新型トヨタ・クラウンの謎をサイドビューから解く 4つの車型は全部TNGA GA-K? 

新型クラウンは4つの車型で登場する。上からクロスオーバー、エステート、スポーツ、そしてセダンだ。
センセーショナルなデビューを飾った新型トヨタ・クラウン。まさかの4車型だ。まずはクロスオーバーからの船出となるが、今後1年半のうちにスポーツ、エステート、そしてセダンが登場する。サイドビューからクラウンの謎に挑んでみよう。

TNGA GA-Kプラットフォーム

新型クラウン クロスオーバー

まずは、デビューしたばかりのクラウン クロスオーバーのボディサイズだ。

クラウン クロスオーバー
全長×全幅×全高:4930mm×1840mm×1540mm
ホイールベース:2850mm

新型クラウン クロスオーバーはTNGAのGA-Kプラットフォームを使うという。GA-Kはフロントにエンジンを横置きするプラットフォームで、現行クラウンのGA-Lプラットフォーム(フロントにエンジンを縦置きする)から大変更を敢行したわけだ。

GA-Kプラットフォームを使うモデルはたくさんある。そしてどのモデルも高評価を得ている。つまり、大成功プラットフォームなのだ。GA-Kを使うモデルは以下の通りだ。(   )内はホイールベースを示している。

トヨタRAV4(2690mm)
トヨタ・ハリアー(2690mm)
レクサスNX(2690mm)
トヨタ・カムリ(2825mm)
TOYOTA HIGHLANDER(2850mm)
トヨタ・クラウン クロスオーバー(2850mm)
レクサスRX(2850mm)

TOYOTA AVALON(2870mm)
レクサスES(2870mm)
TOYOTA SIENNA(3070mm)

これでわかるとおり、GA-Kプラットフォームは[2690mm/2825mm/2850mm/2870mm/3070mm]というバリエーションが存在する(アルファベットは海外モデル)。
新型クラウン クロスオーバーは2850mmだから、レクサスRX(新型)とHIGHLANDERと同じホイールベースだ。

ここまでが前提条件。では、まず現行クラウンと比べてみよう。

新型クラウン クロスオーバー vs 現行クラウン

上が現行クラウン、下が新型クラウン クロスオーバー リヤホイールセンターを合わせてある。

現行クラウンのボディサイズは
現行クラウン
全長×全幅×全高:4910mm×1800mm×1455mm
ホイールベース:2920mm

クラウン クロスオーバー
全長×全幅×全高:4930mm×1840mm×1540mm
ホイールベース:2850mm
だから、新型と現行型では全長は20mmしか変わらない。しかし、ホイールベースは70mmも新型の方が短い。エンジン縦置き(後輪駆動ベース)のクルマの特徴であるフロントアクスルセンターからフロントドアのオープニングまでの、いわゆるプレミアムレングスは、新旧でまったく違う。

新型クラウン クロスオーバー vs カムリ

上がカムリ、下が新型クラウン クロスオーバー。

カムリ
全長×全幅×全高:4910mm×1840mm×1455mm
ホイールベース:2825mm
同じGA-Kプラットフォームを使うカムリ。ただし、ホイールベースはカムリの方が25mm短い。というより、2825mmのホイールベースを使うのはカムリだけだ。とはいえ、カムリの方が華奢に見えるのは、クラウンが21インチホイールを履きこなすクロスオーバーモデルだからだろう。

新型クラウン クロスオーバー vs レクサスRX

上が新型レクサスRX、下が新型クラウン クロスオーバー。どちらも同じWB2850mmのGA-Kを使う。

今度は、ホイールベース2850mm同士のGA-Kモデル、新型レクサスRXと並べて見てみよう。どちらも大径タイヤ(クラウン クロスオーバーが225/45R21=タイヤ径736.4mm、レクサスRXが235/50R21=タイヤ径768.4mm)を履いている。

パッケージングだけでなく、2.4ℓターボエンジンを使う「デュアルブーストハイブリッド」を載せているのも共通だ。つまり、新型クラウン クロスオーバーはレクサスRXの「背の低い版」ということもできそうだ。

では新型クラウンの4車型は全部GA-Kプラットフォームなのか?

ここからが本題だ。

発表会で並べられた、クロスオーバー、エステート、スポーツ、セダンはどれも同じプラットフォームを使うのだろうか? 発表会で並べられた新型クラウンは、クロスオーバー以外はモックアップだった。だから、どこまで「本物」と同じ寸法なのかはわからない。

しかし、材料を並べて推理するのは、実際に新車が登場するまでの楽しみだ。もう少しお付き合いいただければと思う。

上がクラウン クロスオーバー、下がクラウンエステート

まずは、クロスオーバーとエステートを並べてみる。クロスオーバー以外はスペックは未発表だが、まずは「4車型とも同じホイールベース」だとして並べてみる。
今度はここに、スポーツも置いてみよう。

上がクラウン クロスオーバー、中がクラウンエステート、下がスポーツ

この3モデルは、フロントアクスルセンターからフロントドアのオープニングラインまで(プレミアムレングス)が短い、いわゆる「エンジン横置き」モデルのプロポーションをしていることがわかる。
最後にセダンも置いてみる。

上からクロスオーバー、エステート、スポーツ、セダン。

見てすぐにわかるように、セダンだけ異質だ。プレミアムレングスが長い(つまり、エンジン縦置きプラットフォーム)し、サイズ感もちょっとヘンだ。やはりセダンはGA-Kではない、と考えたほうがよさそうだ。ということは、現行クラウンが使う「GA-L」プラットフォームを継続して使うことを意味している。

上がセダン、下がクロスオーバー

クロスオーバーとセダンを並べて見ると、プロポーションが大きく異なることがわかる。次は、4車型の車体前半を並べてみよう。Aピラーの角度やプレミアムレングスに注目してほしい。

いかがだろうか? どうやらセダンはGA-KではなくGA-Lを継続採用する、ということでよさそうだ。

セダンはGA-L(ナロー版)を使う

GA-Lプラットフォームを使うのは
現行クラウン(2920mm)
トヨタMIRAI(2920mm)
レクサスLC(2870mm)
レクサスLS(3125mm)
だ。クラウンとMIRAIの2920mmのものをナロー版、LSとLCのものをワイド版と呼ぶ。

上が現行クラウン、下が新型クラウン セダン。ホイールベースが同じ(2920mm)だと想定してサイズを合わせてある。

並べてみても違和感は少ない。

上がMIRAI(欧州モデル 左右を反転している)で下がクラウン セダン。

今度はMIRAIと並べてみよう。
こうしてみると、現行クラウン以上にそっくりだ。

新型クラウン セダンがGA-Lを使うメリットは、MIRAIと同じ水素燃料電池車にできること、だと推測する。トヨタは豊田章男社長が常々発言しているとおり「次世代車は全方位で開発」している。コンベもハイブリッドもBEVも水素も、である。となると、法人や公官庁でのニーズが高いセダンが水素に対応するのは、あながち荒唐無稽なことではない。

クラウン スポーツはBEV?

次は、クラウン スポーツについて推理してみよう。

この記事で、クラウン スポーツはBEV(電気自動車)として登場する、と予想した。

となると、プラットフォームは「e-TNGA」になるはずだ。e-TNGAは電気自動車専用プラットフォームで、ホイールベースは3仕様あるようだ。現在は、トヨタbZ4X、スバル・ソルテラが第一弾として登場している。

e-TNGAを使うbZ4Xのボディサイズは

bZ4X
全長×全幅×全高:4690mm×1860mm×1650mm
ホイールベース:2850mm
で、2850mmのホイールベースは、クラウン クロスオーバーのホイールベースと同一である。だから、ホイールベースを揃えて並べても違和感がないのだ(と思う)。

上がクラウン スポーツ、下がbZ4X。ホイールベースが2850mmだったら、という想定で合わせてある。

さて、ここまでサイドビューの写真のみで(勝手に)推理してきた。

推理をまとめると
クラウン クロスオーバー:GA-Kプラットフォーム 2.4ℓターボ+デュアルブーストハイブリッド/2.5ℓ+THSⅡ
クラウン スポーツ:e-TNGAプラットフォーム BEV
クラウン セダン:GA-Lプラットフォーム FCEV(水素燃料電池車)

ということになる。

では、エステートは?
エステートは、クロスオーバーと同じくGA-Kプラットフォーム 2.4ℓターボ+デュアルブーストハイブリッド/2.5ℓ+THSⅡと予想しておく。

おそらく、トヨタは新型クラウンの販売シェアを
クロスオーバー>エステート>スポーツ>セダン
と考えているのではないだろうか?

言い換えれば
ハイブリッド>BEV>FCEV
ということである。

いずれにせよ、同じ「クラウン」のなかにこれだけ多彩なパワートレーンを取り込めるのは、トヨタの底力と「次世代車はBEVのみにあらず」という強い意志の表れ、なのではないか。

今後1年半の間に答え合わせができる。楽しみで仕方ない。

キーワードで検索する

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…