チャージエアクーラー(インタークーラー):冷やせば空気を押し込める 日産GT-RやスバルWRXは空冷式、400Rは水冷式[内燃機関超基礎講座]

スバルWRXのチャージエアクーラー(インタークーラー)は空冷式だ
「インタークーラー」と呼ぶ方が一般的だが、欧州ではチャージエアクーラー(Charge Air Cooler )の名称の方がなじみやすい。今回のテーマはチャージエアクーラー(インタークーラー)だ。

【モーターファン・イラストレーテッド Vol.136より転載】

スバルWRX STI Final editionが搭載するEJ20型水平対向4気筒ターボのインタークーラーは空冷式で、エンジン上部に配置されている

インタークーラーと呼ぶほうが日本では一般的だ。エンジン設計者諸氏はチャージクーラーと呼ぶことが多いようだ。「エンジンが吸い込む空気を冷やす」ための道具である。なぜ空気を冷やすのか。空気を構成している酸素、窒素、アルゴンは温度が高ければ振動が激しい。この状態では分子同士がぶつかり合い、同じ分子数でも容積が増える。逆に、冷やせば分子は大人しくなり、隣同士仲良く並ぶようになる。つまり密度が高くなる。ターボチャージャーで断熱圧縮された高温の空気をそのままエンジンに吸い込むと、圧縮行程で温度がさらに上がり、ノッキングを引き起こす原因になる。だから冷やして密度を高め、充てん効率を高める。そのためにインタークーラーが使われる。
ただし、走行中のクルマにとってインタークーラーは走行抵抗を増やす装備であり、置き場所や設計の工夫が必要だ。水冷インタークーラーが登場した理由はレイアウトの自由度にある。熱交換器の分野進歩が著しい。

空冷式チャージエアクーラー(インタークーラー)の例

日産GT-Rの空冷式チャージエアクーラー(インタークーラー) | ラジエーターの前面に位置し、左右バンクごとのターボチャージャーに対しインタークーラーも独立で与えられる。ちなみにGT-Rはオイルクーラーも車両前端にあり、冷却系デバイスが空力の一等地を支配している。
外気をうまく取り込む | どの位置にチャージエアクーラーを置けばもっとも空気抵抗が小さく冷却効率が高いかはシミュレーションである程度まで詰められる。しかし、ぎっしり詰まったエンジンルームでは当然、「場所取り競争」になる。

水冷式チャージエアクーラー(インタークーラー)の例

水冷式チャージエアクーラー(インタークーラー)| 吸気系の配管は、なるべく直線かつ最短で結ぶほうがいい。しかし、チャージエアクーラーの置き場所が制限されている場合は遠回りになってしまう。そこで水冷式が登場した。水を回すポンプのエネルギー消費と効率が見合えば有力な選択肢だ。
スカイライン400Rが搭載するVR30DDTT型V6ターボは水冷式チャージエアクーラー(インタークーラー)を使う
エンジン上部に載っている箱状に見えるのがチャージエアクーラー(インタークーラー)

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