アルファードとは異なるアプローチでラグジュアリーミニバンの魅力を訴求! [メルセデス・ベンツ Vクラス」【最新ミニバン車種別解説】

日本国内で販売される唯一の輸入LLクラスミニバン。いかにも「アウトバーンの国育ち」といった走りの印象で、国産の大型ミニバンが提供する世界感とはまた違った価値観が魅力だ。
REPORT:河村康彦(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:藤代みさ

商用ベースの異なる3ボディ、力強い走りに良好な高速巡航

「市場が受け入れるならばBEV専業メーカーになる用意がある」と、顧客の選択の自由に対する余地を残しつつも今後の急速なる電動化を示唆することで、多くの人を驚かせたメルセデス・ベンツ。 そんなプレミアムブランドの雄からローンチされる、唯一のスライドドアの持ち主でもありミニバンでもあるのがVクラスだ。商用モデルをベースにエンジンとトランスミッションから成るパワーパックを横置きレイアウトとしたFFの初代モデルは1996年に誕生。その後、トラクション能力や小回り性により優れたFRレイアウトを採用した二代目を経て、現在へと続く三代目モデルが2014年に発表され、日本でも16年から発売されている。

エクステリア

スクエアなボディは使いやすく、大柄な割に車両感覚がつかみやすい。撮影車はオプションでAMGラインのルーフスポイラーリップなどを装備する。

スタイリングはメルセデスらしい重厚感のあるものだが、フロントドアの開く角度が狭かったり、スライドドアのウインドウが固定式であったりと、どこかビジネスライクでミニバンとして考えると不満もなくはない。大きなリヤゲートは電動開閉式となっているので開閉はスムースかつスマート。ホイールベースが3200mmもある割に小回りは効く印象だ。

登場の後、フェイスリフトも含めて数度のリファインを経た最新のモデルは、21年にあらためてADAS機能の強化や装備の充実が図られたバージョンだ。標準ボディ、ロングボディ、エクストラロングボディと、長さの異なる3タイプのバリエーションを用意するのが大きな特徴だが、実は前2者のホイールベースは3200㎜と同一。〝エクストラ〞のみが230㎜も長いホイールベースを採用する一方で、全幅は1930㎜といずれも共通で、標準ボディの全長も4.9mを超えるから、〝ミニバン〞とは言っても相当なボリューム感であることも、またこのモデルならではの特徴ということになる。 

乗降性

そうした大柄なサイズということもあり、車両重量が全モデルで2.3t超と相当の重量級でもある日本仕様のVクラスに搭載されるのは、2.2ℓのターボ付き4気筒ディーゼルエンジンと7速ステップATという組み合わせ。実は、欧州向けモデルの心臓部は、トランスミッションを9速ステップATへと進化させた上で、搭載エンジンも、排気量をダウンさせながら燃料の最大噴射圧をアップさせるなどした新世代ユニットへとスイッチされているのだが、残念ながら日本向けモデルには、いまだ世代交代は図られていないことになる。

インストルメントパネル

10.25 インチのワイドディスプレイを浮かせるようにしたインパネは未来的だが、指針式メーターは少々古典的。 中央下部のシャッターを開けるとドリンクホルダーが利用できる。

そうは言っても、そこはディーゼルユニットの底力で、絶対的な動力性能そのものには、大きな不満は感じられない。ただし、エンジンの透過音は大きめで、ペダル類に伝わる微振動も明確。「それも力強い走りの印象につながっている」と好意的に受け取れないこともないのだが、正直なところ、このあたりがとてもディーゼルエンジンとは信じられないほどに洗練されているSクラスなどの仕上がりとは、比べるべくもないというのも事実ではある。

居住性

一方で、そのほかの〝暗騒音〞などの高まりによって、そんなノイズやバイブレーションが気にならなくなってくる速度域に達すると、今度は想像していたよりも高い安定感やフラットな乗り味などから走りの印象全般が好転。

うれしい装備

月間登録台数   NO DATA
現行型発表    15年10月(一部改良21年7月)
WLTCモード燃費  11.4km/l ※ハイブリッド車 

ラゲッジルーム

このあたりは、良くも悪くもやはり「アウトバーンの国育ち」という印象が強くなってくるもの。アレンジ作業は重々しいが、一見して頑丈なつくりが明らかなシートなども含め、やはりさまざまな価値観そのものが日本のミニバンとは異なっていることを痛感させられる仕上がりだ。

※本稿は、モーターファン別冊ニューモデル速報統括シリーズVol.139「最新ミニバンのすべて」の再録です。掲載データは作成時点での参考情報です。

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