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1.5ℓMTモデルに乗る(15S FF)
マツダの新世代商品群、プラットフォームではSmallプラットフォームを採用するモデルで最廉価モデルは
MAZDA3ファストバック 15S(6MT/6AT)222万1389円
MAZDA3セダン 15S(6AT)221万1389円
である。セダン15Sは2020年5月に追加されたグレードだ。
同じSmallプラットフォームを使うCX-30とMX-30には1.5ℓガソリンエンジン(SKYACTIV-G1.5)搭載グレードは設定されていない。
マツダの場合、ATモデルとMTモデルの価格は基本的に同一だ。
マツダR&Dセンター横浜から借りだしたMAZDA3は、15Sの6MTモデルだった。MAZDA3は、やはりカッコイイ。全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mmというサイズは、Cセグハッチバックとしては、大柄な部類に入るが、やはりバランスが取れていて美しい。
前述のように、15Sは、最廉価モデルだ。しかし、外観から「廉価モデル」であることはまったくわからない。乗り込んでみよう。シートに収まってインパネ周りを見回しても、廉価モデル感はない。
エンジンを始動する。SKYACTIV-G1.5は最高出力111ps/6000rpm、最大トルク146Nm/3500rpmで、始動直後は触媒の早期暖機のためなのだろう、けっこう勇ましい音がする。6MTの操作性はとてもいい。クラッチペダルは重すぎず軽過ぎず。1320kgの車重に対して111ps/146Nmだからパワフルではない。が、ちょっとアンダーパワーなエンジンを心おきなく回して走らせるのは楽しい。
いつものように首都高速で東新宿の編集部に向かう。オリンピックのためのロードプライシング(なんとプラス1000円!)の影響で首都高速は空いていた。35kmほどのドライブでの燃費は22km/ℓと良好だった。
MAZDA3 15Sの6ATモデルには以前、試乗した。「これでいい、ではなく、これがいい」モデルだ。けっして安いだけで選ぶべきモデルではなく、積極的に選ぶべき価値のあるクルマだと思った。今回と同じく外観上、上位グレードと違う部分はほぼないし、装備も実質上、不足することもない。走りも楽しい。で、価格はリーズナブルなのだ。
では、同じ15Sの6速MTはどうか?
スポーツドライビング(というか、運転操作)を楽しみたいなら、6速MTモデルがお勧めだ。
マニュアル・トランスミッションの操作とは、自転車の乗り方と同じでしばらく乗っていなくて問題ない(ですから、それを理由にMAZDA3のMTモデルを忌避するのはもったいないです)。それに、最近のMT車にはHLA(ヒルローンチ・アシスト)が付いている。坂道発進で、クルマがずり下がるようなことない。
ただし、MADA3のパーキングブレーキは機械式ではなく電動式(EPB)。EPBの利点が多いことは明らかだが、6MTとの組み合わせでは従来の機械式(サイドブレーキレバーがある)のほうがしっくりくる。たとえば、停車時にEPBのレバーを上げてパーキングブレーキをかける。あらためて動き出そうと、クラッチを踏みギヤを1速にいれてEPBを解除しようと思うと警告音が鳴る。ブレーキペダルを踏んでいないとEPBは解除できないのだ。
当然と言えば当然だが、かつての6MTの操作のリズムがちょっと狂う。旧世代の戯れ言なのだが。
アイドルストップ機能は、信号待ちなどで、ギヤをニュートラルにして、ブレーキを踏むとエンジンは停止する。クラッチペダルを踏み込めばエンジンは再始動する。
SKYACTIV-G1.5はパワフルではない。必要充分か?
6速ATモデルを試乗したときは、正直言って「必要充分」だと感じていた。まったく不自由ない。
では、6速MTモデルはどうか? マツダのMT車はメーター内に、いま何速に入っているか、変速すべき場合は、「2ー3」とか「4-5」「2-4」というような表示が出る。ATなら、トランスミッション側で最適なギヤ段を選んでくれるから意識しなくていいが、MTだと自分で変速操作が必要だ。緩くて長い上り坂では、6速から5速、あるいは4速へとダウンシフトが必要なシーンが、わりとよくある。地下駐車場から地上に出るためのスロープでも、やはり少しエンジンのパワー不足を感じる。
発進も、トルクコンバーターのトルク増幅効果が使えるATの方が、エンジントルクの小ささを感じることが少ない。
「スポーツドライビング(というか、運転操作)を楽しみたいなら、6速MTモデルがお勧めだ」
と前述したが、裏を返せば、そうでなければ6ATモデルの方が付き合いやすい、といえる。
ここは、運転そのものを楽しみたいかどうか、にかかっている。
楽しみたいなら、ちょっとアンダーパワーのSKYACTIV-G1.5をブンブン回しながら走るのはとても楽しい。乾いたエキゾーストノートも、なかなか快音を聞かせてくれる。スポーツドライビングの真髄は、スピードにあるわけではない。速くなくても思ったようにコーナーを駆け抜けることができれば、それはスポーツドライビングだ。15Sの6MTモデルには、それがある。
今回、15S(6MT)の燃費は、トータル469.8km走って13.7km/ℓだった。モード燃費は
WLTCモード燃費:17.8km/ℓ
市街地モード 14.1km/ℓ
郊外モード 18.0km/ℓ
高速道路モード 19.9km/ℓ
である。WLTCモードの達成率は77%。
前回、2020年3月に15S Touring(6AT)を試乗したときは、200kmほど走って14.6km/ℓだった。6ATモデルのモード燃費は
WLTCモード燃費:16.6km/ℓ
市街地モード 13.7km/ℓ
郊外モード 16.5km/ℓ
高速道路モード 18.4km/ℓ
モード燃費ではMTモデルの方が優れているが、試乗の結果は今回の条件(市街地走行が多かったことと、酷暑でエアコンの負担が重かった)での実燃費ではATモデルの方がよい燃費だった。MTモデルは、エンジンを高回転まで回すシーン(それが気持ちよいから、ということもある)が多いから、モード燃費に対する達成率がやや低い。それを除いても、走るシーンが都市部の市街地が多いならATの方が楽だし、燃費もいいだろう。郊外の流れがいい道路を走ることが多いなら、MTを選んで走りを楽しむのもいいと思う。
SKYACTIV-G2.0のMTモデルはどうか?(20S L Package FF)
SKYACTIV-G2.0のMTモデルはどうか?
SKYACTIV-G1.5搭載の15SのMTモデルで感じた、「もうちょっとだけパワーがあれば……」という思いは、SKYACTIV-G2.0のMTモデルなら解消されるのか? 15Sに続いて借りだしたのは、MAZDA3 20S L Package(6MT)である。
SKYACTIV-G1.5
最高出力:111ps(82kW)/6000rpm
最大トルク:146Nm/3500rpm
に対して
SKYACTIV-G2.0
最高出力:156ps(115kW)/6000rpm
最大トルク:199Nm/4000rpm
出力で40%、トルクで36%増しなのに対して、車重は20kgしか変わらない。当然、15Sよりも走りはパワフルだ。同じような道路状況で(たとえば、高速道路の緩くて長い上り坂)「6ー5」(6速から5速へダウンシフト)という指示が出る頻度は明らかに減る。
(とくに飛ばしたいわけでもない場合)思った速度に乗せていくためのアクセル開度は、もちろん1.5ℓモデルより浅くて済む。楽ちんだ。
燃費はどうか?
20S L Packageの6MTモデルで今回、558.2km走った際の燃費は、14.4km/ℓだった。モード燃費は
WLTCモード燃費:16.4km/ℓ
市街地モード 13.0km/ℓ
郊外モード 16.9km/ℓ
高速道路モード 18.8km/ℓ
だから、モード燃費に対する達成率は87.8%と1.5ℓモデルより高かった。
1.5ℓモデルの方がモード燃費では優れているが、実燃費では2.0ℓモデルの方がよかった。長く乗っているとどうなのかはわからないが、出力とトルクに余裕がある2.0ℓモデルの方が、燃費が良いということはありそうだ。
ただし、1.5ℓのMTモデルの「ウリ」は、エンジンをブンブン回しながら走る楽しさだ。2.0ℓモデルはブンブン回すよりももっとスマートにすーっと走れる。これを良しとするか。
1.5ℓモデルの最廉価グレード(つまり15S)の価格は221万1389円。2.0ℓモデルのそれは、20S PROACTIVEの251万5741円だ。15Sとの価格差は29万4352円になる。この価格差をどう考えるか。
MAZDA3に関しては、SKYACTIV-G1.5、G2.0、ディーゼルのD1.8、そしてSKYACTIV-X、AT、MT、FF、4WDとさまざまなモデルに試乗させてもらってきた。その結果、MAZDA3なら、SKYACTIV-G1.5かSKYACTIV-Xを選ぶという、個人的な結論を得ていた。今回、SKYACTIV-G2.0のMTモデルにもあらためて試乗したが、結論は変わらなかった。
では、SKYACTIV-G1.5ならMTかATか? いま筆者が買うならATモデルである。ただし、「本当はロードスターのMTモデルがほしいんだけど、家族もいるし4人ちゃんと乗れないと……」と思っている人には、15Sの6速MTモデルは自信を持ってお勧めできる。エアコンがマニュアルでも、渋滞時にACCが使えなくても、パワーシートでなくても、別に大して不便じゃない。アダプティブLEDヘッドライトは、ほしいけれど、なくてもいい。それよりも、アクセルを吹き込んでエンジンを回して走る楽しさを優先する。そんなクルマを選べる時代は、もしかしたらもうそう長くはないかもしれないし……。
MAZDA3 FASTBACK 15S(MT) 全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm 車重:1320kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式 エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:P5-VPS型 排気量:1496cc ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm 圧縮比:13.0 最高出力:111ps(82kW)/6000rpm 最大トルク:146Nm/3500rpm 過給機:なし 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:51ℓ WLTCモード燃費:17.8km/ℓ 市街地モード 14.1km/ℓ 郊外モード 18.0km/ℓ 高速道路モード 19.9km/ℓ 車両価格○222万1389円
MAZDA3 FASTBACK 20S L Package(6MT) 全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm 車重:1340kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式 エンジン形式:直列4気筒DOHC エンジン型式:PE-VPS型 排気量:1997cc ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm 圧縮比:13.0 最高出力:156ps(115kW)/6000rpm 最大トルク:199Nm/4000rpm 過給機:なし 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:51ℓ WLTCモード燃費:16.4km/ℓ 市街地モード 13.0km/ℓ 郊外モード 16.9km/ℓ 高速道路モード 18.8km/ℓ 車両価格○275万3055円