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なぜ頑なにリジット? 時代に逆らうレイアウト
ジムニーのサスペンションレイアウトは、リジットアクスルのコイルサスペンションとなる。現代の車両設計の主流から考えると、時代の進化に逆らっている。元々、リジットアクスルというのは構成部品が少なくシンプル。コストが安いというメリットがあるが、車両の姿勢制御が甘く、現代の道路事情にあまり適していない。なぜ、ジムニーがリジットアクスルという古いレイアウトを固持しているのか? それはスズキがジムニーを本格クロカン4WDと捉えているからだ。
発展途上国は、インフラ整備がままならない。日本のようにどこでも舗装道路という状況は、世界規模で見るとまだまだ稀有な国なのだ。ジムニーは、スズキの世界戦略車として生まれた経緯があり、未舗装路でのハードな使用に耐えられ、壊れずに高い走破性が求められている車両といえる。そのため、ジムニーはリジットアクスルのコイルサスペンションを採用しているのだ。
さらに、スズキは歴代ジムニーを愛しているユーザーの声をきちんと聞いてくれている。ジムニーの語源は、ジープミニを短縮してジムニーとなった。時代がいくら変わろうが、ジムニーはジープミニなのだ。ハードなオフロードをしっかりと走り、必ず帰ってくる帰還性能を考慮すると、ジムニーの車格で独立懸架サスペンションにすると構成部品が小さくなる。パーツのサイズは単純に強度と比例する。ジムニーの愛好家たちの使用状況をスズキが考慮すると、とてもじゃないが独立懸架サスペンションではもたないと判断し、JB23のリジットアクスルのコイルサスペンションを熟成する道を選んだのだ。
時代背景から、すでにランクルは、独立懸架サスペンションに移行し、スズキがお手本としたジープは廃盤。国内には、本格クロカン4WDは、もうすでにジムニーだけと言っても過言ではない。その地位に恥じないレイアウトこそが、リジットアクスルのコイルサスペンションなのだ。
ラテアームの役割とは?
ジムニーのサスペンションは3リンクリジットと呼ばれる構造。その内訳は、リーディングアーム(もしくはトレーディングアーム)2本と、ラテラルロッドの3箇所でアクスルを保持している。リジットアクスルのコイルサスペンションレイアウトの中で、3リンクは最もスタビリティが高く、構成部品が少ない。特にアームに関しては、かなり重要な役割を担っている。3本のアームでアクスルを保持するとなれば、アームの取り付け箇所は、必1本あたり2箇所となる。そのブッシュの捻り具合がスタビリティを作り出す。そして、1G状態の角度とアーム本体の長さが、トラクション性能に直結。さらに、横方向の動きに関して規制を行うのがラテラルロッド。アクスルの上下動に追従し、横方向の規制を行う為、1G状態での角度がかなり重要となる。基本水平近くが最も好ましく、角度が付くに従い、スムーズな動きがスポイルされ、乗り心地に悪影響を及ぼす。フロントに関しては、ステアリングロッドと、ラテラルロッドの角度は、共通が必須となる。
右に記したサスペンションは、ジムニーのサスペンションチューンにおいて、代表的なリフト量でのキットメニューだ。最も安価な1インチクラスのコイルスプリング交換のみから11インチアップのフルキット、2インチ、もしくは3インチアップ時に必要なパッケージングとなる。これらは、それぞれ目的が違う。その目的に合わなければ、追加パーツが必要となったり、まるまる全部変更しなければならなくなる事態にいたる。
まず、コイルスプリング交換のみの場合だが、これはコイルスプリングだけでなく、ダンパーの延長併用をオススメする。特にフロントに関して純正ダンパーは伸び切り側にゆとりが無く、段差を超えた際に不快な衝撃が発生する場合がある。初心者向けというか、あくまで入門的なカスタムメニューといえるだろう。
次に1インチアップのフルキット。このメニューを見ればわかるが、きちんと走行性能を得ようとする場合、これらのパーツが安全面も考慮すると必要となる。
次に2インチ、3インチアップ時に必要なメニューだが、リフト量に伴いキャスター角の補正を行わないと直進安定性が損なわれる。さらにブレーキホースも長さが足らなくなる。キャスター補正は偏心ブッシュと呼ばれるものを使用する場合もあるが、乗り味をきちんと確保する場合、アームを補正済みの物に変更するのが望ましい。ブレーキホースに関しては、各メーカーから適正なロングタイプが販売されている。
オン重視? それともオフ重視?
乗り味のテーマだが、ユーザーが求める内容は、大きく分けるとオンロード志向、オフロード志向に分かれる。リフト量に対して変更すべき構成パーツで決まるのだが、指向に関しては、大きく分けるとスタビライザーの有無で決まる。3リンクリジットはリフトアップを行うと、スタビリティが保てなくなる。純正でもフロントにスタビライザーが装着されているのだが、正しい補正を行いスタビライザーを稼働させてやることで、乗り心地とオンロードでの快適性がキープできる。
オフロードの場合、逆にストロークに制限をかけるスタビライザーを外すのが定番だ。さらに、両者共通なのが、ダンパーの性能がかなり重要。きちんと減衰をかけられないと、オン、オフ共に使い物にならないのだ。
ネット通販などで、構成パーツのマッチングを確認せずに、バラバラのメーカーなどでパーツを手に入れると、ダンパーの長さに対してコイルスプリングの長さが合わず、ストローク時に脱落したり、ちょっとした段差などでフルバンプして酷い乗り心地になったりする。最悪は、交換したパーツ本体が壊れてしまうこともある。メーカーがキット構成として販売しているものは、テストを行い、問題ない組み合わせで販売している。リフト量が同一であるから問題ないと判断するのは間違いで、各パーツのマッチングがかなり重要。乗り心地の問題だけであれば、我慢すれば良いのだが、安全面にも問題があるので、実績のない組み合わせは絶対やめて欲しい。
初心者向け【リフトアップサスペンション轟】
■価格:3万8500円
■仕様:30㎜リフトアップコイル
中級者向け【1インチアップキット ラテ X-SHOCKセット】
■価格:15万6200円
■仕様:1インチアップコイル、ロングブレーキホース、キャスターブッシュ、14段減衰調整式ショックアブソーバーX-SHOCK、前後ラテラルロッド
上級者向け【FARM ST PRO SET】
■価格:18万7550円
■仕様:スプリング2インチor3インチアップ、スチールラテラルロッド前後、リーディングアーム前後、ロングショックセット、50㎜ロングブレーキセット
那須一博さん
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]