最大熱効率40%を誇るトヨタ・プリウスのエンジン[2ZR-FXE][内燃機関超基礎講座]

省燃費CO₂低排出量のアイコンともいうべきトヨタ・プリウス。4代目に搭載されるエンジンは名称こそ3代目と同じながら、さまざまな方策を用いて最大熱効率40%を達成している。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)

4代目は3代目と同様、1.8ℓ直4自然吸気エンジンを搭載する。2ZR-FXEの名称に変更はなく、13:1の圧縮比(レギュラーガソリン)も変わりない。最高出力は72kW/5200rpmで、先代比1kW減(発生回転数は同じ)。142Nmの最大トルクは同じで、発生回転数は先代の4000rpmから3600rpmに下がっている。

最大熱効率を38.5%から40.0%に向上させたのが最大のハイライトだが、主にふたつの技術により達成した。ひとつは吸気ポートの形状変更などで高タンブル化したこと。もうひとつはEGR率を高めたことだ。

4代目は3代目と同様、1.8ℓ直4自然吸気エンジンを搭載する。2ZR-FXEの名称に変更はなく、13:1の圧縮比(レギュラーガソリン)も変わりない。最高出力は72kW/5200rpmで、先代比1kW減(発生回転数は同じ)。142Nmの最大トルクは同じで、発生回転数は先代の4000rpmから3600rpmに下がっている。

最大熱効率を38.5%から40.0%に向上させたのが最大のハイライトだが、主にふたつの技術により達成した。ひとつは吸気ポートの形状変更などで高タンブル化したこと。もうひとつはEGR率を高めたことだ。

ガソリン車でEGR(吸気への排ガス再流入)を導入すると、スロットル開度が大きくなるため、ポンピングロスが小さくなって燃費改善につながる。また、原理的にはEGR率が高くなるほど燃費改善の効果は大きくなる。3代目プリウスでは最大18%だったEGR率を、4代目では最大25%まで高めた。

チャンバー内に分配通路を設け、EGRガスが各気筒により多く、かつ均等に分配される構造とした。クールドEGRは3代目から継続して採用。ノッキングが改善されるぶん点火進角できて燃焼効率が向上するのに加え、排気温度を低下させるための燃料増量が不要になる。

さらに、吸気チャンバーの構造にも手を入れた。従来は大きな容積のあるチャンバーに空気を入れ、4つの気筒の吸気圧で吸う構造だった。4代目は各気筒に均等に分配されるよう、1-2-4のトーナメント型配管を取り入れた。気筒ごとのEGR率のばらつきを極力抑えるためのアイデアである。

エンジン本体と排気熱回収器&ヒーターで分ける2系統冷却としたのは、エンジン暖機前のヒーター使用を可能にするため。暖機中でも極低流量でエンジンに水を流し(従来は完全に止めていた)、エンジンの暖機を促進すると同時にヒーターに熱を供給するようにした。

3代目プリウスでは、2代目比で排気量を300cc増量することで、高速走行時のエンジン回転数を低下させ、燃費改善効果を手に入れていた。4代目では110km/hまでエンジンを止められるようにしたという。負荷が高く、高速域が加わるWLTCが導入された場合、現行モードと同等の数字を維持するのは不可能だが、将来のWLTC導入を見込んだ開発は行なっている。

エンジン本体と排気熱回収器&ヒーターで冷却系統を分ける2系統冷却システムは、トヨタのエンジンとして初採用。ノッキングを回避するためヘッド側は冷やし、フリクションを減らすためブロック側は過度に冷やさないよう、ウォータージャケットにスペーサーを入れている。

■ 2ZR-FXE
直列4気筒DOHC
排気量:1797cc
ボア×ストローク:80.5×88.3mm
圧縮比:13.1
最高出力:72kW/5200rpm
最大トルク:142Nm/3600rpm
最大熱効率:40%

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…