会場で存在感を増した国産車ベースのDOMESTIC CUSTOM

SCNの会場となった東京都江東区の臨海副都心にある青海駐車場。

アメリカン・カスタムの世界では、初夏の訪れを告げる風物詩となっている『MOONEYES Street Car Nationals®』(以下、SCN)が、東京都江東区の臨海副都心にある青海駐車場にて、2026年5月24日(日)に催された。今回で38回目となるこのイベントは、国内最大規模のアメリカン・カスタムカルチャーの祭典である。主役はもちろんMade in USAのマシンだが、日本車をベースにしたDOMESTIC CUSTOM(ドメスティックカスタム)もエントリー台数、カスタマイズのレベルの高さでは負けておらず、年々その存在感は増してきている。

『カスタムカー』誌のアワードを受賞した日産マーチBOX。フロントフェイスを1949~1950年型フォード・カスタム風に変更し、ウッディワゴン風に仕上げた。

前回のアメリカ車のリポートでも書いたが、ボディサイズや排気量、税金などの維持費、左ハンドル、サービス体制の脆弱さなど、アメリカ車を日本で乗るにはちょっぴりハードルがあるのもまた事実だ。

「クジラ」の愛称を持つ3代目トヨタ・クラウン。その中でも珍しいステーションワゴン。

そのようなアメリカ車だが、1990年代にはGM、フォード、クライスラーは、円高・ドル安を背景に日本市場に積極的にアプローチしており、カマロやマスタング、キャデラック、トーラス、アストロ、チェロキーなどは「円高差益還元セール」と銘打ってサラリーマンでもちょっと背伸びすれば手に入れられる戦略的プライスで販売していた。安価で魅力的なマシンが手に入るとなれば、多少の使い勝手の悪さを承知でアメリカ車に手を出すユーザーもそれなりにいた。

斬新なスタイリングが当時の大衆には受け入れられず、商業的には苦戦したが、DOMESTIC CUSTOMのベース車としては昔から人気のあるモデルだ。

しかし、現在は正規輸入されるアメリカ車のラインナップが大幅に縮小している上、円安に加え、ひと頃に比べてアメリカ車も新車価格は高くなっている。新車の販売台数が少なく、ニューカーのプライスが高いとなれば、その希少性故に中古車相場も高止まりしたままとなる。

「タテグロ」の愛称で知られる3代目日産グロリア。スタイリングはポンティアック・テンペスト(GTOのベース車)の影響が強く、代用アメリカ車として人気の高い車種でもある。

10年落ち・走行距離10万kmオーバーの中古車でも100万円以下の予算で購入できるアメリカ車はほとんどなく、人気のカマロやマスタング、チャレンジャーのV8モデルともなれば、20年落ちのモデルでも300万円以下で販売されることはほとんどない。

エアサスを組み込み承継のワイヤーホイールを組み合わせた3代目ホンダ・アコードのローライダー。

かつてのように中古のアメリカ車を安く買って、カスタムして遊ぶという文化そのものが危機的な状況となっている。そうなると素材となるベース車にアメリカ車ではなく日本車を選ぶファンが多くなるのも頷ける話だ。

DOMESTIC CUSTOMの主役になりつつある
軽自動車と国産コンパクトカーベースのカスタムカー

SCNの会場でDOMESTIC CUSTOM(ドメスティック・カスタム)がますます存在感を高めつつある。もっとも、このジャンルで勢力を伸ばしているのは、1960~1980年代のクラウンやセドリック/グロリア、デボネアなどのスクェアな形状のセダンや、ハイラックスやダットラなどのMINI TRUCK(ミニトラック)などの古くからの人気車種ではない。これらの伝統的なDOMESTIC CUSTOMは現在でも熱い支持を集めてはいるものの、如何せんこちらもベース車の中古車相場がすっかり高くなってしまい、若者が気軽に手を出せる存在ではなくなってしまった。

ダッジ・バン風にフェイスコンバージョンしたBlowのサーフライダー。ベースとなったのはホンダ・バモスだ。

近年のカスタムシーンで勢力を伸ばしつつあるのが、軽自動車や国産コンパクトカーベースのカスタムカーだ。これらは新車価格が比較的リーズナブルであり、流通量の豊富なことから年式が古くなると相場はタダ同然に安くなる。

初代スズキ・ラパンをベースにピックアップに改造したBlowのハイライダー・ピックアップ。限定30台の希少なカスタムカーだ。

おまけに税金や自動車保険料なども低く抑えられ、車検やメンテナンスなどの維持費も安い。そのため、手頃に遊べるカスタムの素材として適しているということもあり、ファンを増やしている。

ハイライダー・ピックアップはモノコックボディの改造車でありながら強度計算をパスしており、もちろん車検にもそのまま通すことができる。Blowの高い技術力をうかがい知ることができる。

ファンの増加に伴って、軽自動車やコンパクトカーベースのDOMESTIC CUSTOMのレベルは年々高くなっている。転機となったのは今から20年ほど前にブームとなったスバル・サンバーベースの「ミニバス」だった。生産終了してから10年近くが経過した古い軽商用車をベースにしたこともあって、このブーム自体は良質な中古車の減少とともに短期間で終わったが、このブームがきっかけとなってフェイスを大胆に変えることによって、個性の薄い軽自動車や国産コンパクトカーをまったく別のクルマに生まれ変わらせるカスタムが注目されることになる。

チェロキーやブロンコなどの1970~1980年代のアメリカンSUVを彷彿とさせるCal’s MotorsのBeas。ベースとなったのは現行型スズキ・ジムニー。

その先駆けとなったのが、「ミニバス」のカスタムで有名になった『モデストカーズ』(神奈川県相模原市)と、同社から一部の製品開発を委託されていた『Blow』(神奈川県相模原市)であった。両社はともにホンダ・バモスをカスタムした「ポケットバン」(モチーフはライフステップバン)や「キャルペッパーバモス」などのハイクオリティなコンバージョンキットを製品化。これが人気となって今日に続く人気ジャンルとして定着することになった。

現在人気の軽ハイトワゴンを遡ると1970年代のホンダ・ライフステップバンへと辿り着く。軽自動車ベースのDOMESTIC CUSTOMの中では昔から人気の車種だ。

北米でもATVに変わる存在として指示を集める
軽トラ&軽バンベースのアゲトラも人気

LNIII360のウッディワゴン。ローダウンした足まわりにムーンディスクとホワイトリボンタイヤを組み合わせ、オリジナルのビレットグリルとウッディワゴン風のペイントでオシャレにカスタマイズしている。

さらに、近年では軽トラ&軽バンをベースにした、いわゆる「アゲトラ」も人気となっている。その名の通り、ハイリフトサスペンションを組み込んだり、フレームリフトを行って車高を上げたりと、カスタマイズを施した軽トラや軽バンのことだ。

いい感じにヤレたJA71型スズキ・ジムニー。ムーンディスクとブラックアウトされたオリジナルのヘッドランプカバーで個性を演出している。

こちらは比較的低コストで遊べるカスタムとして、2010年代に一部のファンの間で静かなブームになっていたものが、キャンプや車中泊などのコロナ禍のアウトドアブームを経て大ブームとなり、現在では正規ディーラーでショップが手掛けたコンプリートマシンが購入できるほどメジャーな存在となっている。

ワンオフ製作したヘッドランプカバーとメッキホイール、カッティングシートの装飾でカスタマイズしたスバル・サンバー。

また、最近では並行輸出された軽トラや軽バンがATV(4輪バギー)に変わる乗りものとして、アメリカ市場でも人気が高まっている。ラグジュアリー性能を高めて高額化したピックアップに比べて、日本の軽トラや軽バンは購入費や維持費が安く、小回りが利き、ATVとは違ってエアコンやカーオーディオなどの装備が充実していることが人気の秘密となっているようだ。

映画『マッドマックス』シリーズに登場しそうな世紀末感溢れるラットな雰囲気の5代目サンバー。こうしたユニークなカスタムに気軽にチャレンジできるのも軽自動車の良いところだろう。

DIYによるカスタムカルチャーが浸透している彼の地では、手に入れた軽トラや軽バンを自分好みに手を加えることが当たり前となっており、そのPOPでCOOLなスタイルが日本に逆輸入されて反映されることも珍しくはなくなっている。

ローダウンした足回りに組み合わされるホイールはムーンディスクを装着。お手軽ながらまとまりの良いWill Vi。車種選びと良い、手の入れ方と良い、オーナーのセンスが感じられる1台。

軽自動車やコンパクトカーのカスタムカーは、庶民がささやかに楽しめるクルマ趣味として今後も人気を維持して行くはずだ。

ノーマルのN-BOXながらカスタムペイントで勝負! ラット感を漂わせつつ、フレイムス(ファイヤーパターン)やラットフィンクを描くことで、誰もが目を引くマシンに変身させた。
車体に浮かぶサビはペイント表現によるものではなく、ストックのペイントを削って発生させた本物のサビだ。
ステアリングは8角形の社外品に変更。ダッシュボードやドアトリムにもエクステリアに倣ってアーティスティックな仕上がりとなる。

フォトギャラリー:
『38th SCN』にエントリーしたDOMESTIC CUSTOM

『38th SCN』にエントリーしたDOMESTIC CUSTOMはここまでの紹介したものだけではない。本文にはないエントリー車の画像はページトップの「この記事の画像をもっと見る(40枚)」から見ることができる。どんなクルマがエントリーしていたのか、タップリの画像で楽しんでほしい。

150台限定生産の日産パルサーEXEコンバーチブル。日本の工場で生産した車体をアメリカの架装業者に送り、それを送り返してもらって製造したという手の込んだ生産方法で生み出された。