今でも現役で活躍するトヨタ・ハイラックスサーフSR
ピックアップトラックの人気が高いアメリカで高い評価を受けているトヨタ・ハイラックス。2017年に国内でも再導入されたことが話題になったが、かつてはピックアップよりリヤを車室にしたハイラックスサーフの人気が高かったもの。1983年に発売された初代から2002年発売の4代目まで、国内モデルがなくなる間に生まれたサーフはヘビーデューティなモデルを好む人たちから絶大な支持を集めた。
サーフといえば初代のイメージが強いものだが、もはやその姿を街中で見かけることはほとんどなくなった。というのもNOx法により都市部で乗り続けることができなくなってしまったから。自動車NOx法とは、簡単にいえば特定地区で使用過程の商用車に継続して乗ることを禁止したもの。初代サーフは商用車だけのラインナップだったから、都市部で乗り続けることが法律で禁止されてしまったのだ。
NOx法の余波は規制地域だけにとどまらず、全国的に古い商用車が姿を消す遠因にもなった。維持するために必要な補修部品が製造を廃止して修理や車検を断念したり、クリーンな排ガスが多くなる環境で使い続けることへの罪悪感のようなものもあるだろう。不思議なもので数を減らすと無性に懐かしく感じたり欲しくなることもある。
改めて1985年式のハイラックスサーフを見ると、そんな気持ちが湧いてきた。実際のオーナーはどのような事情で乗っているのだろう。
数少なくなった初代ハイラックスサーフのオーナーは茨城県のNOx法規制地域外に住む本橋利之さん。元来古いクルマが好きで地元のクラブ「バックヤードつくば」にも所属している。ただ、このサーフを手に入れたのは最近のこと。その理由は探していたわけではなく親戚が手放すというので引き取ったそうだ。その親戚の方は新車として手に入れた後、大切に維持されてきたのだが年齢的なことを理由に降りることを決めたそうだ。
大事にされてきたことを知っていたため、事情を聞いて引き取ることにされた本橋さん。前オーナーの思いも引き継ごうと考え、可能な限りオリジナルのコンディションをキープするように心がけているとか。確かに新車時の塗装は今でも輝きを失っていないし、本橋さん自身もお気に入りだという青いストライプにも傷はない。
本橋さんが手を加えたのは、リヤにトレーラーヒッチを追加したくらい。クルマを牽引するトレーラーのトレッカーを使って仲間たちと古いクルマを救出するために加えた装備だ。実際に活躍しているというから、サーフ自体を楽しみつつ趣味にも役立っているようだ。
室内に目を向けると運転席のシートが違う車種のものになっている。これは本橋さんではなく前オーナーが好みで装着したものだそうで、本橋さんも純正に戻すことはせず手に入れた当時のままにしている。こうしたところもこの個体の歴史と考えているのだろう。センターコンソールに追加されたカーナビも同様だ。
このサーフのエンジンはガソリン、ディーゼル、ディーゼルターボと3種類から選べたうち、ディーゼルターボの3L-T型搭載車。初代の前期型では最上級モデルということになる。
メッキのホイールはこのエンジンにしか装備されなかったもので、しかも前期だけの特徴。そんなところが所有する喜びへと繋がっているのだろう。走行距離が12万キロに届いていない状態だから、まだまだ長く楽しめそうだ。