マツダCX-60の直列6気筒ガソリンエンジン 欧州のSKYACTIV-X直6は3.0ℓ、北米のターボは3.3ℓ!

マツダの直6エンジンのシリンダーブロック
マツダの新開発・直列6気筒エンジンは、まずは3.3ℓの排気量をもつディーゼルターボ(SKYACTIV-D3.3)から市場投入された。日本はディーゼルのみの予定だが、海外向けはガソリンエンジンも用意する。どんなエンジンか? マツダ・オーストラリア、マツダEUから発表があった。

日本導入の予定はないガソリン直6エンジンだが……

マツダCX-60 フロントにエンジンを縦置きするラージ・プラットフォームを採用した第一弾だ。

マツダのラージアーキテクチャーは、エンジンをフロントに縦置きする後輪駆動ベースのプラットフォームだ。現在、公表されているのは

・CX-60(2列シート)→日本、欧州、他に導入
・CX-70(ワイドボディ 2列シート)→北米、他に導入
・CX-80(3列シート)→日本、欧州、他に導入
・CX-90(ワイドボディ 3列シート)→北米、他に導入
である。

3.3ℓ直6ディーゼルターボエンジンにトルコンレスの新開発8速AT+48Vマイルドハイブリッドシステムを採用した「e-SKYACTIV D3.3」

搭載されるパワートレーンは、
・2.5ℓ直4ガソリン(SKYACTIV-G2.5)
・3.3ℓ直6ディーゼルターボ(SKYACTIV-D3.3)
・3.3ℓ直6ディーゼルターボ+48V Mハイブリッド(e-SKYACTIV D3.3)
・2.5ℓ直4ガソリン+PHEV(e-SKYACTIV PHEV)

はスペックが明らかになっている。組み合わせるトランスミッションは、これまた新開発のトルクコンバーターレスの8速ATだ。

上記のパワーユニットは日本市場向けで、
主に北米向け:直6ガソリンターボ
主に欧州向け:直6ガソリンSKYACTIV-X
エンジンが用意される。

このふたつのガソリン直6エンジンの姿が少し見えてきた。

ガソリン直6ターボ=SKYACTIV-G3.3ターボ

まずは、マツダ・オーストラリアが発表したガソリン直6ターボエンジンについて、である。
リリースには、こうある。

Two newly developed straight-six engines featuring M Hybrid Boost technology – Mazda’s 48V mild hybrid system – will also debut on Mazda CX-60.
The first is a 3.3-litre e-Skyactiv D turbodiesel, producing 187 kW at 3,750rpm and a substantial 550 Nm of torque between 1,500 and 2,400rpm. 
Alternatively, a high-powered turbocharged petrol unit is available, again with a 3.3-litre capacity, delivering 209 kW at 5,000rpm and 450 Nm of torque from 2,000 to 3,500rpm.
マツダの48Vマイルドハイブリッドシステム「Mハイブリッドブースト」を搭載した新開発の直6エンジン2機種も「Mazda CX-60」に初搭載されます。
ひとつは3.3L e-SKYACTIV Dターボディーゼルで、最高出力187kW/3750rpm、最大トルク550Nm/1500-2400rpmを発生します。 
さらに、209kW/5000rpmと450Nm/2000-3500rpmのトルクを発生する3.3Lの高出力ターボチャージャー付きガソリンユニットが用意されています。

そうなのだ。なんとガソリンの直6ターボエンジンの排気量は3.3ℓなのだ。最高出力の209kWは284psである。つまり
SKYACTIV-G3.3T
最高出力:284ps(209kW)/5000rpm
最大トルク:450Nm/2000-3500rpm

ということだ。

排気量の3.3ℓは単気筒容積で550cc。4気筒なら2.2ℓとなる。マツダの現行ラインアップに2.2ℓ直4はないから、まずここが驚きのひとつ。
もうひとつの驚きはパワースペックだ。
3.3ℓ直6ターボのスペックにしては「大人し過ぎる」のである。
たとえば、

BMWの3.0ℓ直6ガソリンターボ(B58型)は540i
最高出力:340ps
最大トルク:450Nm

Z4なら
最高出力:387ps
最大トルク:500Nm

だ。

メルセデス・ベンツの直6ガソリンターボ(M256型)なら、スペック違いはいろいろあれが
最高出力:367ps
最大トルク:500Nm

といったところだ。

SKYACTIV-D3.3では、大排気量化の狙いをトルク&出力の向上だけでなく、クリーン排気と低燃費に振り向けた。

SKYACTIV-G3.3Tは排気量が300cc大きいにもかかわらず、出力はかなり抑えている。これは、パワーのための直6ではなく、燃費・フィーリングのための直6だから、だろう。

詳細は未発表だが、きっとガソリン直6ターボとしては驚異的な燃費性能を発揮するのだと予想する。

ちなみに、マツダSKYACTIVガソリンエンジンで唯一の過給エンジンであるSKYACTIV-G2.5Tは2.5ℓ(2488cc)の排気量から230ps(169kW)/420Nmのパワースペックを引き出している。

エンジンの排気量によらず、トルク特性を横並びで評価するための数値であるBMEPでいうと
SKYACTIV-G2.5T:BMEP 21.21bar
新開発SKYACTIV-G3.3T:BMEP 17.14bar

となり、かなり「控え目」な数字になっている。

マツダ新開発直列6気筒エンジンスペック

e-SKYACTIV D3.3e-SKYACTIV X3.0SKYACTIV-G3.3T
型式T3-VPTS
形式直列6気筒DOHCディーゼルターボ直列6気筒DOHCガソリン直列6気筒DOHCガソリンターボ
排気量3283cc3.0ℓ3.3ℓ
ボア×ストローク86.0mm×94.2mm83.5mm×91.2mm
圧縮比15.215.0
最高出力254ps(187kW)/3750rpm285ps(210kW)284ps(209kW)/5000rpm
最大トルク550Nm/1500-2400rpm360Nm450Nm/2000-3500rpm
過給ターボスーパーチャージャーターボ
M-HYBRID48V MR型(16.3ps/153Nm)48V MR型(16.3ps/153Nm)×
BMEP21.05bar15.1bar17.14bar
太字は編集部の推測値

この先、さらに大型のCX-80、CX-90に搭載する場合には、もう少し高出力型のSKYACTIV-G3.3Tが登場するかもしれないが、まずはここから、というスペックが「マツダ流」なのは、興味深い。

マツダ従来型直列4気筒エンジンスペック

SKYACTIV-D2.2e-SKYACTIV X2.0SKYACTIV-G2.5T
形式直列4気筒DOHCディーゼルターボ直列4気筒DOHCガソリン+SC直列4気筒DOHCガソリンターボ
SH-VPTS型HS-VPH型PY-VPTS型
排気量2188cc1997cc2488cc
ボア×ストローク86.0mm×94.2mm83.5mm×91.2mm89.0mm×100.0mm
圧縮比14.415.010.5
最高出力200ps(147kW)/4000rpm190ps(140kW)/6000rpm230ps(169kW)/4250rpm
最大トルク450Nm/2000rpm240Nm/4500rpm420Nm/2000rpm
過給ターボスーパーチャージャーターボ
M-HYBRID×MK型24V M-HYBRID
BMEP25.84bar15.1bar21.21bar
従来のエンジンスペック

SKYACTIV-X版は3.0ℓ

今度は、マツダEUのリリースにある
「CX-60のパワートレーンには、3.0ℓ直列6気筒e-SKYACTIV Xガソリンエンジンを導入予定」
という一文だ。

こちらは、パワースペックの記載はなし。

だが、3.0ℓという排気量には違和感はない。なぜなら、2.0ℓのSKYACTIV-X(SKYACTIV-X2.0と呼ぼう)の6気筒版だと考えられるからだ。

おそらく、SKYACTIV-X2.0と同じく、
ボア×ストローク::83.5mm×91.2mmで排気量は2995ccとなるのだろう。

SPCCI燃焼のための高応答エアサプライのキーデバイスであるスーパーチャージャーを装備し、48Vマイルドハイブリッドシステムを採用するはずだ。

予想パワースペックは
最高出力285ps/最大トルク360Nm(つまりSKYACTIV-X2.0の1.5倍)
だ。

ガソリン直6で2種類の排気量を設定するのがマツダ流

CX-60 直6ディーゼル+48V M-HYBRIDのモデルのスケルトン

ということで、同じガソリン直6エンジンなのに、Xは3.0ℓ、ターボは3.3ℓという排気量二本立てというトリッキーなアプローチを採る。いかにもマツダっぽい。

ターボのプラス300cc(単気筒容積でプラス50cc)は、燃費のために使う、ということなのだろう。

残念ながら、e-SKYACTIV X3.0もSKYACTIV-G3.3Tもいまのところ日本導入の予定はない。

その理由は……まずは、現在のディーゼル、SKYACTIV-D3.3、マイルドハイブリッドシステム付きのe-SKYACTIV D3.3の走りと燃費で充分以上だということと、やはり税制の壁があるのだろう。

自動車税額(年額)
e-SKYACTIV D3.3:57000円
e-SKYACTIV X3.0:50000円
SKYACTIV-G3.3T:57000円

いかに4気筒版と比較して燃費が良くても、自動車税の高さで受け入れられにくいだろう。また、重量の嵩むSUVにはディーゼル、という共通認識もある。この先、マツダのガソリン直6が日本に導入されるとしたら……(まだなにも発表はないが)ラージ・プラットフォームのセダン/クーペが登場するときだろう。

というわけで、直6ガソリンSKYACTIV、Xもターボもその詳細の発表が待ち遠しい。

Motor Fan illustrated Vol.193 SKYACTIV 2022

マツダがまたもや世界の注目を集めています。「ラージ商品群」と名付け、これまでのSKYACTIVとは異なるアプローチが発表されたのが2021年10月のこと、そこでは直列6気筒エンジンの登場がアナウンスされ、さらには縦置きパワートレーンによるAWDの可能性が示唆されました。 

そして新型車CX-60がデビュー、直列6気筒ディーゼルエンジンや新型8速AT、ハイブリッドシステムなど、数々の新技術が盛り込まれていることが明らかになりました。しかし、あまりに多くのテクノロジーがいっぺんに現れたため、それぞれの新技術がきちんと紹介されていない。そのように感じたMFiはマツダに取材を依頼、今回はまずパワートレーンについて徹底的に、エンジニアの方々に直接お話をうかがう機会をいただきました。 

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…