トヨタ新型クラウン搭載の6ATベース「1モーターハイブリッドトランスアクスル」

トヨタグループ内でe-アクスル系を担当するブルーイーネクサスの新作は、近く登場の新型クラウンに搭載される1モーター式のハイブリッドシステムである。前軸用の横置きATにモーターを合体させる省スペース設計が見所だ。

TEXT&PHOTO:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)
モーターファン・イラストレーテッド vol.191より一部転載
F6G45hと命名された電気モーター内蔵6速ATは、ほぼすべてが新規の設計である。外形寸法を抑えるため6速AT部分も新設計である。アイシンには横置きFF用の8速ATもあるが、6速ATを選んだ理由は総合的な性能判断だという。この種のモーター内蔵ATにはトータルな開発力が要求される。
電気モーターのローターの内側には2組の湿式多板クラッチがある。ICEに近い側はICEと変速機の断続を行なうクラッチで、変速機に近い側が発進クラッチ。動作は油圧で行なう。
電気モーターのステーター(固定されている外周側)には連続した角型電線によるカセットコイルが挿入されている。ここに電流を流し電磁石として働かせる。通常、コイルの先端はステーターの長さ方向にまっすぐに伸びるが、長さ方向の寸法を増やさないよう、本機ではコイル先端が90度外側に向けられている。
搭載位置の後方(車室)側から見た様子。大きな最終減速ギヤと、その右側のオープンデフが見える。この部分は車両側の要求に応じてバリエーション展開されるだろう。LSDを組み込めるくらいのスペースがある。
電気モーターの下流にある遊星ギヤは後段がラビニヨ型。2.5セットで6速を作る。締結要素はブレーキが前段と後段に1つずつ、クラッチが合計3つ。左奥に見える凸歯のギヤがパーキングブレーキ。
インバーター部分は別の筐体。搭載車種によってこの部分はバリエーション展開されるのだろう。信号系のコネクターと冷却液系の配管が見える。この上側にさらにもう一段、別のユニットが載ることが、右ページのクラウンのスケルトン写真からは確認できる。
カットした中に見えているものが電動油圧ポンプ。
ICEと変速機を横起きとし後方排気で搭載する新型クラウン。ステアリング系はこのパワートレーンの後方に配置される。FF車の多くが使う「後ろ引き」の配置だ。ストラットのトップマウント部分からボンネット高が想像できる。当然、セダン系への搭載も可能だろう。(PHOTO:TOYOTA)

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著者プロフィール

牧野 茂雄 近影

牧野 茂雄

1958年東京生まれ。新聞記者、雑誌編集長を経てフリーに。技術解説から企業経営、行政まで幅広く自動車産…