「バッテリー、どうなっている?」特集を展開しています!:モーターファン・イラストレーテッド vol.198

『モーターファン・イラストレーテッド』の198号は特集「バッテリー、どうなっている?」です。バッテリーエネルギーを余さず使い切るためのテクノロジーであるBMSを主軸に、2023年現在のバッテリー最新事情を含めた内容としました。構造としての「どうなっている?」と現状把握のための「どうなっている?」のダブルミーニングです。

電気自動車:BEVにおけるキーデバイス・バッテリー。いわゆる、エンジン車における燃料タンクの役目を担うのがバッテリーなのですが、ガソリン/軽油と大きく異なるのが「回生によってエネルギー量が回復すること」「容量あたりのエネルギー密度が増え続けている」という点。そして、長く走りたい/速く走りたいというニーズに応えるためにはバッテリーの状態を上手にコントロールする必要がありますが、実はバッテリーパックという機械の正確な残量を把握する術は2023年現在のところまだなく、すべてのBEVは「推定」によってバッテリーを制御しています。その「推定」を担うのがバッテリーマネージメントシステム:BMS。『モーターファン・イラストレーテッド』の198号はこのBMSのテクノロジーを紹介する特集「バッテリー、どうなっている?」を展開してみました。

1章:イントロダクション「駆動用二次電池の残量はどうやって測る?」はBMSを理解するための基礎編として、Q&A形式のコンテンツとしました。問いかけは「BEVの航続距離はどのように伸長していったか?」「駆動用バッテリー残量を推定するキーとなるのは?」「電池性能を左右する要因にはどんなものがある?」「需要度がより増しているBMSとは何なのか?」の4つ。バッテリー状態把握技術を理解するための知識として役立つ情報をまとめています。

続くふたつのコンテンツ・バッテリーの化学/バッテリーの経済学は、2023年のバッテリー最新事情を紹介。前者は、中国勢を主に急進著しいLFP:リン酸鉄系リチウムイオンバッテリーとは何物なのかをテーマに、現在の主流であるNMC:ニッケルマンガンコバルトの三元系リチウムイオンバッテリーとはどのような得失差があるのか、そもそもさまざまな元素を極材で使い分ける理由とは、といったところまで解説しています。

後者の「バッテリーの経済学」は、いわゆる資源争奪戦のストーリーです。レアメタルとまではいかないものの、調達量には限りのあるバッテリーにとっての有効資源については、電動化を推進したい思惑が各国/各社に調達を急がせ急騰する状況。これらと距離を置くLFPはBEVにとっての普及解決策となるのか。各種を考察しました。

「2章:最新の周辺技術」では、各社のBMS最新事情を取材しました。AVLの項ではバッテリー・エミュレーター/バッテリー・テスターを紹介。電動パワートレーンの開発において、バッテリー実機では「同じシチュエーションの再現」が非常に難しいことから、エミュレーター/テスターによってこれを何度でも正確に再現することで開発の効率化に結びつけるというもの。電動パワートレーンの最大効率化を狙う開発プロセスについて、お話をうかがいました。

テキサス・インスツルメンツには、セル電圧を測るチップセットについて取材しました。パック単位となると数百にもおよぶセルの電圧管理にはシステムには多大な負荷がかかります。同社はこれをリアルタイム把握ではなく、セルモニターをあえてフリーズ状態とし、その間に同期状態での各セル情報を収集するというユニークな手法をとりました。

MFiでは何度かご紹介している日本カーリット。今回はセル/モジュール/パックそれぞれの状態での環境試験について、同社試験場にお邪魔してお話をうかがいました。さまざまな試験状態によってバッテリーの体力と特質を正確に把握、製品開発の重要なプロセスとして各社から依頼を受ける開発現場をご紹介します。

トヨタ/豊田自動織機によるバイポーラ電極式ニッケル水素電池をあらためて詳解。アクアへの搭載を皮切りに、レクサスRX、クラウンへと適用拡大が進む同形式バッテリーについて、そもそもバイポーラ電極式とはどのような構造なのか、HEVへ適用する理由、リチウムイオンバッテリーとの得失などを解説しています。

日本市場へ上陸し話題を集めるBYD。その心臓部とも言えるバッテリーパックに収められるのが、同社虎の子のブレードバッテリーです。なぜ薄くて長いのか、LFP系リチウムイオンバッテリーとした理由、どのようにして作っているのかなど、興味が尽きないこのユニークなセル(モジュール?)について、同社にお話をうかがいました。

三菱自動車工業にはPHEVシステムに載るBMSについて取材しました。アウトランダーPHEVはその名のとおりプラグインハイブリッドではありますが、同社はモーター走行領域を拡大するために、最新世代ではセル形式を含め刷新。HEVなのにもはやBEVというバッテリーの非常に難しい使い方について、勘所をエンジニアに訊きました。

日置電機にはSOH:バッテリーの健康状態を測る技術について取材しました。充電ポートにソケットを差すと、数十秒後に数十mΩのインピーダンス値を表示する開発機器について、なぜ直流のバッテリーなのにインピーダンス(交流における電気抵抗)なのか、どのようにして内部抵抗を把握しているのかなどを取材しています。中古車市場において今後重要な指標となりそうなSOH、これを正確に把握する意義を含め、考察しました。

3章:各社事例。日欧米、そして電動車市場において強い存在感を発揮する中韓勢を含め、市販BEVのバッテリースペックを紹介しています。

OEM、サプライヤーの電池調達計画。2023年現在、各社はバッテリーを巡って合従連衡を繰り返し、めまぐるしい状況となっています。本項ではBEV市場におけるキープレイヤー各社の2023年現在の動きを紹介しました。

コンテンツ 図解特集:バッテリー、どうなっている?

Chapter 1 イントロダクション
 駆動用二次電池の残量はどうやって測る?
 バッテリーの化学:電池をめぐる金属バトル「NMC対LFP」の現在
 資金力がすべてにモノを言う「バッテリー経済学」の世界

Chapter 2 最新の周辺技術
[Case 1]AVL:常に変化する電気的挙動を高精度で模擬
[Case 2]テキサス・インスツルメンツ:セルモニタの電圧を一斉に同時計測
[Case 3]日本カーリット:「そのとき!」のLiBを安全に
[Case 4]トヨタ/豊田自動織機:バイポーラ電極が生み出すインパクト
[Case 5]BYD:電池をボディと一体化する
[Case 6]三菱自動車:PHEVながらモーター航続距離を追求したシステム
[Case 7]日置電機:バッテリーの“健康度”をプラグインで客観評価

Chapter 3 各社事例
 日欧米各社のバッテリー搭載レイアウトを見る
 OEM、サプライヤーの電池調達計画

モーターファン・イラストレーテッド
Vol.198 バッテリー、どうなっている?
2023年3月15日発売
定価1760円(本体価格1600円)
ISBN:9784779647819

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Motor Fan illustrated編集部