VW T-Roc 売れている輸入コンパクトSUVがマイナーチェンジ その進化ポイントは?

VW T-Roc TSI Style 車両価格:417万9000円
VWのコンパクトSUV、T-Roc(ティーロック)がマイナーチェンジを受けた。輸入SUVのベストセリングモデルであるT-Rocはどう進化したのか?
TEXT& PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

進化ポイントは3つ 操作系は最新のゴルフや商品改良後のポロと同じスタイルに

VW T-Roc TSI Style 全長×全幅×全高:4250mm×1825mm×1590mm ホイールベース:2590mm

フォルクスワーゲン(VW)の新世代クロスオーバーSUV、T-Roc(ティーロック)がマイナーチェンジして進化した(7月25日)。国内市場への導入は2020年だから、わずか2年での大幅な変更ということになる。T-Rocは2021年に7000台を超える登録台数を記録。輸入車SUVで2番目の支持を集めたというから、輝きを失いつつあるのがテコ入れの理由ではないことは明らかだ。ちなみに、2021年の輸入車SUVナンバーワンはT-Rocの弟分にあたるT-Cross(ティークロス)だ。

T-Rocの進化ポイントは次の3つである。

  1. デザインの刷新
  2. インテリアの大幅改良
  3. 最新の運転支援システムの採用

T-Rocの全長は4245mm(TSI Style)で、新旧をTSI Style同士で比較すると5mmの全長アップである。サイズの変化はバンパー形状の違いによる。1825mmの全幅も、1590mmの全高も、2590mmのホイールベースにも変化はない。改めてボディサイズを確認してみると、意外にコンパクトであることがわかる。筆者の場合、もっとコンパクトなT-Crossがいるため、「T-Rocは大きい」と勝手に思い込んでいたフシがある。

最小回転半径:5.0m

T-Crossの全長×全高×全幅は4115×1760×1580mm(TSI Style)で、ホイールベースは2550mm。試しにホンダ・ヴェゼルを引き合いに出してみると、全長×全高×全幅は4330×1790×1590mm(e:HEV Z)、ホイールベースは2610mmだ。実は、国産BセグメントのSUVと同等のサイズ(全長の短さは魅力)なのがT-Rocなのである。久々にT-Rocを間近に見たが(マイナーチェンジ版は初見)、ボリュームからくる威圧感は皆無。ただし、存在感はあると感じた。

ラジエーターグリルのLEDクロスバーと新デザインのバンパーが新型の目印。

存在感を感じる理由は、進化ポイントのひとつに挙げているデザインの刷新にある。新型は先代に対して前後バンパーのデザインを変更。フロントは、ラジエーターグリルにLEDのライトバーが追加され、先進的な雰囲気を醸し出すようになった。複数のLEDを個別に点灯・消灯することで対向車などへの眩惑を防ぎ、照射エリアを最大限に確保するLEDマトリクスヘッドライト“IQ. LIGHT”を新設定。エントリーグレードのTSI Activeを除くグレードに標準で装備する。リヤはバンパー形状の変更に加え、ダイナミックターンインジケーター(流れるウインカー)を採用したのが変化点だ。

モニターの位置とサイズを含めて大きく変わったインテリア

進化ポイントのふたつめであるインテリアの大幅改良は、今回のマイナーチェンジのハイライトだ。変更点はいくつもあるが、ダッシュボードの素材がハードプラスチックから本革調のソフトな素材になったのが大きい。先代の最大の弱点は、ダッシュボードのハードプラスチックだった(と、個人的には思う)。運転中、常に目に入る部位だけに、チープな見た目が気分を滅入らせた。先代に比べると、マイナーチェンジ後のダッシュボードは格段に質が高い。気分が上がるというほどではないが、少なくとも、気が滅入ることはない。マイナスからプラスへの印象の変化をもたらすので、効果の大きな変更だ。

インテリアは他にも数多くの変更点がある。先代もインフォテイメントディスプレイは高い位置にあったが、マイナーチェンジ後の新型はさらに高い位置に配置され(9.2インチサイズだ)、視認性が格段に向上した。合わせて、エアコン吹き出し口の配置が変わっている。エアコンといえば、先代は3つ並んだダイヤルとボタンスイッチで操作する方式だったが、新型はタッチコントロール式になった。新世代のゴルフにもいえることだが、タッチ式の操作性に関しては賛否あるだろう。

レザーパッケージは28万6000円
身長183cmのドライバーが前後に座っても、後席膝周りに余裕がある。

有り体にいうと、T-Rocの操作系は最新のゴルフや商品改良後のポロと同じスタイルになったことになる。ステアリングホイールのデザインも同様だ。スマホのワイヤレスチャージングが全車標準装備なのはうれしいポイントだ(シフトセレクターの前方に置き場所あり)。

進化ポイントその3の「最新の運転支援システムの採用」を代表するのは、Travel Assist(トラベルアシスト)だ。ステアリングを握っている状態であれば、前走車との車間に合わせながら設定した車速を上限に車速をコントロール。かつ、同一車線内の中央を維持して走行する「同一車線内全車速運転支援システム」である。このトラベルアシストは、全車に標準で装備する。

先に使用感に触れておくと、実に使い勝手のいいシステムで、たかだか数十kmの移動でも頼りたくなる機能だと感じた。とくに操舵の制御がスムーズだ。VWのこの手の機能は数年前の段階から高い完成度を誇っていたが、最新のT-Rocでデキの良さを再確認した格好である。ほかにも、挟み込み防止機能付きのパワーテールゲートをベースグレードのTSI Style以外に標準装備するなど、新型はユーティリティの面でも充実した内容となっている。

パワートレーン1.5ℓ直4直噴ターボ

エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:DOC型 排気量:1497cc ボア×ストローク:74.5mm×85.9mm 圧縮比:10.5
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm 最大トルク:250Nm/1500-3500rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
スマートフォンワイヤレスチャージングは全車標準

パワートレーンはキャリーオーバーだ。ガソリンとディーゼルの2種類で、ガソリン(TSI系)はアクティブシリンダーマネジメント(気筒休止)機構付きの1.5L直列4気筒直噴ターボの1.5L TSI Evoエンジンを搭載。ディーゼルは2.0L直列4気筒の2.0 TDIだ。ガソリン、ディーゼルともに7速DSG(DCT)を組み合わせるが、発進デバイスはガソリン(最大トルク250Nm)が乾式クラッチ、ディーゼル(最大トルク340Nm)は湿式クラッチとなる。

試乗したのは、ガソリンエンジンを搭載するTSI Styleだった。1.5L TSI Evoは最高出力150ps(110kW)/5000-6000rpm、最大トルク250Nm/1500-3500rpmを発生する。WLTCモード燃費は17.2km/Lだ。車両重量は1350kg(オプションのパノラマスライディングルーフ非装着車は1320kg)である。

タイヤは215/55R17サイズのハンコックを装着
リヤサスペンションはTBA

当然といえば当然なのだが、T-Rocはアイポイントの高いゴルフかポロを操っているような感じだ。走り出した瞬間からボディのしっかり感が感じられるし、同時に、しなやかに動く脚の動きが印象に残る。電動パワーステアリングの操舵反力は他社に比べるとやや軽めで、この点も最新のゴルフと共通している。だからといって頼りないわけではなく、他車から乗り換えると「軽めかな」と感じる程度。1時間のドライブを終えて戻って来る頃にはなじんでしまっている。

片側2車線の幹線道路を走りながらメーターをチラチラと確認していると、頻繁に「2シリンダーモード」に切り替わるのがわかる。負荷が低いときは4気筒あるうちの2気筒(2番と3番シリンダー)をカットし、実質的に0.75L2気筒エンジンとして運転している(そのほうが燃料消費は少なくて済む)。表示を見て切り替わりを認識するにすぎず、音もショックも、ドライブのフィーリングも一切4気筒運転時と変わらない。

強めにアクセルペダルを踏み込むと2シリンダーモードの表示は消えて4気筒運転になるが、4気筒→2気筒、2気筒→4気筒の切り換えはシームレスで、スムーズだ。高速走行時だけでなく市街地走行でも燃費がいいのは、この賢い制御の効果が大きいに違いない。といって、1.5L TSI Evoはおとなしい走りが専門というわけではなく、ちょっと強めに鞭をくれると期待どおりの力を発生して気持ち良く加速してくれる。

クロスオーバーSUVのT-Rocは、効率が高く、頼もしい走りはそのままに、エクステリアとインテリア、それに運転支援システムを中心とする装備の大刷新で魅力を増した印象だ。

最小回転半径:5.0m
VW T-Roc TSI Style
全長×全幅×全高:4250mm×1825mm×1590mm
ホイールベース:2590mm
車重:1320kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトレーリングアーム式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:DOC型
排気量:1497cc
ボア×ストローク:74.5mm×85.9mm
圧縮比:10.5
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:50ℓ

トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FF
WLTCモード燃費:15.5km/ℓ
 市街地モード 12.2km/ℓ
 郊外モード 15.8km/ℓ
 高速道路モード 17.2km/ℓ
車両価格:417万9000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…