アルミ合金の限界とコスワースEAA型エンジン[自動車業界60秒ブリーフィング]

シヴォレー・ヴェガのアルミ合金製シリンダーブロックは、その先進的な設計により、コスワースによるレースエンジン開発の基盤として選ばれた。このプロジェクトでコスワースが開発したエンジンは、EAA型と名付けられ、初期のテストでは270hp/8750rpmという高出力を記録した。しかし、生産が進むにつれて、シリンダーブロックの疲労破壊が問題となった。

この疲労破壊の問題は、アルミ合金製のシリンダーブロックが持つ固有の弱点を露呈する形となった。特に、シリンダーブロックの構造がウォータージャケット上部が開口したオープンデッキかつ各シリンダーボア同士が接触したサイアミーズタイプであったことが、疲労破壊を引き起こす一因とされている。

この問題に対処するため、コスワースはシリンダーブロックの設計を見直し、さらなる強化を図る必要があった。しかし、このような問題が発生したこと自体が、レースエンジンと市販車用エンジンの設計思想の違い、そしてそれぞれの用途における耐久性の要求水準の違いを如実に示していた。

このプロジェクトは、コスワースが持つレースエンジン設計のノウハウと、GMが目指す量産車用エンジンのコスト効率との間で、一定のギャップが存在したことを明らかにした。それでも、このような挑戦を通じて、両社はそれぞれの技術的な限界と可能性を探る貴重な経験を得ることとなった。

詳細を読む→「コスワース」の名を冠した最初の市販車とそのエンジン[シヴォレー・コスワース・ヴェガとEAA型]

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