JFEスチール:超高強度薄鋼板の発明により全国発明表彰 経済産業大臣賞を受賞

【図1】モデル部品を用いた自動車衝突模擬試験
JFEスチールは今回、自動車の燃費と衝突安全性を向上する超高強度薄鋼板の発明により、令和5年度全国発明表彰※1 経済産業大臣賞を受賞したことを発表した。同社の全国発明表彰受賞はJFEスチール発足以来13回目となる。
  1. 受賞件名:
    「自動車の燃費と衝突安全性を向上する超高強度薄鋼板の発明」
  2. 受賞者:
    吉岡 真平 スチール研究所 薄板加工技術研究部 主任研究員
    小野 義彦 知的財産部 知財技術室 主任部員
    飛鷹 健太 西日本製鉄所 薄板商品技術部 自動車室 主任部員
    山口 竜介 西日本製鉄所 薄板商品技術部 自動車室 主任部員
  3. 発明の概要:
    本発明は、引張強さが1320MPa以上の超高強度でありながら耐遅れ破壊特性※2を飛躍的に高めた自動車用冷延鋼板に関するもので、冷間加工用1320/1470MPa級超高強度冷延鋼板に活用されている。
    JFEスチール独自のWQ方式※3連続焼鈍プロセスによる超急速冷却技術を駆使し、遅れ破壊に悪影響を及ぼす合金元素を低減しつつ金属組織の均一性を極限まで高めることに成功した。これにより耐遅れ破壊特性を実用可能なレベルに引き上げ、安価で広く普及している冷間プレス工法で超高強度部品が実現された。1470MPa級鋼板の場合、現在主流である980MPa級鋼板と等価の衝突性能を維持しつつ板厚を薄くできるため、約20%の軽量化が実現可能となる(図1)。本発明の鋼板は主要な骨格部品の多くに適用が可能と考えられ、今後主流となって車の燃費向上による環境負荷低減と衝突安全性の向上に寄与するものと期待されている(図2)。
【図2】本発明鋼板の適用可能部品例

※1 全国発明表彰:発明協会(会長: 内山田竹志)が主催。我が国の科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的に、多大な功績をあげた発明・考案・意匠(以下、発明等)や、その優秀性から今後大きな功績を挙げることが期待される発明等を表彰。

※2 耐遅れ破壊特性:水素に起因するプレス成形後の静的な脆性割れを発生しにくくする性質。

※3 WQ方式:水焼入れ。Water Quenchの略。

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