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2021年に自動車産業は、これまでにない新たな課題に直面することになった。2020年と2021年に世界中の組立ラインで製造された自動車の総台数は、前年比で大幅に減少。そのため、世界各地で特定のカラー領域の人気がより鮮明になる一方で、長年人気があったカラー領域に陰りが見られた。
ホワイト、ブラック、グレー、シルバーといった無彩色は、今でも最も人気のカラー。クラシックでタイムレスな美しさを持ち合わせており、環境にもハイテクにも通じるものがある。しかし、新しいカラー領域の登場で、不動だった人気にも変化が起こりつつある。
BASFのデザイナーが何年も前に予測したように、ブルーが脚光を浴びている。レッドもまた人気が高まっており、世界の多くの地域で無彩色のシェアを奪っている。数字は小さいものの、グリーンとベージュもまだデータ上に登場している。ただし、誰もが考えるような一般的な色合いではない。
本レポートで引用しているのは、過去1年間に新車に使用された色のデータである。
欧州、中東、アフリカ –有彩色がさらに多様に
欧州、中東、アフリカ(EMEA)における有彩色のシェアは現在27%を超え、さらに上昇して過去20年間で最も高い数値となっている。有彩色の中でもトレンドを牽引しているのはブルー。現在、スカイブルーからミッドナイトブルーまで180色近い種類のブルーがあり、エレガントで新鮮かつ、若々しさを感じさせるため、全てのセグメントのあらゆるボディタイプに使用されている。レッドはブルーに大きく引き離されつつも2位につけており、グリーン系の色もかなりのシェアを獲得している。
無彩色では、やはりホワイトが一番人気で、グレーも追い上げてきている。グレーには複数の選択肢があり、エフェクトやテクスチャーがその存在感を倍増させている。エレガントやダーク表現、輝きを放つ色から、軽やかでスポーティなソリッドカラーまで、160種類の異なるグレーがある。
「EMEAのためにデザインされた色は、見慣れた色域を使いながらも、新しいエフェクト、かすかな色のグラデーション、あるいは特定の輝きを加えることで新鮮な色にしています。これにより、有彩色が個性とスポーティさを大胆に表現する色となり、毎年人気が高まっています」と、EMEAの自動車デザイン責任者であるマーク・グートヤール氏は述べている。
アジア太平洋 –グローバルな色の多様性を牽引
アジア太平洋地域ではホワイトは依然として最も人気のある色だが、その人気に陰りが見え始めている。ブラックとグレーが4年連続で増えてきており、この傾向が路上での白い車の存在感を変えつつある。アジア太平洋地域で生産された新車の79%に無彩色が使用された。
有彩色の人気は安定しているが、いくつかのカラー領域で数ポイント上下変化が見られた。有彩色で最も人気のあるブルーは、他地域を合わせたグローバルデータと同じく増加、レッドのシェア減少分がブルーの増加につながった。ブラウンとゴールドはある程度の数値となり、ベージュ、オレンジ、イエロー、グリーン、バイオレットはそれぞれ1%程度で踏みとどまっている。
「アジア太平洋地域は自動車生産台数が世界一であり、他の地域と比較して最も多様な色が使用されています。ブルーの急増に伴い、グリーン系統の色も約2%増となりました。ただし、通常のグリーンではありません。ティール、カーキ、オリーブと、今年は特にSUVでグリーン系の色の人気が高まりました」と、アジア太平洋のデザイン責任者、松原千春氏は述べている。
北米 –アメリカでは色の好みが急速に変化
北米の好みはブルーから他の色へと向かっているようで、ブルーのシェアは昨年比で4%減少した。これでブルーを好む傾向が2017年の水準に戻ったことになり、ホワイトを含む無彩色が増加した。ホワイトは世界的に減少したものの、北米で増加した。また、シルバーとグレーはともに減少した。有彩色では、レッドが1%増。レッドとブルーが同率で最も人気のある有彩色となっている。
2021年は原材料の不足により、自動車メーカーは少ない資源を配分する中で難しい選択を迫られた。各社ともに不況の中で、より大型で人気のあるプラットフォームを好む傾向にあった。
「北米はより早く方向転換しているようです。需要が高く、供給が減少傾向にあるため、購入者はより現実的な選択を迫られ、感情に基づく選択をしなくなるでしょう。消費者は、無彩色のカラー領域で、より親しみやすい色合いにすばやくシフトしています」と、南北アメリカのデザイン責任者であるポール・チョーニー氏は述べている。
南米 –世界的方向性に追随
ブルーは世界的に人気が急上昇している。南米ではブルーが3%増となり、レッドのシェアを奪っている。この地域でホワイトの車を購入する人たちはより保守的である傾向が強い一方で、購入者の目を引く新しい色合いも登場している。
自動車デザイナーは通常、3〜4年先のモデルを見据えて色を開発する。南米は他の地域に比べて色の方向性を受け入れるのが遅い傾向があり、予想通りの展開といえる。
「これだけ増えてくると、南米でもブルーが定着してきたと言えるでしょう。スカイブルーからダークブルーまで、より多くの購入者がこのカラーファミリーを好むようになってきました。私たちは、この重要なデザイン領域を高めるような、美しいエフェクトや顔料、特にメタリックを取り入れています」と、南米自動車塗料のディレクター、マルコス・フェルナンデス氏は述べている。
BASF自動車用OEM塗料カラーレポートは、BASFのコーティングス事業部が2021年の世界の自動車生産と乗用車への塗料適用に基づいて作成したデータ分析である。