シリンダーブロック:エンジンのパワーを支える、まさに屋台骨[内燃機関超基礎講座]

「腰下」を象徴するエンジンの基本骨格。ピストンやクランクがサスペンションなら、シリンダーはボディ。ボディがダメなら何をどうやってもクルマはよくならない。

シリンダーブロックの材料として一般的なのが、アルミ合金と鋳鉄。かつてのブロックは鋳鉄が大半を占めていたが、近年は車両重量を抑えることなどからアルミ合金製へのシフトが進む。ただし、鋳鉄がかつての材料かと言われればまったくそんなことはなく、高い筒内圧に耐える構造のためにアルミの肉厚を増していくならむしろ、鋳鉄で薄く作ったほうが軽くできることもある。

アルミの方が放熱性という面では有利だが、軽量化以上に重要なのがブロック剛性。特に昨今の高圧縮比エンジンやターボエンジンでは、パワーを上げようとするとブロック剛性の高低がカギとなってくる。また、必要以上の軽量化を図ると音振にも不利となるため、軽さと剛性の妥協点をどこに置くかが、シリンダー設計のポイントとなる。構造上では、高圧鋳造が可能で大量生産に向くオープンデッキと、ブロック剛性を確保しやすいクローズドデッキを、コストと搭載車両の性格によって使い分ける。

鋳鉄ブロックの例。豊田自動織機が設計/生産する1VD-FTVのブロック材は鋳鉄を用いる。ねずみ鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄の中間的な性質(350~500MPaの引っ張り強度を確保)を持つバーミキュラ黒鉛鋳鉄を材料として用いることで、高い筒内圧に耐えつつも薄肉化を実現、アルミ合金製に比肩し得る軽量化を果たしている。
ウォータージャケットスペーサー:エンジンの高効率化を図るために、冷却損失は極力抑えたい。そこで、冷やしたいところと熱を逃がしたくないところをコントロールするべく、ブロックの水路内に収めて水流と温度を調整するのがウォータージャケットスペーサー。基本となる水路は作っておいて、スペーサーによって仕様違いで細かく調整することができる。
シリンダーヘッドボルト:ヘッドの固定方法にはボルトとスタッド+ナットがある。ボルトはねじの噛み込み部にストレスがかかるのに対し、スタッドボルトはナットを回したときに供回りしないだけの軸力を持てばよく、ねじ部全体に等しく引っ張り上げられるような力がかかることからブロック側の締結力管理に余裕がある。ただし作業組み付け性が落ちる。
クローズドデッキ:フォード・GT500用シリンダーブロックの例。視覚的にも、いかにも丈夫なクローズドデッキ構造。オープンデッキ構造に対してボアが固定されていることから、高い筒内圧をねらうハイパフォーマンスユニットやレーシングエンジンに用いられる。水路は、ブロックを鋳込む前に中子を用意し、成型後に崩して取り出す必要があるため、どうしても手間がかかる。
セミクローズドデッキ:スバル・EE20用シリンダーブロック。水路体積に富み冷却に優れるオープンと、強固な構造でボアをしっかり固定するクローズの中間的な性質をねらったのがセミクローズドデッキ構造。ご覧のようにボアがブリッジ状の部材で支えられているのが特徴だ。当然、オープンデッキよりも手間とコストがかかるため、プラスアルファの性能をねらいたいユニットにあえて用いられるブロック構造である。
ハーフスカート構造:シリンダーブロックにクランクシャフトを収めるには、メイン軸中心で二分割する必要がある。オイルパンをとめるブロック最下面がその二分割面と同等ならばハーフスカート、より深く裾が伸びているような構造ならディープスカート構造。後者のほうがユニット全体の剛性を高く保つことができる。

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