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エンジン特性には違いあり、ただしCVTでは気づけない!
──まずは車両について、特にエンジン特性から教えてください。
エンジン特性はマニュアル車だと凄く分かりやすいんです。ただ、ハイゼットカーゴやエブリイバンにはマニュアル車はありますが、ワゴン系はオートマしかありません。しかも、アトレーはもともとCVTですし、エブリイワゴンも去年の春のマイナーチェンジでCVTになってしまった。だから、今のワゴン系は両者ともにCVTになってるんです。そうなると、自動車メーカーさんのプログラム次第でどのぐらい踏んだら何回転にするっているのはいかようにも操作できてしまうんです。ですから、エンジン特性がそのまま走りに出るわけではない、という部分は前置きさせてください。その上で、エンジンの特性に関してはトラックやバンなどのマニュアル車を基本として話をさせていただこうと思います。
まずエブリイですが、こちらはR06Aというエンジンを搭載しています。これは平成27年から現行のエブリイまで変わっていません。特長としては中・低速のトルクがある。対してアトレーの方はKF型というエンジンで、これはかなり前からあります。一代前と言ったら言い過ぎかもしれませんが、特長としてはダイハツの方が高回転型です。上まで回すと凄い伸びてくるので気持ちいいんですよ。回すとパワーが上がる。そんなエンジンです。ただし、先ほども言ったようにワゴン系はCVTのオートマなので、体感がしにくいかもしれません。実際は踏んでも7000とか8000までは回りませんから。
──エンジン特性の違いは走りの違いにも出ますか?
R06Aエンジン(つまりエブリイ)の方が中低速でトルクがあるので、街乗りはこちらの方が走りやすいなと思います。ただし、マニュアル車だとですよ。オートマになるともう違いはわからないですね。私はアトレーもエブリイも両方日々乗ってますけど、走りに関しては似ていると言えるでしょうね。ただ、独特のエンジンの音や振動なんかは違いますね。どちらが良いというわけではないけれど、乗った感じが違いますね。
──高原さんはトラックと合わせてバンタイプのレースも主催されていますが、サーキット行くならどちらが向いていますか?
レースで走るならダイハツ系の方が私はおもしろいですね。5000、6000と来て8000まで回るんで(マニュアルの場合)。公道ではそこまで回せませんから。対してスズキは高回転になってもただ回ってるだけっていうようなフィーリングですね。ただそれも、結局ECU、コンピューター次第でいかようにでも変えられてしまいますが…。ただ、軽トラックに関して言えば、うちでは代々の軽トラックはモデルが変わる度に買って乗り継いでますけど、年々パワーが落ちてます。一般の方でも乗れば分かるぐらい。それは今の時代、燃費の良さを凄い求められるし、排ガスの要件も厳しいので、自動車メーカーさんはそっちを向いたセッティングに明らかに変えてますね。ちょっと話が飛びますけど、うちの主催のレース結果を見ると、上位入賞者は一世代前の軽トラックが多いんですよ。やっぱりサーキットで速いのは一世代前の車両なんですよね。

スタビライザーの有無が、運転のフィーリングを分ける
──サスペンションにも違いはありますか?
純正では全般的にスズキの方がフィーリングが固めなんですよ。それは自動車メーカーとしての思想だと思うんですけどね。アトレーのようなダイハツ系の方が柔らかめです。だから純正で比べるとソフトな感じがする。そういった足の違いがベースにあって、かつ、ハイゼットカーゴ&アトレーはスタビライザーがない。これがもう圧倒的な違いですね。
──え、スタビライザーがないんですか?
そう、ないんです。だからロールもしやすいですし、ちょっと山道行くとむちゃくちゃ車体が傾きます。また、高速道路もどっしりとしてくれないですね。常に左か右が沈んで、ふらふらするんです。だから、ハイゼットカーゴ&アトレーの足まわりを強化するなら、私個人としてはスタビライザーがおすすめですね。
──なるほど、スタビライザーが有効なんですね?
それが特によく分かるのが、キャンパー仕様です。アトレーやエブリイでもキャンパー仕様は増えてますが、エブリイはまだスタビライザーが付いているのでそこそこ走れます。でもこれがアトレーになると、スタビライザーがない分フラフラしてしまうんですね。なので、ハイゼットカーゴやアトレーのオーナーさんがキャンプ仕様にするときは注意が必要です。キャンパー仕様の話が出ましたので、ついでに話をさせていただくと、この前来店されたお客様から聞いたのですが、夫婦2名で乗車するとドーンって突いてしまうことがあるそうなんです。いわゆる「底突き」と呼ばれるショックが縮みすぎて底に着いてしまうという状態ですね。元の状態から架装を積んで沈んで、人が乗ってさらに沈んでってなるとショックの縮み側がなくなってしまって、底突きしてしまうんですよ。そのため今「強化バネ」、車高は変わらないけれども固くするっていうスプリングも開発しています。ですから、ロールが大きくて悩んでいる方はスタビライザーを付けてもらうのがベストですけど、底突きで悩む人はバネを固くしてもらうっていうのが良いですね。さらに言うと、うちの1インチアップキットって本来はファッションで上げるためのものなんですけど、後ろが下がっちゃったキャンパー仕様にも有効です。そういう人はこれを後ろだけ入れてあげると、平行になるんですよ。そういう使い方もあります。
今流行のリフトアップ、そのメリット・デメリット
──続いてはハイゼットカーゴ&アトレーでも流行を見せるリフトアップについて教えてください。
リフトアップには3種類の方法があります。まずはスプリングで上げる方法です。バネが伸びてるんで、当然車高が上がるんですけど、同様にショックがはじめから伸びちゃってるんですよ。なので、伸びストロークが少ないんです。次が上スペーサー。これがうちで採用している方法です。アッパーマウントの上にスペーサーをかませてあげて、その分車高が上がりますと。この場合、ショックとスプリングの関係が変わりませんので、伸びも縮みも純正のままです。で、三つ目がバネとアッパーマウントの間にスペーサーを入れる方法です。要はバネを圧縮してプリロードをかけるんです。バネが固ければ車高は沈まないですよね。バネを縮めて固くすることで、その状態を作り出していくんです。だから1Gかかった時に沈まない、という理屈になります。これが中スペーサーです。この方法もショックの伸びストロークが少なくなってしまいますので、注意が必要です。なお、大きくリフトアップする際は上スペーサー方式の「ブロックで上げる」という方法を採ります。なぜかというと、そうしないとショックが伸びきってしまうんです。50ミリ(2インチ)上がるようなスプリングを入れたら、常にショックが伸びっぱなしになってしまうので、スプリングで上げるのは1インチアップぐらいまでになります。

──ショックが伸びきってしまうと何がいけないのですか?
ショックってストローク量がだいたい70ミリから80ミリぐらいなんですけど、伸びきりと沈みきりがあったら、真ん中らへんで普段乗ってるのが一番理想なんです。そうすれば入力があったときに縮んでも縮みしろがあるし、ジャンプした時は伸びしろがありますから。ところが、ショックが伸びた状態になるとジャンプしたとき、伸びたときに伸びきり音が出るんです。いわゆる逆底突きというやつですね。縮みはいいんです、縮みしろがいっぱいあるんで、縮み側は着かないんです。ただ伸びしろがないんで、はねたときとか段差から降りる時、降りる時ってタイヤが伸びるじゃないですか、その瞬間にゴンと音が出るんです。特にフロントサスペンションはイスのすぐ下だから、音がダイレクトに入ってくるんですよ。対してリアは音が出にくいのもあるし、出ても気付きにくいんですよね。ただ、うちの1インチアップキットはリアもショックが伸びきりにならないようにブラケットで対策をしています。ただ、車種によっては音が出ないので、ブラケットを設定していないものもあります。その分価格も変えてるんですよ。
──では、リフトアップのメリットは何なのでしょうか?
若干なりとも最低地上高が上がるのが一つ目で、二つ目はタイヤの位置とボディの位置関係が変わるので、それによって大きなタイヤが入るっていうことです。もうその二つに尽きるんじゃないですかね。だから不整地に入る機会が多い人はリフトアップした方が断然有利ですね。あとは見た目にこだわる方、迫力あるオフロードタイヤ付けてカッコいい感じにしたい方には、リフトアップがおすすめです。
──対してデメリットはありますか?
どこまで上げるかですけど、例えばリフトアップキットで2インチ上げる場合。サスペンションで2インチ(5センチ)で、しかもタイヤも大きくするとなると10センチぐらい車高は上がります。そうすると、まず乗り降りがしにくくなります。これは意外と馬鹿にできない。毎日のことなので。また、それと似てますけど、荷物の乗せ降ろしがしにくいです。これね、くだらないと思われるかもしれませんが、意外と毎日となると大変なんですよ。逆にローダウンした方が乗り降りしやすいんですよね。吸い込まれるようにスポッと入れるので。もちろん荷物の乗せ降ろしもしやすいです。また、視点が高くなるんでちょっと優越感があるし、見通しも良くなります。バン・ワゴンはわりと視点高いんですけど、そんな中でもさらに上がってやっぱり見やすくなりますね。

──高原さんのオススメは何インチアップですか?
個人的には1インチか2インチ程度でしょうか。4インチアップキットなども作ろうと思えば作れますけど、10センチも上げるとなるとかなり不安定になってくるので。さらに、うちでは「バンパーをカットしないで楽しめる範囲」っていうコンセプトがあるんで、そうなると1インチになってしまいますね。2インチ上げるとちょっと大きいタイヤを履きたくなるので、そうするとバンパーに擦っちゃいますから。
──リフトアップをする際に車検で気をつける点はありますか?
一つ目は4センチというラインです。プラスマイナス4センチまでの車高の変化だったら、車検証の数値を書き換えないでいいんです。なので、お手軽にできるリフトアップは1インチアップまで。2インチになると5センチになって4センチを越えてしまうので、そうなると車検証の車の全高っていうところを書き換えなければいけなくなります。なので2インチ上げる人は記載変更が必要です。二つ目のラインは全高2メートルですね。全高が2メートルを超えると軽自動車の範囲を超えてしまうので。ただ、そこまで上げるには、どれだけリフトアップすれば良いのか。もし仮に上げられたとしても不安定で乗れないってこともあるかもしれません。
タイヤに関しては、基本的にはノーマルタイヤに戻してもらえば問題ありません。ただ、ブロックタイヤのまま車検に通したいという方はロードインデックスの数字に注意してください。この数字が純正タイヤよりも大きくないと、耐荷重が足りないってことでダメです。うちがデモカーで履いているジオランダーなんかは大丈夫ですけど、メーカーによっては数値が違う場合もあります。ただ、とにかくどこのメーカーのタイヤでもロードインデックスが純正のタイヤよりも大きいことが最低条件です。あと大きいタイヤをつけるとスピードメーターが狂います。本当は補正できれば良いんですけど、できないんですよ。極端にタイヤの大きさを変えるとメーターが狂ってきちゃうんで、大きくメーターと実際の速度が異なると車検に通らないこともあります。
フルモデルチェンジをいつしたか、それが内装の使い勝手を分ける
──室内の使い勝手に関してはどうでしょうか?
これはハイゼットカーゴ&アトレーのほうがフルモデルチェンジが最近の車なのでかなり有利ですね。エブリイって平成26年に出てからフルモデルチェンジをしてないので、ボディもそのまま9年目。アトレーは令和3年の末に出てるから4年目ですね。で、車両を見ていただければわかるんですけど、ハイゼットカーゴ&アトレーの方が車両が角張ってますよね。この微妙な角張りがポイント。少しだけですけど室内空間が広いんです。私はクルマで多くの荷物を運ぶことが多い、すると、大きい段ボールとかマフラーとかガンガン入れてフル積載する際にこのわずかな差が気になるんです。たぶん50ミリぐらいの差だと思うんですけど、広い方がありがたい。それに乗ったときもハイゼットカーゴ&アトレーの方がちょっとだけ広々とした感じがあります。気にならない方もいるでしょうけれど、荷物いっぱい積む人はハイゼットカーゴやアトレーの方が有利かもしれないですね。
それと収納スペースの違いですね。荷室左右の壁に棚板を付ける溝があるんですけど、あれが非常に便利なんです。働く人も趣味で車中泊する人も、ホームセンターに行ってあの寸法で板を切ってもらえば簡単に棚ができてしまいます。シューッと差し込むだけですからね。アトレーが先に始めたのですが、エブリイの最新モデルも付いてましたね。ただ、初期のころは付いてなかったはずです。それに、バンにも付いてるかどうかは要調査です。
それとアトレーが4ナンバーになっちゃってるのをご存知ですか? 元々はバンが4ナンバーで、ワゴン系は5ナンバーだったんですよ。それが当たり前だったんですけど、現行のアトレーからバンもワゴンも4ナンバーになってしまったんです。そのためエブリイワゴンよりもアトレーの方がリアのシートがちょっとちゃっちいんです。そのぶん倒して荷物積むとか、フルフラットにする上ではアトレーの方が向いてるのかな、という気がしますけど。ダイハツさんは割り切って4ナンバーにしたらしいので。ただ、ファミリー4人で乗って後部座席にも子どもさんが頻繁に乗るような場合にはエブリイワゴンの方が後ろの座席はふかふかして乗りやすいかもしれないですね。二人しか乗らないよとか、車中泊専門だよって言う方は別に関係ないですね。

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KCARスペシャル ドレスアップガイド Vol.41 ダイハツ・ハイゼットカーゴ&アトレー No.2より
