが、今日の発表でOSとかSDV(ソフトウェア・ディファインド・ビークル)とかそういう言葉あまり出なかったと思うんです。HEVで実際NOAをやるということと、SDVでASIMO OSを使うということは分離しているんでしょうか。それともセットで、そのHEVのSDV化をしていくよっていうことではないんでしょうか。
井上:ASIMO OS自体は今回EV用に新しく用意したe-アーキテクチャーですので、これはハイブリッドのものとは違います。ですので、今日はハイブリッドにまでNOAを拡大するというコンテキストの中でお話ししましたので、今日はASIMO OSのお話を差し上げませんでした。ただ、ご存じの通り、ECUのボックスがある中で、そこのメインのところが違うだけで、ADASのECUについては、BEVは一緒になりますけれども、そのベースの部分が違うということです。

Q:例えば、OTA(Over-the-Air)がついたSDVベースになってくるみたいな、ASIMO OSという名前じゃなくて。そんな形なのでしょうか。井上:はい。まず、BEVのアーキテクチャーを作る時にASIMO OSという名前をつけましたので。正直言って、それをハイブリッドにまで拡大するかどうかっていうのを、ちょっとネーミングも含めてまだ全然決めてないものですから、今日は先に技術の話をさせていただきました。

Q:その次世代ADASが載ったクルマはSDVだとはホンダさんの中では認識している?
井上:
SDVだと思いますよ。
三部社長:SDVでしょう!
Q:HEVでもSDVをやっていくというメッセージとして捉えていいんでしょうか?
井上:そうです。元々、知能化と電動化のふたつありました。これはこの2-3年間、ホンダとして両方取り組んできたわけであります。ところが、電動化の方がちょっとスローダウンしてしまったけれども、SDVについての枠の幅を広げたのが今回の取り組みいうことで、ハイブリッドにまでその効果を出していくというのが我々の考えです。

Q:じゃあ、知能化に関しては、投資スピードも変わらず、商品投入も少し拡大するということですか?
井上:はい、
三部社長:OSはOSなので。で、要は、ASIMO OSって、セントラルECUシステムのOSとして、それはまた完全自動運転みたいなの含めて。で、今回発表したそのADAS用っていうのは、そのコアのECUとADASのECUと、それからIVI(In-Vehicle Infotainment)のECUの3つで構成されているシステムで、ただ、そのソフトウェアはもちろん流用して、画像認識のところも同じようにやっています。そういった意味では、ASIMO OSって言ってもいいんじゃないか。正確にOSといえば、違う。ただ、当初、次世代ADASはやっぱりそこのBEVに載せるというのが基本的な考え。今回はなかなかEVがメインにはならんわなっていうところで言うと、一番の我々のこれから銭を稼ぐハイブリッドに載せればいいじゃないか、と。というようなことで今日に至るということですからね。

GMとの関係はまったく悪くない

Q:事業環境が目まぐるしく変わっているのは他のメーカーも一緒だと思うんですが、そんななかで、GMとの事業計画の見直しとか、GMとの関係は今どのような感じになっているのでしょうか?
三部社長:今、定期的でもないんですけど、数カ月に1回ぐらいはずっと話を継続しています。議題がなくてもぼちぼち話しませんかっていう。で、今、燃料電池のGEN.2は、ジョイントベンチャーの工場を作って一緒に生産中ですし、バッテリーEVは2機種、GMから供給してもらっています。具体的にビジネスは今、そのふたつかな。ふたつですけど、次なにかないかっていう話はずっとやっていますので、環境は全然悪くないですよ。関係はまったく継続。議論はさせていただいていますね。GMも今楽でもないので、少しまたいろんな話はあると思いますけど、やっぱり単独で全部やりきれるほど今簡単ではなくて、戦線は広がる一方なので、このその何らかのアライアンスっていうのは、グローバルの自動車メーカーはみんな頭にあると思います。その自動車OEM間での話みたいなも頻繁に行なわれています。すぐにこう事業やるっていうことでもないですけど、情報交換は。

ホンダとGMが共同開発した次世代燃料電池モジュール

Q:協業ベースの話で言えば、日産さんとの話は、経営統合の話が出たなかで1回ステップダウンした、でも結局協業ベースの話は残っているっていう理解でよろしいんでしょうか。特に、さっきは知能化ベースのところはすごくやっているっておっしゃいましたけども、例えばeアクスルなんかの話も出ました。
三部社長:はい。それはずっとやっていますし、仕様をひとつにしようみたいな話はずっとやっているので、それは当然メリットあるので、その話はこう全部まとまっていくと思います。どうですかね。だから、今はそういう協業のシナジー効果で、まずそれをこう示さないと、その次のシナリオはなかなか描けません。さっきの自動運転の話じゃないですけど、やっぱり自動車会社8社、トラックをいれると国内に14社あって、この変化のなかでそのままそっくり生き残れるかというと、そんなわけないわなっていう……大きな見方をすればそう見る方が正しくて、それはどういう形でどうなっていくかっていうだけの話だと僕は思っていますけどね。

Q:HEVでまさに銭を稼ぐという話をしていました。一方でトータルの販売台数規模360万台以上っていうのはそんなに変わっていない。ハイブリッド比率が上がるとですよね。これ、このHEVはどんなクルマっていうのがなんとなく見えてきたって感じがしますが、誰に売っていくものなのですか。つまり、今の360万台が変わらないということは、今買っている人がICEのクルマじゃなくてハイブリッドを買うような話なのか。それは単価が上がるから稼げるみたいな話になるんですかね?
井上:今北米で売っているハイブリッドっていうと、アコードとCR-Vですけど、今もうHEV率は60%を超えています。
三部社長:アコードで60%以上、CR-Vも60%以上のシビックで、今40%ですね。うん、全体で50%を超えている。
Q:それを増やしていく。だから、新たな市場を切り開くとかではなくて、割と今ホンダを買ってくれている人が次はHEV買ってくれるというような意味合いの話?
井上:それが360万台のベースの部分です。そこからの成長のところは、今日点線で書いてありました。成長というのは、これから私が期待しているところでございまして、全体台数です。

Q:それは例えばどの地域?
三部社長:インドとか北米市場もまだ少し伸ばせる。その辺が伸ばしていく地域。やっぱり減っていく地域は、中国とかASEANとか今ちょっと厳しいのでどうかな。そういうプラスの地域とマイナスの地域を合わせて360万台をまずするというのを基本戦略にしていて、本当は上積みしたいんだけども、あんまりこう背伸びした戦略作るとですね、少しこうずれた時に……(笑)いろいろ言われるので、慎重に見ています。

「政策変動に対しては、Hondaは従来より創業時からの”需要のあるところで生産する”という地産地消の理念のもとサプライチェーンを構築してきました。例えば、米国におけるHondaの国内生産比率は60%であり、USMCAの枠組みでほぼ100%と相対的に高い比率を達成しています。(中略)今後も地産地消の考え方をベースとしながら、採石変動等の不足の変化にも強いサプライチェーンを強化していきます」

Q:拡大したり縮小したりするところがあると工場作ったり閉じたりするのか、それともっていうのは、地産地消って四輪のところで今回も強調されていましたけど、そうやっていくと、まさに工場建てたり引っ込めたりしなきゃいけない感じがあるのかなと思うんですよね。でも、二輪は、さっきのインドのその電動の話だけですけど、インドで作って欧州とか日本でも売ってくんだという話がありましたよね。そんなふうに、例えば、中国が余剰台数なっているんだったら、中国の50万台分で中東に売るんだとか、四輪は地産地消にこだわり続けるのか、それとももっとそうやって世界を回していく、為替をヘッジするとか地政学的なものをヘッジしていくようなことをはあんまり考えないのでしょうか?
三部社長:ひと言で答えるのは非常に難しい。
井上:ケースバイケース、国、バイクに、それから時期によっても違いいますよね。
三部社長:あのね、もう基本、今回それでまた痛い目に遭っているので。もう基本はさらに地産地消という考え方に戻していくということになる。やはりUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)でメキシコ、カナダ、アメリカっていうひとつの国だと見ていたのが今回の我々の失敗。ただ、元々はNAFTA(北米自由貿易協定)で1994年から自由貿易圏があって、さらに、トランプ大統領が自分で第一次政権時に、USMCAを作ったんですよ。少しその域内を守る、若干保護主義的なところもあるんですけど、ただ、域内はやっぱりフリートレード環境にもなっていて。我々はもうそこはひとつの国だと見ていました。

Q:でも、期間は限定的かもしれないですよね。地産地消を進めていくと、日本は今後生産小さくしていかなきゃいけないんじゃないですか?
井上:いや、日本はですね、ちょっと量の前にグローバルな話をすると、台数がここのところずっと落ちてきていて、360万台と今日申し上げたの、これを防衛線としてこれ以上落としたくないっていう思いがまずあって、ベースとしてそこがあります。日本に関しても、去年も言いましたけど、これくらいはもう絶対的に維持しなきゃいけないってことなんだということです。それから、やっぱりグローバルモデルの活用っを日本はある程度しなきゃいかんもんですから、もちろん軽自動車のお客さんも大事にしていきますけれども、日本だけマーケットとしてちょっと特殊ですよね。日本市場はちょっとかなり世界の中で独特な位置付けにもあるという認識でありますけど、グローバルでいくと、やっぱり基本的には地産地消、大市場においてはそういう現実になるかなと思います。
三部社長:日本市場は我々のホームカントリーでもあって、その事業とは別に、やっぱり日本市場における、ホンダっていうのは、やっぱりある程度やっぱり頑張らないという認識はありますね。このところ、やっぱり軽自動車と小さなクルマばっかりになって、上(上級車種)をみんなやめてしまったっていう経緯を反省し、で、今一度ちゃんと日本市場においてもフルラインナップを持つような戦いに変えたいという風に私がワーワー騒いでいて、少し方向性を今変えつつ、も急には変わらないです。急には変わらないですけど、少し変えようと思っています。

BEVが最適化であることは変わらない

Q:以前、三部さん、どちらかというとe-FUELみたいなものはあんまり好きじゃないみたいな話をちょっと聞いたことがありますが……。
三部社長:技術的に評価しているということですよ。
Q:もしカーボンニュートラルe-FUELが出てくると、HEVの基盤技術でもっとLCA(ライフサイクル・アセスメント)で見ればダイナミックにCO₂減らすことはできると思います。その辺に関して少し戦略を変える話はありますか。
三部社長:
我々も単独でちゃんと水素とCO₂から作る合成燃料の研究を続けています。ただ、やっぱりまだ大量に造る技術にはなってなくて、投資もかかりますし、コストも。じゃ、いくら(価格)の燃料作るのっていう見通しまでまだ全然立ってないですよ。そういった意味で言うと、研究をずっと続けていきます。色んな技術があるんだと言っても、時代もだいぶ進んできちゃったので、だからe-FUELは、僕は技術としてはあると思っていますけど、マジョリティではないっていう(考え)。EV化ができないようなモビリティ、例えば飛行機はそのひとつとして、大型トラックとかもあるのかもしれないけれど、そういったなかなかバッテリーを積んで走ることのできないモビリティについては、e-FUELみたいなものが一番の解決策だろうなと思っています。航空機燃料も含めてホンダの中でも研究しています。ただ、今この辺走っているクルマが全部e-FUELになるかというと、それは経済合理性的な見通しは今のところ立ってないんですよね。

Q:でも一方で、バッテリーEVはやはり再エネベースじゃないとなかなかLCAで見るとCO₂は減らないですよね。もうひとつのプランで、e-FUELみたいなふたつのその山上りの道があるのかなと思うんですけども。
三部社長:あると思いますけど、その、1(イチ)/1(イチ)じゃないっていうことですよ。そこの優先順位をつけないとインフラも進まないし、全部中途半端なままになってしまうので、e-FUELは、否定はしないけれどもマジョリティの技術としてはなかなか難しいのではないか。水素の値段すらまったく下がらないような状況で、なかなか難しい。
Q:ホワイト水素への期待はありますか?
三部社長:可能性はあると思いますけど、まだまだ現実としてじゃあそれを使ってってことにならないので、将来はあるかもしれないっていうくらいで。ただ、今もう実際の戦略をそれに賭けるわけにはいかないでしょう。それより、バッテリーなどもちゃんと進化させて、充電時間も含めて今どんどん進化していますよね。技術的にはいわゆるバッテリーEVが乗用車クラスのサイズの乗り物としては、最適解になるというのが今のところの見解です。ある程度決めないと、もう前に進まないんですよ。研究はいっぱい色々やっています。技術動向も含めてずっと見ていますよ。そんな我々は、燃料の研究には結構自信があってトップレベルの技術を持っています。あとは藻の研究みたいなものしていますし。

熱効率を1%上げたって世界は変わらない

Q:中国のエンジンの熱効率が上がってきているって話があるんですけども、ここはやっぱ基盤技術としてホンダも?
三部社長:熱効率を1%上げたって世界は変わらないですよ。(エンジニア時代の)現役時代さんざんやりました。熱効率命でしたから、熱効率を0.5%上げるのに命をかけていました。多分頑張れば熱効率50%のエンジンみたいなのものも研究レベルではやっていました。だけどそこにかかるコストよりも、当時はHEVのが安かったですね。技術的にはあるんだけど、その技術が事業に乗るかどうかって別の話であって。それぞれの技術の素性をよく見極めないと間違っちゃうっていう、そんなことだと思います。だから選択肢は、否定はしないですけど、それぞれそういう技術の中身含めて重みが違うんです。そこはちゃんと見ないとねっていうことです。

F1 2026年シーズンに向け、Aston Martin Formula One® Team、Aramco、ValvolineとHRCが技術協力協定を締結。左からAramco エグゼクティブバイスプレジデント ヤッセール・マフティ氏、AMF1 エグゼクティブチェアマン ローレンス・ストロール氏、HRC 代表取締役社長 渡辺康治氏、Valvoline CEO ジャマル・ミュアシャー氏


Q:F1についてです。ホンダは来年から本格的に参戦します。F1は、パワーユニットって言われて報道されて、誰もあれをハイブリッドって思っていませんが、ハイブリッドですよね。ホンダはそこを繋げる商品を出してないから、またなんか成績が悪くなったりしたら、F1をやめてしまうのではという懸念があります。F1と商品をつなげるなにかが必要なのでは?
三部社長:
簡単にやめられないようにはHRCを作ったんです(笑)。
Q:その繋ぐ商品っていうのは何か考えられているのですか?
三部社長:考えたいっていうか、そう、四輪事業本部と(F1を)リンクさせるということを条件にGOサインを出したので、今度は何らかの繋がりを、F1というかモータースポーツを、もうちょっとビジネスに近づけたいなと思っています。なんとかしたい。どうしてもやるんだったら、実業とリンクさせるっていうことが条件なのです。
井上:HRCをうまく使っていきたいと思っています。

Q:三部さんは以前、PHEVはナンセンスみたいなことをおっしゃったんですが、今年この状況でHEVを力入れようっていうなかでPHEVの立ち位置みたいな、変わっていますか。
三部社長:法規にもよるんですよ。技術としては、準備はしておきますけれども、ガソリンとEVを一台のクルマに詰め込んでいるので、スペース効率も含めるとあんまりスマートな技術ではないので本当に短期のソリューションでしかないと思いますけどね。でも、中国なんかでは売れているという事実もあります。

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…