JFEスチールの形状と接合位置を最適化する最新システム『JFEトポロジー最適化技術』をいすゞ「新型エルフ」が採用

JFEスチールの『JFEトポロジー最適化技術』が、いすゞ自動車の「新型エルフ」のトラックの乗車部分であるキャブ設計手法として採用されたことが発表された。両社は共同でキャブの構造最適化に取り組み、『JFEトポロジー最適化技術』を用いた設計により、室内空間の最大化と車体の軽量化の両立を達成した。本技術はこれまで普通乗用車や軽自動車に採用されてきたが、トラックのような商用小型貨物車への採用は今回が初となる。

『JFEトポロジー最適化技術』開発背景

自動車業界においては、地球環境への配慮からCO2排出量削減や燃費向上を目的とした車体軽量化のニーズが高まっている。しかし、一般に、部品に使用される板の厚みが薄くなると剛性や衝突強度などの性能が低下し、必要な性能を維持しつつの軽量化は容易ではない。JFEスチールは、ハイテンなどの薄くても高強度で高機能な鋼板を顧客に提供するとともに、設計手法によって自動車の性能を維持しつつ軽量化を可能とする技術開発を行っている。『JFEトポロジー最適化技術』は、そうした技術の一つで部品の形状および接合位置の最適化に貢献するものである。

最適化の適用部位(トラックのキャブ)
いすゞ「新型エルフ」

一般的に、自動車の車体は薄鋼板からなる数百もの部品を数千のスポット接合でつないで構成されており、変形時の荷重は多くの部品とスポット接合を伝達していく中で流れが複雑に変化していく。このため、剛性などの性能などに優れ軽量化が可能な部品を設計するためには設計者の経験と試行錯誤が必要で、車体の複雑な荷重伝達を考慮できる高精度な車体設計方法が求められていた。トポロジー最適化は、与えられた設計空間から、要求される性能に必要な部分を残存させ、最も効率のよいレイアウトを求めることができる解析方法。一般的なトポロジー最適化では部品単体ごとに最適化を行うため、数百もの部品の間の複雑な荷重の流れを車体構造に反映するのは困難とされる。一方で、『JFEトポロジー最適化技術』では、設計空間を車体の一部として組み込んで解析するとともに、スポット接合自体を設計空間として扱うことで、車体各部への荷重伝達を車体構造に正確に反映でき、高精度な解析が可能とされている。

最新技術を新型「エルフ」に採用

新型エルフのフルモデルチェンジに伴い、居住性を向上させるために室内空間を最大限広げる一方で、車体を軽量化するため、いすゞは『JFEトポロジー最適化技術』を採用し、両社が協業で主要骨格の新設計を実施した。新部品形状の設計および高効率接合位置の検出のためにトポロジー最適化からなるCAE技術を駆使した結果、前モデルに対し大幅な軽量化が達成された。なお、本成果については、いすゞより本年7月の自動車技術会フォーラム「車体の最新技術2023」にて発表されている。

※Computer Aided Engineeringの略で、コンピュータシミュレーションを用いた設計支援を意味する。

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