レクサスLFAのV10エンジンのクランクシャフト:1LR-GUE[内燃機関超基礎講座]

レクサスLFAは、4.8ℓV型10気筒自然吸気エンジン、1LR-GUE型を搭載していた。最高出力560ps(412kW)/8700rpm、最大トルク480Nm/6800rpm。レッドゾーン9000rpmというこのエンジンのクランクシャフトを見てみる。
TEXT:牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

モーターファン・イラストレーテッド vol.117「エンジン回転系部品大図鑑」より転載

高性能エンジンはコンサバティブ

1LR-GUE V10 SPECIFICATION
ストローク 79mm
全長 6350mm
ジャーナル径 62mm/ジャーナル幅 24mm
ピン径 45mm/ピン幅 31mm
ウェブ幅 14mm
重量 18670g

 レクサスLFAだけに搭載されたトヨタ初のV10エンジン。高回転高出力を売りにするエンジンには、奇をてらった設計は不向きである。したがって、このクランクシャフトは古典的な外観をしている。ひとつのクランクピンで左右バンクのピストンをひとつずつ抱く。愛知製鋼によれば「とても苦労しコストもかかった完全バランスのクランクシャフト」とのことだ。搭載車両が高価だけにNV性能への配慮は必須であり、エンジン回転の上昇側だけでなく「落ち」側にも配慮している。これより気筒数の多いクランクシャフトはセンチュリー用のV12だが、こうしたマルチシリンダーエンジンは一度廃止するとノウハウが途絶えてしまう。生産継続を望みたいエンジンだった。

クランクケース。低重心化と同時にオイルの撹拌抵抗を減らすため、レーシングエンジンでは一般的なドライサンプを採用。各気筒独立構造は、剛性確保とクランク系の損失低減につながる。
アルミ鍛造軽量ピストンはヤマハ製。シリンダーボアの溶射やブロックの鋳物製造は、トヨタ本社内にあるF1エンジンと同じ設備で行なう。オイル冷却ジェットは当初1本だったが、熱的に厳しかったため、3本に増やした。吸気バルブ、排気バルブともにチタン合金鍛造の中実。バルブスプリングは高強度材。回転数はレーシングエンジン並みだが、寿命は量産レベルを確保しなければならない。運動部品の慣性マスを下げることでスプリングへの負担軽減を図った。

キーワードで検索する

著者プロフィール

牧野 茂雄 近影

牧野 茂雄

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産…