商用車業界においても、ゼロエミッションドライブへの転換が始まっている。バッテリー電気駆動は将来の主要な技術となる。ただし、これらのBEV(バッテリー式電気自動車)が標準となるまでには、あと数年かかるだろう。現在MANでは、トラック部門では2030年には電気トラックが流通用途で60%、長距離輸送で40%のシェアになると予想している。現在の商用車業界は電動化の端緒についただけでしかなく、寿命を迎えたバッテリーは約10~15年で途方もない量に達する。
そこでMANでは、貴重なバッテリーを二次用途で活用することで、資源を節約する戦略の開発に既に取り組んでいる。車両が搭載しているバッテリーの寿命の分析から、それは始まる。ここでの焦点は、バッテリーの負荷を最小限に抑えるために、車両の運転、充電、それに使用について、顧客をトレーニングすることにある。これによりバッテリーの耐用年数を大幅に延ばすことができる。個々のモジュールが機能しなくなったなど、使用中にバッテリーパックの一部に欠陥が生じた場合、最初の措置としてバッテリーの修理が実施される。その後、バッテリーは車両で再び使用される。
車両での使用後にMANに返却されたバッテリーは集中的に分析される。バッテリーパックがいわゆるトラクションバッテリーとして使用できなくなった場合、それらは二次アプリケーションに転送される。現在、これには3つのオプションが存在している。工場での修理を経て再び車両で使用される場合、それと2回目のバッテリーライフを迎える場合(太陽光発電や風力発電設備のストレージとして使用される)、そして最後に電池原料のリサイクルに回される場合、である。
MANは現在、様々なパートナー企業やカッセル大学と実際のプロジェクトに取り組んでおり、使用済みのトラック用バッテリーが定置型蓄電システムに適しているかどうかを評価している。この目的のために、パックあたりのエネルギー量が18.6kWhの約120個のトラック用バッテリーパックが、蓄電システムメーカーに引き渡された。このバッテリーパックは、オーストリアにおいて2018年から3年間続けられたBEVトラックによる実証実験で使用されたものである。
現在のプロジェクトでは、工業企業向けのエネルギー貯蔵システムに焦点を当てている。ピークシェービング=充電ピークのバランスを取るためのシステムでの使用を意図している。ここではセカンドライフストレージシステムの技術要件とビジネス要件を評価している。特に、安全性、電池性能、電池残量などの知見を得ることを目的としている。さらにMANが市販した最初のBEV都市バスである「ライオンズ シティ E」シリーズのバッテリーを二次使用したストレージシステムを定義することが計画されている。
リサイクルはバッテリーが二次使用の寿命を迎えた後、あるいは車両の使用や事故によりバッテリーがストレージ用途に適さなくなった場合に実施される。MANが表明した目標は、バッテリー原材料のクローズドサイクルを達成することである。パートナー企業により回収されたニッケル、マンガン、コバルト、リチウムなどの原材料を、バッテリーの新しい生産に使用することを目標にしている。現在、電池の重量に対するリサイクル率は70%以上である。
リサイクルについては、MANは機械的プロセスとそれに続く湿式冶金処理を通じて、貴重な原材料がバッテリーから回収される。MANはVWグループのリサイクルネットワークの一部であり、ヨーロッパ全土のリサイクルパートナーと協業して行く。