「より力強く、より大型で、より威圧的な」がコンセプト

2014年より開催されて以来、今年で12年目を迎えたフォーミュラEは使用するマシンのシャシー、一部コンポーネントは全チーム共通品を使用しているモータースポーツであり、GEN4はその4代目にあたるマシンだ。

過去最大サイズのGEN4。車重も950kgと歴代最重量級となる。バッテリー容量は51.25kWhで、1基のバッテリーでフルシーズンを戦うことになる。モーター出力は600kWで、4WDのため前250kW/後350kWに分配される。ブレーキは前後ともにブレーキ・バイ・ワイヤだ。

フォーミュラE CEOのジェフ・ドッズ氏は、サーキットでのお披露目前日にオンラインで開催されたメディアラウンドテーブルにて、「GEN4は100%リサイクル可能であり、20%の再生素材でできている」と話した。それに関連して、フォーミュラEは世界で初となるB Corp認証(※社会や環境に配慮した事業を行ない、米国B Labが定める基準をクリアした企業にのみ与えられる)を受けたスポーツであることも強調した。

GEN4に腰掛けるフォーミュラE CEOのジェフ・ドッズ氏。ポール・リカール・サーキットにて。

ニューマシンであるGEN4のコンセプトについて、「more muscular,larger, and more menacing(より力強く、より大型で、より威圧的な)」と表現しているとおり、マシンサイズは歴代マシンと比較して最も大きな車体となり、よりマッシブな見た目へと進化した。エアロも開催されるコースレイアウトに合わせて、新たにハイダウンフォース、ローダウンフォースの2種類から選択できるようになる。

パワートレーンは前後でモーターを搭載し、フロントはマレリが供給するFIA共通品、リヤは独自開発品が搭載可能となる。駆動方式は常時4WDが使えるようになった。600kW(約810PS)近い馬力も相まって、0-100km/hは1.8秒、0-200km/hは4.4秒を記録しており、ラップタイムも大幅な短縮が期待される。一方でトルク配分といった制御システムはオープン、つまり自由開発領域であり、ソフトの作り込みが大きなアドバンテージを産むことも予想される。

高出力パワートレーン、常時4WD、ハイ/ローのエアロキットなど高速化を実現する新技術を多数採用するが、一方でパワーステアリングの導入も決まっている。女性ドライバー参入を促進する狙いで、フィジカル面でのギャップを埋めるためと見られる。

FIAのパウロ・マルティノ氏はメディアラウンドテーブルで、GEN4マシン開発としてすでに6000km以上のテスト走行を実施していることを明かし、またポルシェ、ジャガー、ステランティス、日産、マヒンドラ、ローラ・ヤマハの6メーカーがシーズン13に参戦し、すでに実戦を意識したテストを行なっていると話した。

これまでリヤ駆動が基本だったフォーミュラEも、GEN4からは常時四輪駆動が解禁される。このようにフロントタイヤからも豪快なタイヤスモークをあげる。

広がる日系企業の参入。一方の中国は?
より魅力的な、フォーミュラEらしいレース開催を目指して

GEN4から投入されるブリヂストンタイヤ。

日系企業もフォーミュラEに続々と参画し始めている。それと関連したトピックとして、GEN4投入時にはレースで使用されるタイヤのサプライヤーが変更されることが決まっている。シーズン12までタイヤを供給してきたのはハンコックで、GEN3が投入されたシーズン9(2022-2023)から、4シーズンに渡りオフィシャルのタイヤサプライヤーであったが、シーズン13からは新たにブリヂストンへと切り替えられる。また、ポルシェ・フォーミュラE・チームのスポンサーを務める日系電子部品メーカーのTDKも、新たにフォーミュラE 東京e-Prixのタイトルパートナー、およびシーズン12のオフィシャルスポンサーにも就任するなど、より存在感を高めている。

一方で、電気自動車最高峰のレース、というと気になるのは中国の動向だ。近年、BYDをはじめ、BEVの領域ではセンセーショナルな車種や技術を展開し続けている中国BEVメーカーだが、一方で世界選手権参戦というような、大規模なモータースポーツ活動に注力するメーカーはほとんどないのが現状である。メディアラウンドテーブルでは「中国メーカーの参戦はあり得るか?」という質問も飛び出した。これに対し、ドッズ氏はBYDの1500kW急速充電技術を例に挙げつつ、市販BEVとレーシングBEVでは用途の違いがあることを述べ、マルティノ氏はFIAと中国メーカーは継続的に対話しており、今後協業の可能性もあると示唆した。

このように大きな進化を遂げたGEN4は、実戦投入に向けて着々と準備が進められている。そして、フォーミュラEというカテゴリーも今後、今以上に持続可能なモータースポーツとして大きく成長していくための取り組みを続けていく。

気になるGEN4のレースデビューはシーズン13、2026年後半を予定している。

2014〜2018年に使用されたGEN1こと、スパーク・ルノー・SRT 01E。フォーミュラE最初のマシンで、WAE社製のバッテリーシステム、ヒューランド製5速変速機を搭載。モーターは1年目のみマクラーレン・エレクトロニクス社製を、2年目以降は独自開発品が許可された。
2018〜2022年に投入されたGEN2、スパーク・SRT05e。外観、内部ともに大きな進歩を遂げた。バッテリーはマクラーレン・アプライド・テクノロジー社製の56kWhとなり、この代でレース中のマシンの乗り換えなく完走できるようになった。
2022〜2026年に投入されたGEN3。シャシーはスパーク・レーシング・テクノロジー製。バッテリーは再びWAE社製に、フロントには回生専用のモーターを搭載。シーズン11投入のEvoでは4WDやピットで30秒間急速充電できるピットブーストも導入されている。
2026年後半開催予定のシーズン13より、新型のGEN4が投入される。GEN4でもシャシーはスパーク・レーシング・テクノロジー社製であると思われる。マシンサイズは大型化され、動力性能も大幅に引き上げられた。実戦でどういった走りを見せてくれるか、楽しみだ。