内径0.6mm、世界最小サイズの流体動圧軸受「動圧ベアファイト」をNTNが開発

NTNは、流体動圧軸受としては世界最小サイズとなる内径0.6mmの「動圧ベアファイト」を開発したことを発表した。5G(第5世代移動通信システム)の普及による通信市場の拡大に伴い、高速化や高容量化が進む高機能スマートフォンやウェアラブル端末など小型モバイル機器用マイクロファンモータの静粛性の向上や長寿命化に大きく貢献する。

開発の背景

「動圧ベアファイト」は、NTN独自の精密加工技術により、焼結含油軸受にヘリングボーン型動圧溝を設け、軸受すきま全周で油膜を形成することで、軽量・コンパクトかつ高い静粛性や高速回転対応を実現した流体動圧軸受だ。近年は、EV・電動化に伴い、より高い静音性が求められる車載向けファンモータなどへの採用が拡大している。

一方、5Gの普及に伴い市場が拡大する通信機器分野においても、ゲーミングスマホと呼ばれる高機能スマートフォンやWi-Fiルータなどのモバイル機器の高速化や高容量化、さらに小型・薄型化が進んでいる。それに伴い、装置に搭載されている冷却用マイクロファンモータ向け軸受には、高速回転対応のほか、人に近い距離で使用されるケースが多いため、どのような姿勢で使用されても常に高い静粛性を維持することなどが求められている。

「動圧ベアファイト」の概要

NTNが今回開発した内径0.6mmの「動圧ベアファイト」は、ヘリングボーン型動圧溝の設計を最適化することで、小型でありながら高い油膜圧力を発生させることにより、高い静粛性と信頼性を実現している。一般的な切削加工においては、内径1mm以下の動圧溝を加工することは困難とされているが、NTNでは今回プレス成形条件も見直すことで、従来サイズ(内径1.5mm)から半分以下の内径0.6mmサイズの超小型「動圧ベアファイト」を開発することに成功した。流体動圧軸受としては世界最小サイズとなる。冷却用マイクロファンモータは、風量を上げることで耳障りな音が発生しやすくなることが課題とされているが、今回開発した「動圧ベアファイト」を使用することで高い静粛性を実現することが可能となる。

小型化従来サイズ(内径1.5mm)から1/2以上小型化(直径)
高い静粛性回転時に常に油膜形成率100%を維持(非接触で安定して回転)
高い耐久性(長寿命化)焼結含油軸受の約1.7倍* (雰囲気温度:40℃で回転させた場合) * 運転条件により変動します
左:開発品(内径φ0.6mm) 右:従来品(内径φ1.5mm)
【動圧ベアファイト】動圧ベアファイトは油膜形成率100%を維持しており、非接触で安定して回転。
【動圧溝なし】動圧溝のない軸受は油膜が一定して形成されないため、軸と頻繁に接触。

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