プレチャンバーとは何か:ストイキとリーン、ふたつのタイプで効率アップを狙うホンダ

通常のエンジンにそのまま副室を加えるパッシプタイプは、数年先の市販車への搭載を目指す。副室にも独立したインジェクターを持つアクティブタイプは、その先のスーパーリーンバーンを視野に入れた性能が目標だ。2段構えの戦略で、ホンダは熱効率のさらなる向上を狙っている。
TEXT:世良耕太(Kota SERA) PHOTO:MFi FIGURE:HONDA

モーターファン・イラストレーテッド vol.150「電気に勝つ」より一部転載

パッシブ・プレチャンバー燃焼


副室内で主室と同じA/Fの混合気に点火し、強力なジェット噴流によって主室の混合気を急速燃焼させるのが、ストイキ副室ジェット燃焼(パッシブ・プレチャンバー)。ジェット燃焼がピストン冠面に触れると冷却損失に繋がるので、噴流を避ける(かつ高い容積比を確保するための)冠面形状となっている。SI燃焼の場合は点火プラグの電極を中心に火炎が広がるのに対し、副室ジェット燃焼は瞬間的に燃える。

アクティブ・プレチャンバー燃焼


リーン副室ジェット燃焼は、全体を極めてリーンなA/Fにしつつ、着火に必要なA/Fを点火プラグまわりに形成するため、副室にも専用のインジェクターを設けている。ジェット噴流によって急速燃焼させるのは、ストイキ副室ジェット燃焼と同じ。

上のグラフは、急速燃焼によって火炎伝播リーン燃焼よりも主燃焼期間が短くなっていることを示している。下のグラフの縦軸は燃焼変動率を示しており、A/F35までは燃焼が安定していることを示している。
燃焼期間を示しているのが上のグラフ。副室ジェット燃焼はSI燃焼の半分以下で燃焼期間が終了している。言い換えれば、燃焼速度は倍以上。下のグラフの縦軸は燃料質量の50%が燃焼したときのクランク角(MFB 50=Mass Fraction of Burned fuel 50%)を示している。副室ジェット燃焼はSI燃焼よりも早いタイミングで燃焼が終了しており、ノッキング低減効果が高い。かつ、高負荷側ほど効果が高いことを示している。
正味熱効率を示したグラフ。破線はロングストローク、高タンブル、強力点火などの技術を積み重ね、35%の高EGR率で正味熱効率45.2%を達成したエンジンのグラフ。リーン副室ジェット燃焼は最大正味熱効率47.2%を達成。最大熱効率を達成する負荷条件以外の領域でも、効率が向上している。
副室と主室のA/Fを示すグラフ。小容積の副室でごくわずかではあるがNOxが発生するため、その処理(酸素過剰な環境のため三元触媒は使えない)が課題となる。
副室ジェット燃焼と並行して水噴射システムも研究している。SIPは水蒸気層をピストン冠面に形成することで、火炎の熱がピストン冠面に逃げるのを防ぐコンセプト(冷却損失を防ぐ)。ホンダで研究しているのは、気化潜熱によって筒内温度を下げ、ノッキング性能を上げるコンセプト。ガス比熱を(EGRに比べて)上げる効果もある。主に高回転・高負荷領域で用い、従来は排気系保護のためにトルクを落としていた領域を縮小する狙い。


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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…