自動運転を実現させるためには、人の手による作り込みが必須! 今後どう進化していくの?

【これからどうなる自動運転!】自動運転の世界で必要不可欠になる”画像認識”、どう活用されているの?|第3回 自動運転を実現する技術 後編

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どんな技術があると自動運転が可能になるのでしょうか。また、すでに実現している自動ブレーキなど
高度運転支援システムには、どのような技術が使われているのでしょうか。
いろいろな角度から詳しく見ていきましょう。

画像認識、アルゴリズム、半導体

画像認識という言葉を聞いたことがあるでしょうか。自動運転の世界では、必要不可欠な技術です。クルマのセンサーとして搭載されているカメラですが、これが画像認識のためのハードウエアになります。一般的にカメラといえば、一眼レフカメラ、スマホのカメラ、またクルマではドライブレコーダーが広く使われています。

一方で、自動運転や自動ブレーキなど高度運転支援システム用の単眼カメラやステレオカメラは、そうした綺麗な画像を撮るような設計にはなっていません。実際、それらカメラの映像を見ると画質が粗く、動いている、または静止しているモノの状況を読み取ろうとすることに特化していることが分かります。こうした物体が、クルマなのか、人なのか、動物なのか、それらがいまどこにいて、これから先どのように動こうとしているのかを予測するのが、画像認識の役目です。

具体的には、カメラで収集したデータに基づき、いわゆるAI(人工知能)で使うための基礎データとなる「教師データ」を作成します。その上で、開発者がAIにどのようなプロセスで考えさせるかという「アルゴリズム」に沿って、AIが自己的に学習していきます。つまり、同じカメラで同じデータを収集しても、アルゴリズムによって画像認識の結果が変わってくるということになります。

また、AIの性能を左右するのが、集積回路における半導体の性能です。データを処理する速度が速いほど、自動運転の性能も上がるというのが一般的な考え方となります。

ドライバーモニタリング

前回で紹介したとおり自動運転には、自動運転レベルとして0(ゼロ)から5まで6段階があります。レベル2までは、運転の主体は運転者ですが、レベル3以上ではクルマのシステムとなります。また、レベル3ではクルマのシステムが自動運転を継続できないと判断すると、ドライバーに運転を移行する要求をします。

こうした中で、重要なのがドライバーの状況をモニタリングする機能です。レベル1から3では、ドライバーの眼の動き、顔の向きなどを車内の特殊カメラで撮影し、居眠り運転防止などで警告音や警告表示を出しています。

また、ドライバーの体調が不良で運転が継続できなくなった場合、カメラでモニタリングすることで、自動運転に切り換えるシステムの量産化が進んでいます。これを「ドライバー異常時対応システム」と呼びます。国土交通省が2023年9月から新車の保安基準として組み込むことが決定しています。

作動方法については、自動車メーカーによって多少の差はありますが、基本的なクルマの動作としては、ハザードランプをつけて同一車線で徐々に減速して停止するか、自動で車線変更して路肩などに停止し、119番に自動通報します。

自動運転というと、ちょっと贅沢な装備という考え方を持つ人がまだ少なくないかもしれません。ですが、こうした緊急時での対応が事実上、新車で義務化されることで、自動運転の必要性を多くの人が理解することになると思います。

人の手による作り込み

ここまで、高精度3次元地図、衛星測位、V2X、センサーフュージョン、AIによる画像認識、そしてドライバーモニタリングなど、自動運転や高度運転支援システムに係るハードウエアやソフトウエアを紹介してきました。

その上で、最も重要なのは、実際の交通状況に応じた臨機応変なシステムによる、ユーザーの使い勝手を考えることです。

要するに、どんなに優れた技術があっても、それをどう作り込むかによって、製品としての質が大きく変わってしまうのです。

実際、現在量産されている自動運転レベル2である高度運転支援システムは、モノによってドライバーの感じ方はけっこう違います。

自動車メーカー各社の自動運転技術関連のエンジニアの声を聞いてみますと、それぞれが理想とする「人とクルマ」との関係性があり、またさまざまな交通環境でのクルマの対応についても考え方に差があることが分かります。

自動運転というと「AI(人工知能)がすべて理解して、理想的な走行を可能にしている」と思う人がいるかもしれません。しかし、AIはあくまでも自動運転を実現するためのツールのひとつであり、自動運転のシステム全体を考えるのは「人の頭脳」を駆使しているのが実状です。

ただし、将来的にはシステム設計をAIが担う時代が来るのかもしれません。

もしそうなったらば、人は「倫理」という観点で自動運転全体について注意を払う必要性が高まるでしょう。

著者PROFILE 桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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