1月23日(金)から2週間限定で劇場公開中
『魔法の天使クリィミーマミ 永遠のワンスモア』
2026年4月放送開始の「ぴえろ魔法少女シリーズ」の最新作『魔法姉妹ルルットリリィ』放送を記念して、1984年に発売されたオリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)『魔法の天使クリィミーマミ 永遠のワンスモア』(以下、『永遠のワンスモア』)が、1月23日(金)より2週間限定で全国30館の劇場にて絶賛公開中だ。
同作はOVA黄金期(OVAについては過去記事の「【『メガゾーン23』で読み解く1980年代バイクとアニメとオタクの文化】vol.2を参照のこと)に制作された傑作のひとつで、TVシリーズの総集編+新規製作の後日談という2部構成になっている。劇場で公開されるのは初めてのことで、また併せてHDリマスター化されたぴえろ魔法少女シリーズ5作品のTVアニメノンテロップオープニング映像と、最新作『魔法の姉妹ルルットリリィ』から「うぐいす&あずき」のアフタートーク上映される。
『魔法の天使クリィミーマミ』は女の子向けアニメとして制作されたこともあり、読者のなかに未見の方も少なくないと思う。ここで簡単に作品概要を紹介すると、1983年7月1日から1984年6月29日まで放送された本作は、1980年代前半から1990年代後半(途中の中断期間を含む)にかけて、スタジオぴえろが制作したいわゆる「魔法少女もの」だ。

【TVシリーズ・STORY】
10歳の女の子・森沢優が、ある日、妖精から期限付きで魔法のステッキを授かったことから物語が始まる。魔法によって16歳の少女に変身できるようになった優は、芸能プロダクションにスカウトされて歌手デビューし、人気アイドル「クリィミーマミ」として活躍するようになるが、幼なじみの大伴俊夫がマミの熱烈なファンになったことで、優はもうひとつの自分の姿であるマミを交えた奇妙な三角関係に悩みながら、昼間は小学生、放課後は芸能活動という二重生活に奔走する。
【永遠のワンスモア・STORY】
ファイナルコンサートを最後にクリィミーマミが引退してから2ヶ月後、優は普通の小学生として日常を過ごしていた。そんなある日、マミのカムバックの噂が流れる。マミの正体を知る優と俊夫が驚いて調べると、パルテノンプロの立花社長が極秘のうちにマミのカムバック計画「プロジェクトM」を進めていることが明らかとなった。不審に思った優と俊夫は、如月みどり、綾瀬めぐみ、スネークジョーの協力を得て「アンチ・プロジェクトM」と称してことの真相を暴くために行動を始める。立花とともにアメリカから帰国した早川愛には何か秘密があるようだが……。
【永遠のワンスモア・STAFF】
企画:布川ゆうじ
原案・構成・脚本:伊藤和典
チーフディレクター・レイアウト:小林 治
絵コンテ・演出:望月智充
キャラクターデザイン:高田明美
制作協力:亜細亜堂
制作:スタジオぴえろ
【永遠のワンスモア・CAST】
森沢 優&クリィミーマミ:太田貴子
大伴俊夫:水島 裕
綾瀬めぐみ:島津冴子
森沢哲夫:村山 明
森沢なつめ:土井美加
立花慎吾:井上和彦
ネガ:肝付兼太
ポジ:三田ゆう子
如月みどり:安西正弘
木所マネージャー:亀山助清
早川愛:松井菜桜子
【同時上映】
『魔法の天使クリィミーマミ』『魔法の妖精ペルシャ』『魔法のスターマジカルエミ』『魔法のアイドルパステルユーミ』『魔法のステージファンシーララ』TVアニメノンテロップオープニング映像
『魔法の姉妹ルルットリリィ』うぐいす&あずきのアフタートーク
【配給】
バンダイナムコフィルムワークス
バーチャルアイドルの元祖!?
1980年代の東京を舞台に”憧れの芸能界”を描いた傑作アニメ
『魔法の天使クリィミーマミ』(以下、『クリィミーマミ』)の特筆すべき点は、1983~1984年の東京を舞台に芸能界という普通の少女がリアリティを持って憧れる世界を描いたところにある。
1960~1970年代に人気を博した『東映魔女っ子シリーズ』や、『クリィミーマミ』の前年に葦プロダクションが制作した『魔法のプリンセス ミンキーモモ』などが、明確な時代設定をせずに、外国、あるいは日本を舞台としながらも、どこか無国籍風だったのとは対照的だ。
そして、それまでの魔法少女のように魔法は万能ではなく、主人公は「人助け」のような魔法で善行を積むこともない。優が魔法を使うのは基本的に自分のためで、その魔法もマミに変身する以外ほとんど使っていない。物語はヒロインの魔法を使った日常体験にスポットを当てており、優・マミ・俊夫の歪な三角関係や魔法の存在を隠して芸能活動と日常生活を両立させようとして苦労する「魔法の力を得たことによって生じるジレンマ」をテーマにしている。
こうしたテーマ性が現代の価値観とよくマッチしており、演出もオシャレでポップ、モダンなもので「魔法少女もの」としては革新的だった。
また、作風から『クリィミーマミ』はファンタジーに分類される作品でありながら、リアル志向が極めて強く、なかでも強いこだわりを見せていたのが、歌と東京の街並みを丁寧に描いたことにある。
ヒロインがアイドル歌手である以上、歌や曲にこだわるのは当然のことで、演じる声優が主題歌や劇中歌を歌うのは必然であると考える人が多いかもしれないが、当時のアニメ作品では、声優と歌手は別人ということがほとんどであった。
しかし、本作ではヒロイン役に新人アイドル歌手(当時)の太田貴子氏を抜擢したことで、演技と歌唱とで声が違うという、それまでの作品ではありがちな問題が起こらなかったことが、アニメファンの間で驚きを持って迎えられた。
同様の試みは、ほぼ同時期(1982年10月~1983年6月)に放映された『超時空要塞マクロス』でも試みられているが、こちらは近未来を舞台にしたSF作品ということもあり、楽曲のクオリティでは同等だったとしても、現実世界とのシンクロによるリアリティ、同時代性という点では『クリィミーマミ』のほうが優れており、筆者はこれを高く評価したい。
優れた音楽性だけでなく、高田明美氏の魅力的なキャラクターデザインと相まって、『クリィミーマミ』は藤崎詩織(『ときめきメモリアル』)、初音ミク、『ラブライブ』(この場合は声優のアイドル活動もあるので2.5次元か)などへと続く、現在で言うところのバーチャルアイドルの奔りとなった。
もともと少女向けアニメとして企画された本作ではあるが、結果的に「大きなお友達」をも惹きつけることになり、放送終了後もOVAが多数制作されることになるのである(そもそも「小さなお友達」のお小遣いでは高額なOVAは、なかなか手が出なかったハズだ)。
『クリィミーマミ』制作に用いられた実証主義は『ルパン三世』譲り?
チーフディレクターの小林 治氏はAプロダクション出身のアニメーター
『クリィミーマミ』のもうひとつの特徴が、物語の舞台となる1983~1984年のリアルな東京の描写である。優の住む「くりみヶ丘」は国立市がモチーフとされ、マミと俊夫が初めて会話した場所であり、物語でしばしば登場する新宿中央公園、「東京競馬場」がモデルの「セントラル競馬場」、「中野サンプラザ」がモデルの「亜細亜サンプラザ」、NPB歌謡祭が催された日本武道館など、作品内で地名が明らかにされずとも、当時の東京を知る人なら「あそこだ!」とすぐに場所がわかることだろう。おそらく、制作スタッフは作画するにあたって入念なロケハンを行ったものと推察される。

このように『クリィミーマミ』が東京という街の描写に並々ならぬこだわりを見せたのは、チーフディレクターの小林治氏が、現代社会に魔法というファンタジーを違和感なく巧みに溶け込ませるのに手法として、ストーリーが展開される場所や登場するガジェットをすべて実在するものから選ぶことで作品にリアリティを与える「実証主義」を採ったからだ。

アニメに実証主義を取り入れた嚆矢となったのは、1972年に放送された『ルパン三世(Part1)』であることはあまりにも有名だが、この作品に小林氏は制作を請け負ったAプロダクション(現・シンエイ動画)の原画マンとして参加している。おそらく、彼はこのときに演出を手掛けた大隅正秋(現・おおすみ正秋)氏や作画監督を務めた故・大塚康生氏から作品にリアリティを与える手法として実証主義の有効性を学んだのだろう。
『クリィミーマミ』の制作協力としてクレジットされる亜細亜堂は、小林氏が芝山 努氏や山田みちしろ氏らとともに、1978年にAプロダクションがシンエイ動画に改組されるタイミングで独立・創立したアニメスタジオである。すなわち、Aプロの強い影響を受けたスタジオでもあったわけだ。こうしたいきさつもあって『クリィミーマミ』の制作に際して、小林氏はチーフディレクターの立場から全編にわたって実証主義を貫いたのだろう。事実、本作では彼の薫陶を受けた新人演出家(当時)の望月智充氏とともに、実証主義に裏付けられたリアルな日常描写と工夫されたカメラワークがアニメファンの間で注目されることになる。
シトロエン、メルセデス・ベンツ、BMW……
実証主義に基づき1980年代の名車の数々が『クリィミーマミ』に登場!
『クリィミーマミ』で貫かれた実証主義は、東京という場所だけではなく物語を彩るガジェットにも生かされている。自動車は現代劇において重要なガジェットとなるが、本作でも物語にリアリティを与えるため、実在する車種が多数登場する。

もちろん、ヒロインの優&マミは免許が取得できる年齢ではないため、クルマを運転する描写はないのだが(その代わりに父・哲夫のオモチャである動力付きのローラースケート牽引用の「モータースティック」を愛用。言うまでもなく公道での使用は禁止されている)、ヒロインの周りのレギュラーキャラクターたち、つまるところ優やマミを取り巻くオトナたちは年齢や立場相応のクルマやバイクに乗っている。


優の実家であり、クレープ店を営む森沢哲夫・なつめ夫妻はキッチンカー兼自家用車としてシトロエンH(アッシュ)タイプに乗っているほか、パルテノンプロ社長の立花はメルセデス・ベンツ・ミディアムクラス(W123型)、マミのライバルであるめぐみは当時デビュー間もないBMW3シリーズ(E30型)、マネージャーの木所隼人の愛車はVWゴルフI、一流会員制社交クラブのハイソサエティークラブ代表である兵藤進ノ介はロールスロイス・ファントムVIを使用していた。

ほかにもワンカットのみ登場する車種にも実証主義が生かされており、ロケ車には初代日産シビリアン、パトカーには「ブタ目」の愛称を持つ3代目トヨタ・コロナマークII、第11話「パパは中年ライダー」で父・哲夫が家出時に使用したヤマハ・ボビィ80が登場するほか、第12話「スタジオは大停電」ではマミはポルシェ928Sのコマーシャル撮影を行っていた。

また、街中を行き来するモブ車両としては、初代ホンダ・シティや初代スバル・レックス、シトロエンDSなど、登場する多くのクルマにモチーフとなった実車が存在する。

例外はパルテノンプロ所有のステージカーでフォルムは初代トヨタ・タウンエースに似ているものの(カットによって印象はだいぶ異なるが)、車体サイズはマイクロバス並みでおまけに左ハンドルだ。おそらく、このクルマはオモチャとしての商品化を考慮したオリジナルデザインだと思われる。

言うまでもなく、自動車は映像作品にとってキャラクターの性格や趣味趣向、経済状況や立場などを映し出すだけでなく、クルマの運転の仕方を通じて登場人物の喜怒哀楽の表現が可能な重要な小道具となる。ところが、わが国で制作された実写作品はスタッフのクルマに対する理解が薄いのか、車種の選択ひとつとってもピントがボケている作品が多い。

一方で、アニメは『ルパン三世』という先例があったおかげなのか、クルマやバイクの使い方がじつに上手く、多くの場合、実写作品のそれを上回っている。もちろん『クリィミーマミ』もその例外ではなく、キャラクターごとのチョイスは完璧で言うことがない。

加えて、『クリィミーマミ』ではクルマをただ登場させるだけではなく、その描写や動きも素晴らしかった。第8話「渚のミラクルデュエット」では、ステージカーとシトロエンHタイプが緻密な作画で『ルパン三世 カリオストロの城』ばりのカーチェイスを見せるほか、第19話「マミの一番長い日」では軽飛行機、新幹線、ステージカー、遊覧船、ロープウェイ、ケーブルカー、ロマンスカー、ヘリを用いた陸・水・空によるロードムービーとなっている。

これはアクションシーンではないが、第50話「マミがいなくなる」では、立花が運転し、マミと木所が同乗するメルセデスを直上からまずは写し出し、斜め前上方、前方、左サイドからのアップ、左サイドの引き、斜め後上方、後方と断続的に変化するカメラワークが秀逸だ。走行する車両を異なるカメラアングルでシームレスに撮影することは至難の技であり、動く絵を連続で見せるアニメならではの演出と言える。

だが、同時にこうした演出は制作現場への負担が大きく、原画・動画スタッフに高い技術を要求する上、大変な労力が必要となる(このシーンは『永遠のワンスモア』でも使用されている)。
これらの描写はストーリーに直接影響するものではないが、クルマを介して作品に魅力をプラスすることは「魔法少女もの」としてはユニークな試みだった。


スターアニメーターの結城信輝氏ときくちみちたか(現:朝宮騎亜)氏が作画
アニメ史に残る『永遠のワンスモア』の傑作カーチェイス!
こうしたクルマの魅力を活かした演出は、TVシリーズの後日談である『永遠のワンスモア』にも踏襲されている。その中でも本作の見どころのひとつになっているのが、後日談パートで2分近くにわたって繰り広げられる立花のメルセデスとめぐみのBMWのスピード感あふれるカーチェイスだ。

このカーアクションは立花と愛の乗るメルセデスをめぐみと木所が乗るBMWが尾行したことから始まる。アクセルを踏み込み加速する立花のクルマにめぐみも離されまいと猛追。2台は新宿から外苑外周路を抜け、4車線の大通りを初代スズキ・アルト(?)や6代目ダイハツ・ハイゼットバン 、大型トラックをかわしながら都心を爆走する。

最終的にBMWが工事現場に突っ込み、道路に空いた大穴に落っこちたことで2台の追いかけっこは終焉を迎えた。立花のメルセデスとともにTVシリーズから酷使され続けてきためぐみの愛車のあっけない最後であった。

このシーンを作画したのは、他のカット(優がベッドに寝転がって俊夫と話をするシーンなど)を担当することになった北久保弘之氏の代役として結城信輝氏ときくちみちたか(菊池通隆)氏が請け負っている。きくち氏はその後、麻宮騎亜名義で『彼女のカレラ』などの自動車漫画を発表するポルシェフリークにして大のクルマ好きでもある。
ふたりの作業分担がどのようなものだったかは、本人に直接聞かないとわからないが、両氏とも日常芝居からメカアクションまでこなす実力派アニメーターである。どちらがアクションを描いたとしても不思議はない。

現在の麻宮(菊池)氏が描くキャラクターは鼻筋の通ったスタイリッシュな絵柄に特徴があるが、1980年代当時は親交のあった田村英樹氏の影響を受けたと思しき、丸みを帯びた可憐なタッチだったので、すぐに彼が作画に関わっていることがわかるだろう。
ほかにも目立つ活躍こそないものの『永遠のワンスモア』には珍しいクルマが数多く描かれている。アメリカから帰国した立花を空港まで迎えにきた番組ディレクター・星井守が乗っていたクルマは、当時でもすでに見かける機会が少なくなっていた「ダルマ」の愛称を持つ2代目トヨペット・コロナだった。

また、空港や地下駐車場のシーンでは、背景になぜかサーブが度々登場する。そのほとんどが900であったが、立花と愛が下車した駐車場には、VWタイプIIなどに混じって珍しいサーブ96の中期型のボディサイドが大写しで登場する。

この頃は「女子大生が乗りたいクルマ」としてサーブがにわかに脚光を浴びていたが、その中には旧車の96は含まれていなかったハズだ。ひょっとして制作スタッフの中に熱烈なサーブファンがいたのだろうか?

日本でクレープをメジャーなスイーツに押し上げた?
クレープの移動販売=シトロエンHモデルのイメージは『クリィミーマミ』
さて、最後にシリーズ全編を通じて活躍する森沢家のシトロエン・Hタイプについても紹介しよう。
『宇宙船サジタリウス』のラザニア、『美味しんぼ』の魯山人風すき焼きと並び、『クリィミーマミ』のクレープは、アニメがきっかけで日本でメジャーとなった食べ物でもある。果物や生クリーム、アイスクリームなどを包んだ日本式のクレープが登場するのは1976年のことだが、その頃このスイーツが販売されていたのは、原宿などの都心の若者が集うエリアに限定されていた。それをヒロインの実家がクレープ店ということで、オンエアを通じて全国区に広めたのは本作の功績といえるだろう。そして、Hタイプがクレープの移動販売と切っても切れないイメージを人々に与えたのも『クリィミーマミ』であった。

Caffe la Macchina
住所:〒195-0072 東京都町田市金井2丁目36-19
電話番号: 080-1171-1764
営業時間:13:00~17:00(L.O 16:45)
定休日: 日・月・火
この作品の登場以降、同車のキッチンカーを用いた移動販売のクレープ店は珍しい存在ではなくなった。現在、東京都町田市で美味しいクレープを提供する『Caffe la Macchina(カフェ・ラ・マッキナ)』も、そのようなHタイプをキッチンカーとして使用するクレープ店のひとつだ。
同店代表の草薙紀明氏に話を聞くと「子どもの頃に『クリィミーマミ』を見た記憶があります。2011年にクレープ店を始めたときに『クレープ店と言えばこのクルマ』というイメージを持つお客様が多いことからHタイプで開業しました」と語る。そのイメージとは『クリィミーマミ』であることは言うまでもない。

ただし、TVシリーズ第8話でも描写があった通り、このクルマにはエアコンやクーラーなどといった気の利いた快適装備はついていない。劇中でなつめは最新型のステージカーとバトルを繰り広げていたが、最高出力は45~58ps、左ハンドル&3速MTで視界も狭く、パワーステアリングもなく、スピードが出るクルマではないので、現実にはあのような走りは無理だろう。
しかし、草薙氏によると「快適装備のない古いクルマなので運転は疲れますが、ラゲッジルームが広いので調理作業には便利」だそうだ。また、『クリィミーマミ』で気づいたクレープ店=Hタイプとのイメージは、オンエアから40年余りが経過した現在でも色濃く残っているようで「走る店舗兼イメージリーダー」として重宝しているようだ。

「ピノピノ、あと少し待って、お願い!」
上映終了のタイムリミット迫る!劇場で観るならお早めに!
今回はおそらくアニメ専門誌でも前例がないであろう、クルマをテーマとして『クリィミーマミ』を語ってみたが、じつのところこの作品は自動車に興味のない人でも楽しめる……というか、ファンのほとんどは劇中に登場する車種に興味も関心もないのかもしれない。ただし、制作スタッフが作品の完成度を高めるため、ガジェットに過ぎない自動車にも神経を注いでいたことに、ファンなら心に留めておいても良いだろう。
モーターファン.jpの読者の多くが中年男性ということもあり、この作品を未見の人が多いかもしれない。これは本放送当時、関東地区では『クリィミーマミ』の裏番組が『装甲騎兵ボトムズ』であったことの影響とも考えられる。当時の男の子はだいたいこちらを見ていたからだ(筆者はもちろんビデオで録画して両方とも見ていた)。
しかし、この作品は演出・脚本・作画・動きのいずれもが傑作の名にふさわしい完成度を誇っている。すでにオンエアから40年以上という時間が経過しているが、その輝きにいっぺんの曇りも見せてはいない。加えて言えば、ひとりの少女の目線で、1983~1984年当時のリアルな東京を空気感込みで丁寧に描写したという点では、日本が豊かで活気にあふれていた時代の記録映像としての価値があるとも言えるだろう。

少女向けアニメというカテゴリーにとらわれて、本作を見ないまま一生を終えるのはじつにもったいない話だ。ぶっちゃけて言えば、『クリィミーマミ』を含む「ぴえろ魔法少女シリーズ」を見ないことで、人生の3割くらいは損をしている。
現在、劇場で限定公開されている『永遠のワンスモア』は、TVシリーズの総集編+後日談という2部構成なので、この作品のファンだけでなく初見の人が『クリィミーマミ』という作品に触れるのに適している。本作を見たあとであらためて全52話のTVシリーズを見ても良いし(Blu-rayやDVDがAmazonなどで購入できるほか、各種配信サービスで視聴可能だ)、さらに続きが気になる人は中学生となった優の姿が見られる続編OVAの『魔法の天使クリィミーマミ ロンググッドバイ』を視聴することもオススメだ。
いずれにしてもOVA作品が劇場にかかることは稀で、この機会を逃すと『永遠のワンスモア』を大スクリーンで見られる機会は2度とないかもしれない。『クリィミーマミ』のファンはもちろんのこと、子どもの頃に本作を見ていた人も、未見の人も、ぜひ早いうちに劇場に足を運んでほしい。2月5日の上映終了までの残り時間はあとわずか。1984年6月30日のマミのファイナルコンサートと同様に、タイムリミットは刻々と迫っているのだから。

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