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昨日の11月5日金曜日、時事通信が「トヨタ、脱炭素化で最低評価 環境団体がランキング発表」という記事を配信しました。グリーンピースによる脱炭素化取り組みランキングの発表で、トヨタを10社中最低位としたという内容です。理由は電気自動車への移行の遅れ。
賢明なmfjpならびにMFiの読者諸兄なら一笑に付する内容ではありますが、為念、トヨタの電動化技術は世界一のレベルだと言っても過言ではないでしょう。電気自動車が市販ラインアップにないからダメ、というのは大きな視点から物事をとらえていません。トヨタには、世界に冠たるハイブリッド技術があるからです。
ハイブリッド車は電気自動車より技術的に劣るか。優劣はつけられませんが、少なくともハイブリッド車を仕立てる技術は電気自動車を仕立てるそれよりも複雑で広範であることは論を俟ちません。電気自動車のキーデバイスである二次電池においても、ハイブリッド車は頻繁に力行回生を繰り返す難しさをクリアしなければならないのです。
走行中のCO2排出量がゼロだから電気自動車は環境性能に優れている。ハイブリッド車はエンジンを載せていて、それが排ガスを吐き出しているじゃないか。それは確かですが、環境問題というものは「クルマだけ」で考えては片手落ちであり、走らせるエネルギーの創出から考えなければなりません。つまり、電気自動車のエネルギー源泉である電気はどのように生み出されているか、それに対してガソリンや軽油はどうか、という視点です。発電所で排出されるCO2の量をカウントすると——決してエコフレンドリーとは言い切れない電気自動車の姿が浮かび上がります。
ハイブリッド車がなぜ環境性能に優れているか。モーターファン・イラストレーテッド181号では日本のお家芸とも言えるハイブリッド技術について、詳しく解説しています。
Chapter 1 HEVを支える技術
ハイブリッド車のキーコンポーネントとして真っ先に頭に浮かぶのはモーターであることは間違いないですが、 そのモーターを上手にコントロールしているのがパワーエレクトロニクスという縁の下の力持ちです。 バッテリーからの直流電流をモーターで使えるように交流電流に変換するとともにモーターの回転数を自在に制御するために変換するという、 地味ながら欠くべからざるプレイヤーです。 デンソーのエンジニアに、 この技術の妙をうかがいました。
また「バイポーラ電極とは何がすばらしいのか?」といった、 古今のハイブリッド車に関する素朴な疑問について、 本誌でもおなじみの電気のスペシャリスト・東海大学の木村英樹教授に訊きました。 目から鱗、 のご回答多々ありです。
Chapter 2 日本車のハイブリッド技術
本特集のハイライト。 2021年10月現在、 市販されている各社のハイブリッド車のシステムについて理解を深めます。 そのシステムは基本的にどのような機械的配置をとっているのか、 さまざまな動作モードはどのように各部が動いているのか、 システムのキーデバイスは実際にどのような格好をしているのか、 市販車に搭載されている製品事例にはどのようなものがあるのかをわかりやすく解説しています。 トヨタのTHS II、 ホンダのe:HEV、 日産のe-POWER、 三菱のPHEVシステム、 スバルのe-BOXER、 スズキの「マイルドハイブリッド」、 マツダのM Hybridを取り上げました。
また、 章の冒頭部では「シリーズ」「パラレル」の配置、 「マイクロ」「マイルド」「フル/ストロング」の効果の区別について、 チャートを用いた理解を試みています。
Chapter 3 商用車のハイブリッド技術
ハイブリッド化を図っているのは乗用車だけではありません。 ロジスティックスを支えるトラックや公共交通機関として活躍するバスなど、 商用車においても先鋭技術が盛り込まれています。
日野自動車は小型トラックの「デュトロハイブリッド」、 大型トラックの「プロフィアハイブリッド」、 路線バスの「ブルーリボンハイブリッド」にハイブリッドテクノロジーを採用し、 市販しています。 ハイブリッド車の最大の目的である減速時の回生は、 ゴー&ストップの頻度が高い街中走行で効率的に得られる想定。 だけど大型トラックは高速道路を走り続ける使い方であり、 ハイブリッド化の恩恵は受けにくいのでは?——とされてきたこの世界に日野自動車は果敢に挑戦、 登降坂時の加減速を利用した巧みなコントロールで回生効果をねらうという技術を確立しました。 詳細を日野自動車のエンジニアに聞きます。
スズキのエネチャージとS-エネチャージの違い、 わかりますか?
現在に至る各社虎の子の技術はいかにして生まれ、 育ってきたか。 人気連載「出発点」の今回のテーマは、 奇しくも特集を補完するかのようなスズキのエネチャージ/S-エネチャージを取り上げています。 12Vのシステム電圧にこだわり、 コスト高騰を招かずシンプルな構成で、 しかも効果を確実にあげる。 制約だらけの条件下で、 いまやスズキの電動化技術のスタンダードにもなっているこのシステムはどのような特徴を持つのか。 開発に携わってきたエンジニアにこれまでとこれからをうかがいました。
CONTENTS [モーターファンイラストレーテッド vol.181] 【図解特集:ニッポンのハイブリッド】 Introduction 日野自動車 小木曽聡社長インタビュー Analysis HEV誕生の背景と現在 Basic ふたつの動力源が持つ意義 Chapter1 HEVを支える技術 ▶︎DENSO ハイブリッドシステムをよりコンパクトに ▶︎東海大学・木村英樹教授 日本のHEV技術を読み解くカギ Chapter 2 HEV方式解説 ▶︎さまざまな「ハイブリッド」という言葉を整理してみる ▶︎TOYOTA THS II ▶︎HONDA e:HEV ▶︎NISSAN e-POWER ▶︎MITSUBISHI PHEV ▶︎SUZUKI MILD HYBRID ▶︎SUBARU e-BOXER ▶︎MAZDA M HYBRID Chapter 3 商用車のハイブリッド ▶︎HINO 商用車HEVの絶対条件はふたつ Epilogue 「使い方」中心で考えればBEVがいちばん「嫌われない」