Landrover Defender 130 V8 P500

マイナーチェンジで内外装が洗練

ランドローバーの本格オフローダー「ディフェンダー」が、日本導入7年目にして初の大幅改良を受けてマイナーチェンジした。ディフェンダーはホイールベースとボディサイズ違いで「90」「110」「130」の3車形あり、パワートレインも多彩だが、今回試乗したのは、そのロングホイールベース仕様の3列シートでV8モデルの「ディフェンダー130 V8 P500」である。

パワートレインは2.0リッター直4ターボガソリン、3.0リッター直6ツインターボディーゼルMHEV(マイルドハイブリッド)、4.4リッターV8ツインターボガソリンMHEV、そして5.0リッターV8スーパーチャージドガソリンの幅広い構成となる。なお2.0リッター直4ターボガソリンには105kWモーターが組み合わされたPHEV(プラグインハイブリッド)もラインナップされる。

マイナーチェンジでは内外装に大きく手が加えられた。エクステリアでは、フロントバンパーやヘッドランプの意匠変更に加え、ボンネット上の滑り止めプレート風パネルがテクスチャスタイルに改められ、サイドベントの造形もそれに合わせて刷新された。ボンネットはまるで乗ってよさそうなパネルで、不用意に乗ってしまう人が後を絶たなかったのかと勝手な想像をするが、新デザインは近年の自動車メーカーのエンブレムに象徴されるような無機質な印象で、これはこれで新しさを感じる。テールランプはフラッシュサーフェス化されてモダンな印象を強めた。

荒々しいサウンドでスポーティなV8

今回試乗した130 V8は、ラインナップの中でボディ、排気量ともに最大を誇るが、最強グレードの座は「オクタ」に譲る。あちらが最高出力635PS、最大トルク750Nmの最新4.4リッターV8ツインターボを採用するのに対し、こちらはかつての古き佳き時代を感じさせるジャガー・ランドローバー車の象徴的大排気量エンジン、5.0リッターV8スーパーチャージドを搭載する。それでも最高出力500PS/6000〜6500rpm、最大トルク610Nm/2500〜5000rpmと十分ではあるが。

130自体の最大の特徴は、その長大さである。試乗前に広報部から「後ろが長いので気をつけて」と念押しされたこともあり、乗り込む前から意識させられる。外観をひと目見た瞬間に「長い」と感じるスケール感は、このモデルならではである。

よっこいしょと運転席に乗り込んで、デジタルミラーを物理ミラーに切り替えると、はるか後方にスペアタイヤが見える。なるほど、これか。その距離感は心理的なものではなく、純粋にボディの長さがもたらす現実だ。とはいえ、走り出してしまえば110との差は200kgの車重差も含めてあまり感じられなかった。

オクタのV8とは異なる荒々しいサウンド

試乗車にはノキアンのスタッドレス「ハッカペリッタR5 SUV」(20インチ)が装着されており、せっかくなので雪を求めて北上する(取材は2月)。乗り心地は実に快適だ。スタッドレスなのでもちろん乗り心地がよく、それでいて静粛性が高い。承認タイヤのノキアンタイヤはスタッドレスにもかかわらず燃費も良好で好印象を持っている。日本仕様130のカタログ燃費は公表されていないので本国の資料を見ると7.1km/L(WLTP複合、高速8km/L)である。一方、今回300kmほど走行したが、ほとんど高速だったとはいえ満タン法で7.6km/Lとやはり良好であった。

だが、このクルマの本質は、やはり5.0リッターV8にある。エンジンを始動すると、現代の合成音とは無縁の荒々しい鼓動が響く。低回転域から巡航時100km/hで8速の回転数は約1500rpmだが余裕たっぷり。長距離移動での快適性は極めて高い。アイドリング時は驚くほど静かだが、ひとたびアクセルを踏み込めば、そのキャラクターは一変し、最高回転数の6500rpmまで回さずとも、2.6tの巨体をものともせず怒涛の加速を見せる。

アクセルペダルに呼応して、レスポンスは鋭く、熟成の進んだ8速ATも滑らかに俊敏に変速する。重量級SUVであることを忘れさせるほどだ。ステアリング裏に備わるパドル操作に対する反応も良好。オクタのV8とは異なる荒々しいサウンドに、AJ-V8ってこんなにスポーティだったっけ?と思わず郷愁に誘われた。

雪上でのスポーティな挙動に

実のところ近年の除雪技術の向上もあって、あてにしていた場所に期待したほど雪が残っておらず、雪上走行距離が短かったため多くを語れないが、テレインレスポンスで草/砂利/雪を選ぶとトラクションが最適化され、ちょっとしたスポーティな走りが可能だと思われた。ノキアンがトータルバランスに優れていることもあって、挙動の出方も穏やかだ。約3mの長いロングホイールベースは110と同値だが、さらにリヤオーバーハングが前後重量配分が49:51という私好みの数値だったこともあって、走りの楽しさのスイートスポットが広いように感じた。

印象的だったのは、市街地におけるスピードコントロールのしやすさだ。アクセルオフで自然にほどよく減速するので雪道でも運転しやすい。またブレーキも扱いやすく、停止動作は非常に滑らかだったので、これも雪道のような繊細な運転が求められる状況でも微細なコントロールが可能だと感じさせた。

余談だが雪道を走っていて感心したのは、フロントウィンドウのウォッシャーノズルがワイパー内蔵式である点だ。視界確保こそ雪道の基本であるし、周囲への飛散も抑えられ非常に実用的だった。

機械としての素性の良さ

インテリアはMY26となって13.1インチへと拡大されたセンターディスプレイが目を引く。ステアリングはロックトゥロック約2.8回転とややスローだが、それが先述の落ち着いた操舵フィールにもつながっているように感じる。驚かされるのは取り回しの良さだ。リヤステアを備えているのでは?と錯覚するほど小回りが利く(最小回転半径6.1mだが)。もちろん、試乗前に受けた警告から来る超巨大車というイメージよりは小さいという錯覚もあるかもしれないが、思ったよりも都市部での扱いに困る場面は少ないと感じた。

MY26ではドライバーモニタリングシステムや最新インフォテインメントが採用され、標準でACCを備えており(X、V8グレード)ロングツーリングも快適だ。さらにサイドヒンジ式リヤゲートにソフトクローザーを採用したことで、日常での使い勝手も向上している。だがそういった最新装備よりも、むしろ機械としての素性の良さが前面に出ている印象だ。

電動化時代に高まる希少価値

ボディサイズは大きいが、視界も工夫が凝らされておりストレスは少ない。大きなドアミラーとAピラーの間に設けられた隙間から斜め前方が確認できるので視認性の確保に寄与するだけでなく、雪上走行においては雪が詰まりにくいという実用的なメリットもあった。

ディフェンダー130 V8 P500は、基本性能の高さとV8の魅力で勝負する1台である。その巨体からは想像できない扱いやすさ、そして何よりも“昂る”エンジンサウンド。それらは、電動化時代にあって確実に希少価値を高めているだろう。ディフェンダーの豊富なラインナップはいずれも魅力的だが、この130 V8は特に濃密な存在だ。

PHOTO/GENROQ

SPECIFICATIONS

ディフェンダー130 V8 P500

ボディサイズ:全長5275mm×全幅1995mm×全高1970mm
ホイールベース:3020mm
車両重量:2630kg(7人乗り)
エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージャー
総排気量:4999cc
最高出力:500PS/6000〜6500rpm
最大トルク:610Nm/2500〜5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
タイヤサイズ:255/60R20
車両本体価格:1782万円

Land Rover Defender 110 × Land Rover Defender 90

ボディサイズ以上に異なる個性「ディフェンダー 110」とショートボディ「90」を比較した

クールなエクステリアに、オフローダーとしての本格的な走破性能を組み合わせ、世界的な人気を誇る「ディフェンダー」シリーズ。90、110、130という3種類のボディタイプをラインナップする現行ディフェンダーから、今回は中核モデルの「110」と、ショートボディの「90」のスペックを比較し、どこに違いがあるのかチェックしてみよう。