トヨタ bZ4X/スバル・ソルテラ。2台の持ち味と美点は? リアルワールド試乗で、見えたこと

東京〜静岡パートが試乗ルート。東京〜御殿場でスバル・ソルテラ、御殿場〜静岡をトヨタ bZ4Xで。約230kmの行程だ。
トヨタとスバルの共同開発によって生まれた両社初のピュアEVモデル、bZ4Xとソルテラの試乗会が行なわれた。2台の味つけの違いを乗り比べる試乗会は、東京~静岡/静岡~名古屋/名古屋~金沢/金沢~軽井沢/軽井沢~東京という広範囲な5ルートにて開催された。モータージャーナリスト・瀨在仁志のファーストインプレッションは?

TEXT:瀨在仁志(Hitoshi SEZAI)PHOTO:TOYOTA/SUBARU/Motor-Fan.jp

トヨタとスバルの共同開発によって生まれた両社初のピュアEVモデル、bZ4Xとソルテラの導入が5月12日から始まった。トヨタのbZ4Xは月8万円強の支払いによるサブスクリプション方式のKINTO、スバルのソルテラは従来同様の販売方式によって市場展開される。

スバル・ソルテラの車両価格は標準仕様のFFが594万円、4WDが638万円。前席にヒーターを内蔵する本革シートを採用する4WD上級グレードが682万円。参考価格ながらトヨタのbz4Xは、Zのワングレード設定で、FFが600万円、4WDが650万円となっている。
モーターユニットは両モデルとも共通で、FFは150kw(203.9ps)、4WDは前後に各80kw(109ps)の動力源が与えられている。それぞれのメーカーによる意匠や販売方法こそ異なってはいるが、基本骨格や性能は共通の兄弟モデルだ。

今回、この2台を同時に乗り比べができる公道試乗会が行なわれた。試乗ルートは東京〜静岡〜名古屋〜金沢〜軽井沢〜東京という周回ルート。私が試乗したルートは東京〜静岡の約230km。試乗車両はくじでの抽選だ。その結果、東京からスバル・ソルテラ(4WD)で御殿場へ、そして御殿場からはトヨタ bZ4X(FWD)に乗り換えて静岡駅を目指すことになった。
前半のソルテラは200km、後半のbZ4Xは50km以上の走行可能距離を残して到着しなければならないため、どちらも途中で急速充電を行なった。

左がトヨタbZ4X、右がスバル・ソルテラだ。

シャシーは共同開発されたEV専用のe-TNGAを採用し、ノア/ヴォクシーと同じ2850mmというロングホイールベースによって生み出された広いフロアスペース下に薄型リチウムイオン電池を平置きに搭載。フラットで前後左右にゆとりある室内空間も生みだしている。
ソルテラの4WDモデルに乗り込むときには、ひと昔前のSUVに近い床面の高さを感じたものの、シートに座ってしまえば足元が前後左右共に広く、フラットフロアの恩恵をうける。前方に大きく押し出され、フードを排した曲面構成のインパネから幅広いセンターコンソールにつながるデザインも開放感を生み、垢抜けた印象だ。

トヨタbZ4Xの中国仕様に用意されるスアリングバイワイヤーモデルには、バタフライタイプのステアリングが採用されていると聞くがその理由が良くわかる。キャノピー感覚のインパネ回りには飛行機の操縦桿こそイメージにピッタリで、電気自動車先進国の中国にはそれくらい進んだアイテムも必要だろう。
ドライブしてみると操縦桿タイプが開発時の主要アイテムであったことは理解できる。個人差もあるだろうが現状の円形ステアリングでドライビングポジションを取ると、メーターの多くの部分が隠れてしまって視認性が悪い。上部が欠けているデザインこそがベストと思われた。
ちなみにステアリングバイワイヤーだからこそ、大きな可変ギヤレシオによる持ち直し不要の操縦桿タイプが可能となる。スバルは採用自体ないと言うが、トヨタは時期を見て日本に投入予定だという。

「ダイナミックさを求める人向け?」なソルテラ

走り出しはスイッチひとつでREADYの表示が付けば従来のHV同様スタートが可能だ。アクセルを踏むと一拍おいてからパワーは出てくるが、ペダルの踏む速さで走り出しが異なる。従来のエンジン仕様であれば、どんなに急なアクセルワークをしてもパワーを積み上げていく過程ががあるから問題ないが、EVではレスポンスが良いためにその行程がスキップされてしまう。

その対策として、初期のごくわずかにラグを出して加速に移るが、これは慣れるまで違和感が残った。
料金所通過で不意に踏み込むと頭をヘッドレストに押しつけられるような加速の強さがあり、レスポンスの良さやヨンクの蹴り出しの効果に圧倒される半面、ややダッシュ力の演出が過ぎた印象を受けた。滑らかな領域を味わっているぶんには悪くないが、ちょっとパワーを確認しようとすると、反応が敏感すぎるのである。

全長×全幅×全高:4690mm×1860mm×1650mm/ホイールベース:2850mm(ボディサイズはbZ4Xとソルテラで同じ)

コーナーでもこの傾向があって、旋回中に一定量のアクセルワークを心がけていれば、4輪がバランス良く駆動力発揮し素直な旋回軌跡を描くが、積極的に開けていこうとするとレスポンスの良さが駆動力バランスを崩し出す。走行抵抗があるから発進時や加速時のような急変はないものの、パワー伝達が前後で行ったり来たりして、フロントが外に行こうとしたり、進路に対してリヤが加速態勢に入ろうとしたりして、ボディの揺れが多いことが気になった。

従来のスバルの4WDモデルがパワーをかけていくとリヤに大きめのトルクが回って積極的に旋回フォームを作り込む乗り味に通じるのは良いが、リヤへのパワーのつながりが従来4WDモデルのようにピタリと決まらない。モーターの力強さとレスポンスの良さを積極的に乗り味に落とし込んだ点はスバルらしさがあって良いが、旋回途中の作り込みはもう一歩。
もっともすべてを振り返ってみると、ボディがゆらゆらしながら、旋回方向に持っていく姿勢作りはフォレスターと同様で、力強さと大らかさと言った点ではとてもよく似ている。フォレスターから乗り換えると違和感はないはずで、これこそがスバルのSUVの乗り味でありEVでもその魂はしっかりと受け継がれていた。

もちろん、4輪がすぐに蹴り出す力強さを持っていることは、高速ドライブでは多いに効果的で、クルージングでは滑らかにこだわり、追い越し時や前車への追従加速ではリヤの蹴り出しを借りて、ロスなく環境変化に対応してくれる。ロングドライブや、天候の変化に大いにEV効果を発揮する。
新開発のシャシーは走りの面では4輪の動きやパワー伝達に大きな支えになっているいっぽう、路面からの振動やノイズの進入に関しては遮断にこだわる印象は薄く、できの良いHVレベル。静けさよりもダイナミックな走りを期待するユーザーにこそお勧めしたい。

「初めての人でも違和感なく」乗れるbZ4X

トヨタ bZ4X。試乗はFWD(FF)モデル。

対するbZ4Xはソルテラに採用されていた走行モード選択やパドルシフトはなく、初めてEVに乗る人が悩むことなく普通に走れることに重点を置いたという。右足の操作だけでスッと走り出し、速度調整に戸惑うことなく、減速やブレーキコントロールを行なえるように仕上げられている。

試乗車はFFモデルであったが、フロントが暴れることなく全パワーを効率良く路面に伝達してくれていた。パワーの出方はソルテラ同様に急な曲線を描くときもあるが、接地感を失わせることやボディの前後挙動が大きく変化することも少なく、フラットな姿勢を保ってくれている。リヤに重い物を搭載していないFFモデルゆえに、駆動力や路面を蹴り出すときの振動に起因する音の進入も少なく、快適性は高い。

もっともロードノイズに関してはソルテラ同様に20インチタイヤによる剛性感の高さが起因となる走行音があってノイズの変化量が気になった。静粛性の高いFFモデルで次回は18インチ仕様でEVモデルの実力を再確認してみたい。

シフトは押して回すダイヤル式(パーキングはスイッチ式)。写真はトヨタbZ4X。

コーナーでもフロントの高い接地感によって、安定した姿勢とトレース性を持ち、背の高さを感じにくい。パワーをかけていくと適度な絞り制御で進路を保ち、誰でも素直な走りを楽しめるることに違いはない。

すべてのノイズをシャットアウトされているのではなく、走行中の音を適度に感じながらドライブできる点がEVらしくないとも言えるが、できの良いHVと同レベルの静粛性と素直なハンドリング性能は、従来のクルマから乗り換えるにはまったく抵抗を感じない。感動が少ない半面、不安なくつき合えるとも言える。

ソルテラがフォレスターの乗り味を継承しているなら、bZ4Xは当然のことながらRAV4、そしてHV専用モデルのカムリに初めて乗ったときの印象に近い。フラットでフロントがグイグイ引っぱっていくハンドリングやモーターの力強さなど、基本パッケージは異なるものの、普通のHVモデルと代わらぬ乗り味こそbZ4Xが普通の人に安心して乗ってもらえる、トヨタらしい初EVの持ち味。飛び道具はないが見た目ほど特別感なく馴染める乗り味こそ、bZ4X最大の美点である。

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著者プロフィール

瀨在 仁志 近影

瀨在 仁志

子どものころからモータースポーツをこよなく愛し、学生時代にはカート、その後国内外のラリーやレースに…