IHI、航空機・車載システム向け超高速モーター用高磁束プラスチック磁石ローター(回転子)の開発に成功

IHIは秋田大学と共同で,航空機・自動車向け超高速モーター用高磁束プラスチック磁石ローターの試作に成功したことを発表した。本件は、IHIと秋田大学が秋田県産業技術センターの支援を受けた秋田県内の企業(宮腰精機、フルヤモールド、小林工業)と連携して取り組み、実現されたものである。

高磁束プラスチック磁石ローター(モーターの回転子)とは、溶融したプラスチックに粉末磁石を混合した複合材料を射出成形すると同時に、成形してできたプラスチック磁石をハルバッハ配列※1と同様に磁場配向※2することで磁石の利用効率を最大化し、モーターの大出力(高効率)化、小型化、軽量化を実現している。また、磁石を射出成形で製造することにより機械加工を大幅に削減し、製造時間短縮・コスト削減が期待できる。

さらに射出されたプラスチック磁石を高強度のカーボンファイバー複合材(CFRP)リングで覆うことで毎分10万回転を超えるモーター回転数に耐えうる構造が実現された。

図1 プラスチック磁石ロータ-構造
図2 超高速モータ-(適用例)

完成した試作品について、電動化システム共同研究センター※3にて特性評価が行なわれた結果、設計上の磁力が100%磁石で占められる従来の焼結磁石製ローターと同等以上の性能が得られることが確認された。この成果は、ほぼ50%をプラスチックが占める磁石で従来品と同等な出力を達成できることから、レアアースの使用量の削減にも寄与する。

※1 ハルバッハ配列:
永久磁石の特別な配置方法。一般の磁石配置では両面は同じ磁力となっているのに対し、配列の片側の磁力を増強し、反対側の磁力をほぼゼロにすることで、磁石の利用効率を最大化することが可能。

※2 磁場配向:
磁石製造の成形工程で、磁石材料に磁場をかけながら成形し材料の結晶配列方向を揃えること。それにより、成形後の磁石において特定方向の磁力を強くすることができる。今回のようにハルバッハ配列と同様に配向することは極異方性配向と呼ばれる。

※3 電動化システム共同研究センター:
秋田大学が内閣府「地方大学・地域産業創生交付金」の交付事業を受け、秋田県立大学と共同で運営する電動化システム共同研究センターを令和3年4月に設置。

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