ボディサイズ以上の広い室内 小回り性や走りの質感も良好

最近はプジョー・リフターやシトロエン・ベルランゴといった競合車も上陸したが、この種のヨーロピアン箱型ワゴンをオシャレに乗りこなす文化を日本に根づかせたのは、言うまでもなくルノー・カングーだ。 同車を生産する仏モブージュ工場の従業員休憩室には、おそらく世界で唯一の巨大カングーイベントである日本の「カングージャンボリー」の写真が飾られているほどだ。欧州では仕事グルマとして無慈悲に酷使されがちなカングーだが、日本には熱狂的なファンが少なからず存在することを糧に、従業員のモチベーションを高めるためともいう。

エクステリア

大小ふたつの箱を重ねたような姿でありながら、適度な丸みを帯びていてスタイリッシュさも漂う。 広大なガラスエリアにより、開放感の高さも予感させる外観。
両側スライドドアに加えてフロントドアも大きく開くため、前後ドアの大開口が目を惹く。横から荷物を出し入れする際も使いやすい。最大の特徴は、観音開きのテールゲート(ダブルバックドア)で、小柄な人でも楽に操作できるだけでなく、頭上の狭い場所でも開け閉めできる。さらに、左右の扉はそれぞれ二段階式なので、後ろが狭くても開けられる。

いずれにしても日本で言うとライトバン的な存在にも関わらず、ボディサイズが大きいのがこの種のクルマの特徴だ。特に1.8m超えの全幅は日本的な感覚では規格外だが、それは欧州の物流でよく使われるユーロパレット(1.2m幅)を荷室に収めるためという。ただ、そのおかげで乗用車として見ると、室内も荷室も「これで足りないなら、あとはハイエースかトラックにいくしかない?」というくらいに広い。

乗降性

ワンタッチでフラットになる後席可倒機構や使い勝手の良いトノボードなど、荷室関連のちょっとした工夫もうれしい。本国には一般的な上ヒンジのテールゲート仕様も用意されるが、日本では左右観音開きバックドアのみ。しかし、観音開きバックドア人気は実は日本特有の現象で、欧州では逆に観音開きはほとんど売れないらしい。このあたりにも日欧のクルマ文化(というか、カングーの存在意義)の違いが見て取れる。

インストルメントパネル

加飾を排した仕立てで、良い意味での道具感が魅力だ。レザーステアリングは、チルトのみでテレスコピックは備わらない。メーターは、中央に速度計を配したシンプルな三眼式。

欧州では商用ユースが多いとはいえ、本国でも乗用レジャーユースも想定した設計のため、内外装の質感も基本的に低くない。ただし、この二代目カングーの本国デビューは2008年で、さすがに古さを感じさせる部分もなくはない。それでもカングーのもうひとつの自慢である〝走り〞については、いまだ古さを感じさせない。件の全幅が小回り性能やコーナリング性能に効いているだけではない。路面にひたりと吸いつく接地感やフラット感など、マニア大絶賛のフットワーク性能だけは、基本設計が圧倒的に新しいリフター/ベルランゴと比較してもカングーに分があるのでは…… と思える部分である。

居住性

そんなカングーも本国ではすでに三世代目に切り替わっている。国内最後のカタログモデルは「ZEN」 というグレードの1.2lガソリン直噴ターボだが、本当の最後に輸入されたのは 21年7月に400台限定で発売された「リミテッド ディーゼ ルMT」だった。この最後のカングーは車名どおり、二代目カングーとしては最初で最後のディーゼルモデルであり、その1.5lユニットは本国では最も高性能な116ps版だった。400台は実質的には即完売 状態だったようで、中古市場ではプレミア価格もついている。

うれしい装備

月間登録台数           NO DATA
現行型発      13年8月
WLTCモード燃費   13.5km/l ※ZEN 6速MT 

ラゲッジルーム

そんなディーゼルは、なるほど市街地での力強さや燃費経済性では分があるものの、高速などでの伸びは 1.2lガソリンターボの方が上。 また、ハンドリングでも鼻先の軽いカタログモデルに分があり、どちらも同条件で選べるとすれば、かなり迷ってしまうことだろう。

※本稿は、モーターファン別冊ニューモデル速報統括シリーズVol.139「最新ミニバンのすべて」の再録です。掲載データは作成時点での参考情報です。

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