近年メタバースでのVR(仮想現実)/AR(拡張現実)ヘッドマウントディスプレイ、自動車などの映像表示機器では、偏光を乱さない複屈折が極めて小さい光学部材が求められている。旭化成では、分子レベルでの複屈折制御により新しい低複屈折透明樹脂「AZP」を開発し、サンプル提供を行うことで、顧客から好評価をもらい先行販売に繋げることができた。今後、「AZP」の低複屈折特性を採用してもらうために展示会への出展など、より広範な顧客に対するマーケティング活動を本格化し、年内の製品化実現を目指していく。
「AZP」は下記の特長を有している。
(1)低複屈折性
樹脂成形時の分子鎖の配向に起因して発生する複屈折「面内位相差(Re)」「厚み方向位相差(Rth)」、および成形後の応力に起因して発生する複屈折の指標「光弾性係数(C)」を限りなくゼロに近い水準で実現した。
その結果、特殊な成形方法や成形条件、後処理工程を用いずに極めて複屈折の低い成形体を得ることが可能であり、生産性や設計自由度の向上に寄与する。
(2)優れた光学特性および物理特性 ① 優れた透明性:全光線透過率 約92% ② 高耐熱性:ガラス転移温度(Tg)約133度 ③ 高表面硬度:鉛筆硬度 3H程度
「AZP」は、その際立った低複屈折性、透明性、耐熱性、耐候性、軽量化など、光学ガラスの代替が期待できるサステナビリティに寄与する低複屈折透明樹脂であり、その特長は以下の用途で最大限に活かせると考えている。
(1)VR/ARヘッドマウントディスプレイのレンズ、プリズム等
(2)自動車用HUD(ヘッドアップディスプレイ)、CID(センターインフォメーションディスプレイ)、等
近年インターネット上の仮想空間であるメタバースが注目され、その映像表示機器としてVR/ARヘッドマウントディスプレイの需要が高まっている。また自動車関連では、ナビゲーションや計測器等をフロントウィンドウ越しに虚像として表示するHUDや、車内中央の大型ディスプレイに表示するCIDが、安全性と利便性の面から普及が進んでいる。これらの用途では、小型・軽量化、広画角化、高精細化、視認性の向上のため、光学部材として低複屈折の透明樹脂材料が求められている。