1980年台から日本でも人気のEURO CUSTOM
空冷VWベースのCal Lookは現在でも多くのファンに愛され続ける
2026年5月24日(日)に東京都江東区にある青海駐車場で開催されたアメリカン・カスタムカルチャーの祭典である『MOONEYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)の4回目のリポートは、欧州車ベースのEURO CUSTOM (ユーロ・カスタム)を紹介する。

このジャンルで古くから人気なのが、California Lookerの略称であるCal Look (キャル・ルック)で、1960年代後半にカリフォルニア州オレンジ郡で生まれたカスタムスタイルだ。もともとは空冷VWを対象としていたが、安価な中古車の減少により、現在のアメリカではVWラビット(ゴルフ)やBMWミニ、フィアット500などのコンパクトカーがベース車に選ばれることもあるようだ。

Cal Lookの定番のスタイルというと、車体を黄色やオレンジ、ターコイズ、イエロー、ピンクなどの明るいカラーでリペイントを施し、ローダウンした足まわりに社外ホイールを組み込み、バンパーやサイドトリムを交換または取り外して、メッキパーツでドレスアップしつつ、よりスッキリした外観に仕上げるカスタムだ。

このカスタムの発祥は、ギャングや犯罪行為と結び付けられることの多いLOWRIDER(ローライダー)に馴染めなかったチカーノ(メキシコ系)の若者たちだったが、人種とカスタムコミュニティが密接に関わるアメリカでは大変珍しく、西海岸流の明るく、開放的で、健全なイメージは、白人やアジア系の若者をも夢中にさせ、人種の垣根を越えて多くの人々から支持されるようになった。

かつては日本でもCal Lookの人気が高く、1980年代中盤~1990年代初頭にかけて隆盛を極めた。その勢いはすさまじく、1987年3月に大井競馬場で開催された第1回SCNではエントリーの過半数以上を空冷VWベースのCal Lookが占めたほどだ。その頃に比べれば、その勢いはすっかり鳴りを潜めているが、現在でも根強いファンは少なくなくSCNではそれなりに多くのマシンがエントリーしている。

日本のシャコタン&ツライチ文化が海を渡り
アメリカで発展して近年逆輸入されたSTANCE系
SCNではCal Look=EURO CUSTOMという時代が長らく続いていたが、最近では車高を限界まで下げ、ホイールとフェンダーの隙間をオーナーの求める理想へと詰めたSTANCE(スタンス)系が人気を集めている。

そのルーツはVIPカーや族車などのシャコタン&ツライチに代表される日本のモーターカルチャーが、2001年の映画『ワイルド・スピード(原題:The Fast & Furious)』のヒットにより、アメリカで紹介されたことがきっかけで、HOTROD (ホットロッド )やLOW RIDER(ローライダー )などの現地のカスタムカルチャーと融合。足まわりに主眼を置いた「Stance」(立ち姿・構え)と呼ばれるカスタムジャンルが誕生した。

そして、このカスタムのファンが集うWebメディア『Stancenation (スタンスネーション)』がアメリカで成立したことが呼水となり、世界的に人気のカスタムジャンルへと急速に発展。スポコンのブームが去った日本にも逆輸入されるかたちで紹介され、現在へと至る。

STANCE系カスタムで何よりも重視されるのが足まわりのカスタマイズだ。サスペンションは車高調かエアサスか、キャンパー角をつけるのに変更するアームはアッパーかロワか、ホイールは何インチのどのような製品を組み合わせるか、フェンダー加工やオーバーフェンダーの装着の手法はどのようにするか、といったことがオーナーのこだわりとなる。

しかし、それ以外はまったくの自由で、ベースとなる車種はスポーツカーあり、セダンあり、コンパクトカーあり、ミニバンありとさまざまで、ベース車も日本車あり、欧州車あり、アメリカ車ありとまさに千差万別だ。
そのなかでも欧州車ベースのSTANCE系は一定の人気を保っており、なかでもメルセデス・ベンツやBMW、アウディ、VW、ポルシェなどのドイツ車がベースに選ばれることが多いようだ。

SCN創成期の頃から参加しているベテランのファンの中には、エアロで武装し、限界までローダウンした高年式のドイツ車のエントリーが増えていることに違和感を覚える人も少なくないと思う。かくいう筆者もその例外ではなく、ハイテク装備を満載した2000年代以降のドイツ車にほとんど興味がないこともあって、近年なぜSCNにローダウンした欧州製セダンのエントリーが増えているのか、最初は意味がわからなかった。だが、これがアメリカン・カスタムカルチャーの最新トレンドと聞いてようやく納得した次第だ。
ノーマル状態で油圧による車高調整が可能なシトロエンをカスタム!
ハイドロ・シトロエンベースのEURO CUSTOM
さて、そのようなSTANCE系のEURO CUSTOMはドイツ車ばかりではない。個性は揃いのフランス車、なかでもノーマルの状態でグランドタッチできるハイドロ・サスペンションを採用したシトロエンにもにわかに脚光が集まっている。

その先駆けとなったのが、2025年のSCNでMOON ZOOMアワードに輝いた1991年型シトロエンBXだろう。これまでもプジョーの老舗スペシャルショップ『原工房』(東京都江戸川区)の代表・原誠二さんの息子さんがたびたびプジョー406やシトロエンC4のカスタムカーで度々SCNにエントリーしていたが、フランス車の参加で目立つのはそれくらいで、フランス車のアワード受賞は大変珍しいことである。

そして、今年のSCNにはナント、1972年型シトロエンSMのEURO CUSTOMがエントリーしていたのだ。外観上の変更点はワンオフと思しきディッシュタイプの大径ホイールをはかされている程度だが、インテリアはチェーンハンドル、バケットシートへと変更した上で、シート座面やドアトリムを大胆な豹柄に張り替えていた。ブラウンメタリックのボディカラーとインテリアのマッチングは良好で、ベース車の上品さと内装のワイルドさが絶妙なバランスで成立したマシンである。

いわばこのマシンはポイントを絞ったライトカスタムではあるのだが、ベース車のチョイスが意外過ぎるというか、ハッキリ言って、良い意味で頭がおかしい(無論、褒め言葉)。

シトロエンファンならご存知のことと思うが、「世界最速のFWD車」を目指して1970年に誕生したSMは、クラシック・シトロエンの中でも最大の難物。保守管理の難しさは必然に尽くしがたいクルマなのだ。

それというのもSMに搭載されるエンジンはデリケートな性格のマセラティ製V型6気筒、サスペンションやブレーキ、パワステなどの油圧制御には、ギャビン・ライアルの冒険小説『深夜プラスワン』の中で「このクルマには、人間の体内よりも多くの血管が走っている」と表されたほどの複雑なハイドロ・ニューマチックが用いられているのだ。さらに欧州の高級車に共通する電装系の脆弱さという弱点も付き纏う。

このクルマは一般の自動車整備工場でメンテナンスを行なうことはまず不可能な話で、車検や点検、日常整備においてもシトロエンやマセラティの旧車に精通した専門工場に任せる必要がある。

だが、そのようなプロショップでも、キャブレターやインジェクションなど燃料供給系や、すべての油圧系を1回路で統括制御するハイドロ・ニューマチック、電装系の整備や修理には手間も時間も相応にかかる。当然その分、費用は高額化する。

現在は所有してはいないが、筆者もハイドロ・シトロエンの独特の乗り味が好きで、これまでにGSA、BX、初代C5の中古車を3台を乗り継いできた。手放すまで問題なく乗れたのはGSAのみで、BXはLHM (ハイドロリック・オイル)漏れとエンジン故障で買って1週間で廃車、初代C5は2年間はノントラブルだったが、車検取得を前にエアコンが故障して手放した。このクルマは10万円という破格値で買ったのでまずまずアタリだったと考えている。すなわち、筆者のハイドロ・シトロエンの勝率は1勝1敗1引き分けといったところだ。

だが、これら大衆車とは異なり、高級車のSMとなると保守管理の難易度はさらに上がる。なんといっても「トラブルの巣窟」と呼ばれた、ある意味で“伝説のクルマ”だ。そして、SMの総生産台数は1万2920台。そのうち正規輸入されたクルマは約130台で、後年並行輸入されたクルマを合わせても、日本に現存する台数は30~50台程度といわれている。

希少車だから当然中古車相場は高い。そのようなクルマを大胆にもカスタムベースにしてしまう漢気。これは褒めずにはいられない。MOON VOOMアワードの受賞も当然の結果であり、誰もが納得する結果だっただろう。

一番人気はビートルやワーゲンバスの空冷VW!『MOONEYES Street Car Nationals』はシトロエンやBMWなどヨーロッパ車も多数エントリー | Motor Fan|自動車情報のモーターファン
