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開発の背景
EVは航続距離の延長を目的に省電費化が進められており、EV用ドライブシャフトにはモーターからの動力(トルク)を損なうことなくタイヤに伝えるため、トルク損失率の低減(高効率)が求められている。また、EVではパワートレインユニットがエンジンからモーターに変わることで車両から発生する音や振動が小さくなるため、静粛性向上のニーズもある。さらに、広い車内・荷室空間を確保するためのコンパクト性、モーターのレスポンスの良さを活かしたダイレクト感のある走行性能を実現する高応答性へのニーズも高まっている。
NTNはこれまでコンパクトかつ応答性に優れたしゅう動式等速ジョイントとして「EDJ」を提供しているが、今回、EV特有のニーズに応えるため「EDJ」と新開発したグリースを組み合わせることで、従来品との互換性を保ちながら静粛性や効率をさらに高めたEV用高機能モデルが開発された。
開発品の特長
1. 静粛性・低振動性 | 機構解析により各ボールと内外輪間の接触状態の微小なばらつきが走行中の振動要因であることを解明。接触状態を均一化するとともに新開発グリースの適用で摩擦抵抗を低減することにより走行中の静粛性の向上と低振動化を実現。 |
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2. 高効率 | グリース添加剤の成分を見直し、部品間の摩擦抵抗を低減。トルク伝達時の発熱を抑制し、トルク損失率を従来品比で25%削減。 |
3. コンパクト性・高応答性 | 従来品が持つボールタイプしゅう動式等速ジョイントとして世界最高水準のコンパクト性、高応答性を維持。内部部品間の円周方向ガタ量(バックラッシュ)が小さく、トルクをスムーズに伝達。 |
NTNはしゅう動式等速ジョイントとして、コンパクト性・応答性に優れる「EDJ」と、効率・低振動性に優れる「PTJ※2」をラインアップしている。これらと世界最高水準の高効率を誇る固定式等速ジョイント「CFJ※3」を組み合わせ、EVに最適なドライブシャフトとして提案し、EVの多種多様なニーズに対応していく。NTNは、今回開発した「EDJ」の高機能モデルを5月21日~23日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」に出展する。
「EDJ」の構造

ボールと内部部品の間のすき間が小さいため
応答性に優れるほか発進加速時の低振動化が可能
ドライブシャフトについて
ドライブシャフトはエンジンやモーターなどのパワートレインユニットの動力(トルク)をタイヤに伝える部品。NTNは1960年代に国内で初めてドライブシャフトの量産に成功して以来、現在も世界トップクラスの市場シェアを誇る。ドライブシャフトは2つの等速ジョイント(CVJ:Constant Velocity Joint)とそれらをつなぐシャフトで構成されている。
一般的にパワートレイン側に使われるしゅう動式等速ジョイントは軸方向にスライドが可能である一方で作動角は小さく、タイヤ側の固定式等速ジョイントは、スライドはできないが作動角が大きいという特徴がある。

しゅう動式等速ジョイントに「EDJ」を採用した
EV用ドライブシャフト