清水浩の「19世紀の技術を使い続けるのは、もうやめよう」 第27回 

脱・温暖化その手法 第27回  —最終的に地球を救うのは太陽電池だ—

温暖化の原因は、未だに19世紀の技術を使い続けている現代社会に問題があるという清水浩氏。清水氏はかつて慶應大学教授として、8輪のスーパー電気自動車セダン"Eliica"(エリーカ)などを開発した人物。ここでは、毎週日曜日に電気自動車の権威である清水氏に、これまでの経験、そして現在展開している電気自動車事業から見える「今」から理想とする社会へのヒントを綴っていただこう。

電気自動車のための1980年代日本の3大発明

20世紀に生まれ、原子、電子、光のことを理解するための科学が量子力学だった。その最初の応用が原子1個だけの理解で行なうことができた原子力の利用だった。

その後、半導体への応用が始まり、ダイオードとトランジスタが発明され、20世紀後半以後の人々の生活そのものを変えた。これらはアメリカでの成果だった。

1945年に第二次世界大戦が終わり、日本では経済と産業の発展はもとより、教育にも以前に増して力が入れられるようになった。このような発展の結果、1980年代に日本人による電気自動車の大きな発明があった。この頃、日本はバブル景気の時代で、それが弾けたことで否定的な見方があるが、今にして思うと、日本の科学と技術が大きく発展できる時代でもあった。戦後に教育を受けた優秀な人たちがいて、経済は豊かで研究、開発に使える費用も豊富だった。工業力が大きくなったことで発明を実用化するための技術も揃っていた。

この時代に大きな発明があった。1つはリチウムイオン電池、2つ目はモーター用の強力な磁石であるネオジム-鉄-ホウ素(希土類磁石)技術、そして3つ目はGaN(ガリウムナイトライド)の結晶化の成功による青色発光ダイオードとGaNトランジスタの発明である。

以後の連載ではこれら3つの発明とその後の発展について述べていくが、今回はその導入である。

リチウムイオン電池は今ではほとんどの電子機器に使われている。これは今までの電池に比べて、重量当りの電力が貯えることができることが最大の特徴である。

18650型リチウムイオン電池
ソニーがハンディカム用の電池として商品化した
リチウムイオン電池と同じサイズの電池。
直径18mm、長さ65mmであることからこの名前
がつけられた。

希土類磁石は周期律表の希土類に属する17の元素のうちの1つのネオジムと鉄とホウ素の化合物を用いた磁石で、これまでの磁石に比べて圧倒的に磁力が強いことが特徴である。

GaNは長年期待されていた半導体であったが、結晶化することがとても難しかった技術である。これの半導体化に成功し、まず発光ダイオードに応用され、現在のLEDの時代になっている。またこれをトランジスタとすることで損失がとても少なくすることができ、これをモーターの速度を制御するためのインバーターのトランジスタとすることで非常に高い効率のインバーターを作ることができる。

LED(発光ダイオード)
高効率、超小型、長寿命の光源として、
急速に普及している。
ネオジウム鉄ホウ素磁石を使った
日産リーフ2017年型のモーター
この磁石を用いることで、電気自動車用モーターが著しく
高効率化、小型化、軽量化ができた。現在では、ほとんど
の電気自動車用モーターに使われている。

これら3つの発明のうち、リチウムイオン電池とGaN半導体はすでにノーベル賞を受賞しており、希土類磁石もいずれ受賞することとなると考えている。

1980年代という時代背景のもとで、3つの大きな発明がなされ、電気自動車時代を迎えようとしている今、これらの実用化を可能とした技術としてなくてはならないものとなっている。

日産マーチを改造した電気自動車
2000年の鈴鹿で電気自動車レースのために、慶應大学
の学生が作った日産マーチの改造車。

告知 セミナー開催 

”電気自動車の時代についての最新情報”



清水浩氏の経営する株式会社e-Gle(イーグル)では、2014年以来、電気自動車、自動運転、再生可能エネルギー、スマートエネルギーに関して、セミナーを開催。今年から年間4回として開催中。次回の第2回目は ”電気自動車の時代についての最新情報” というテーマで開催が決定。

日時:9月16日(金) 13:00〜16:30
場所:AIRBIC 1階 第5-8会議室
(神奈川県川崎市幸区新川崎7-7 新川崎駅より徒歩10分)
オンライン同時開催
内容:講演(予定)
① 電気自動車化の世界的流れ 川端由美様
(自動車評論家 電動モビリティシステム専門職大学准教授候補)
② e-プラットフォームへの動き(清水浩)
③ NdFeB 磁石の最新情報 佐川眞人様
 (NdFeB 磁石発明者、エリザベス女王工学賞受賞者)

会費:1社(原則2名様)5万円
問い合わせ・申込み:e-Gle プロジェクト事務局 新井、森野 
メールアドレス project@shimizuhiroshi


また、参加企業の皆さんで自由な話し合いをしていただくワークショップの案として、ワークショップテーマ案 ”電動化の世界的流れに対する自社の動き、目標、対応" を考えております。終了後、AIRBIC レストランでお茶会を催します。

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著者プロフィール

清水 浩 近影

清水 浩

1947年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部博士課程修了後、国立環境研究所(旧国立公害研究所)に入る。8…